乃木坂46 4期生は歴史を背負って新たな未来を紡ぐ 16人体制で初めて臨んだ配信ワンマンを振り返る

 そうした既存作品の再構築をことに強く感じさせたのは、遠藤さくらと早川聖来による「心のモノローグ」だった。4期活動初期からの顔として立ち回ってきた遠藤と、2019年春の『3人のプリンシパル』以降、ステージ上で際立った表現力を見せ続ける早川によるデュオは、すでにしてグループの未来形をうかがわせ、オリジナルとは異なる色を描いてみせた。今後も乃木坂46のライブを支えていくであろうメンバーたちの、頼もしいパフォーマンスだった。

 歴史として優れたアーカイブを持つことと、それらが時代ごとに現在形のパフォーマー自身の作品として表現されること。その両輪の重要さを幾度も感じさせたのが、今回のライブだった。もちろん、より充実した形でそれを実感させてくれるのは、未来の彼女たちなのだろう。

早川聖来

 継承と現在とを見せるライブだからこそ、他ならぬ「今」の4期生自身が主役となる楽曲群でライブ終盤を飾る構成も意義深くなる。特に、今年発表された乃木坂46楽曲の内でも指折りの存在感を誇る「I see…」は、クライマックスを盛り上げるに相応しい。エンターテインメント全般が、コンテンツの発信方法や活動意義そのものを根本から問い直された2020年、キャリア最初期を歩む人々にとっては特有の困難があったはずだ。このタイミングで、彼女たちの背中を押す最大級のアンセムが生まれたことは僥倖であった。

 そして、アンコールで披露された16人での新曲「Out of the blue」は、4期メンバーの次なる代表作を予感させた。確かなパフォーマンス力で同期を牽引する早川聖来のセンター選出も、4期メンバーの表現に新たな幅の広さをもたらすだろう。紡がれてきた歴史を確かめながら、現在そして未来を描く4期生ライブは、「継承」の意味を強く提示する公演だった。

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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