西廣智一が選ぶ、2020年メタル年間ベスト10 AC/DC、BMTH、Code Orange、Deftonesなど良作揃いの1年に

Deftones『Ohms』

 8位のDeftones『Ohms』、10位のVader『Solitude In Madness』はそれぞれニューメタル/オルタナティブメタル、スラッシュメタル/デスメタルという独特なスタイルを長年にわたり守り続け、亜流たちとは比較にならないほどのオリジナリティを確立させたシーンの立役者による傑作。Deftonesは原点回帰であると同時に、過去10年の実験の集大成と受け取ることができ、Vaderに関してはAC/DCにも匹敵するほどこの特殊なサブジャンルの中で信念を貫き通した結果の到達点だと断言できます。

 9位に選出したOranssi Pazuzu『Mestarin kynsi』も、このバンドにしか出せない唯一無二のオリジナリティが確立された力作で、ブラックメタルをベースにサイケデリックロックのカラーを強めていったことで、プログレやポストロック、エクスペリメンタルロックなど多種多様のアバンギャルドな音楽を包括した作風は、今回の10枚の中でも特に異彩を放っています。と同時に、彼らも先のBring Me The HorizonやCode Orangeとベクトルは異なるものの、何気に手法は近いものがあるのではないか、という気がしています。このアルバムもまた、“2020年らしい”1枚であることには違いありません。

Oranssi Pazuzu『Mestarin kynsi』

 別媒体で選んだ同ジャンルの年間ベスト企画では、Poppyの代わりにMetallica『S&M2』を選出していたのですが、これは完全に個人的なこだわりからというのと、ギリギリまで「Poppyをメタルの枠に含んでいいのだろうか?」という自問自答があったため。そこから1カ月近く経った今は「これもまたメタルなり」という結論に達し、最愛のMetallicaまでも落とす結果に至りました(Metallicaは実験的なライブアルバムだったので、ここはすべてスタジオ作品に限定しようと)。この10枚から惜しくも外したのはそのMetallicaのほか、Dizzy Mizz Lizzy『Alter Echo』、FM『Synchronized』、Lamb Of God『Lamb Of God』、Liturgy『H.A.Q.Q.』、LOVEBITES『Electric Pentagram』、オジー・オズボーン『Ordinary Man』、The Struts『Strange Days』、Testament『Titans Of Creation』、Umbra Vitae『Shadow Of Life』など。タイミングと選ぶ基準さえ異なれば、どれがベスト10に入ってもおかしくない良作ばかりです。

 2021年もこの“withコロナ”な環境は続くことでしょう。ライブに関してもいつ再び来日公演を観られるようになるのかまったく想像できませんが、新作/新曲に関しては来年も引き続き良作を豊富に楽しめるのではないか。そんな気がしてなりません。例年ならここで具体的なアーティスト名を挙げておりますが、2021年に関してはさらに予想もしてなかった新作が届けられるはず……そう強く願って、2020年の年間ベストアルバム紹介を締めくくりたいと思います。

■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

関連記事