シングル『Fall in Love Again feat. 三浦大知』インタビュー
KREVAが語る、2020年コロナ禍での活動と新曲で伝えたいこと 「いろんなものが結実してる感じがある」
自分の生活範囲の中からヤバいやつが出てきた感じを初めて味わった
ーーPUNPEEの「夢追人 feat. KREVA」、ZORNの「One Mic feat. KREVA」、tofubeatsの「RUN REMIX (feat.KREVA & VaVa)」とドンピシャのコラボが相次いだわけですが、タイミングも含めて狙っていたわけではないんですよね? なので一つ一つの曲について聞いていきたいんですけれど、最初に声がかかったのは?
KREVA:最初に話があったのは、ZORNですね。去年だったかな。
ーーZORNさんからのオファーを受けての第一印象は?
KREVA:今一番イケてる、勢いのあるラッパーだし、韻を踏むというスキルでのし上がってきた人からオファーが来るというのは、だいぶ嬉しかったですね。
ーーZORNさんはAKLOさんとツアーも一緒にやってるわけですし、わりと近いとこにいた感じだったんでしょうか?
KREVA:いや全然。名前だけ知ってたけど、全く聴いたことなくて。だけど、AKLOとやってるヤバいのがいるなと思い出したんですよ。で、チェックしてたらミュージックビデオに新小岩が出てきて。本当にあんなにザワっとしたことないくらい、自分の生活範囲の中からヤバいやつが出てきた感じを初めて味わった。
本当に隣町なんです。区は自分が育った江戸川区と違うんだけど、葛西にいて、その後に引っ越したところが松江ってところだったんで、新小岩は自転車で10分くらいのところで。そこからあれだけのやつが出てきたってことが衝撃で。例えばニューヨークのラッパーが地元同士でつるんだりすることってよくあるんだけど、その感覚がちょっとわかった。土地の空気感が一気にふわっと蘇ってきて、衝撃だったのを覚えてますね。
ーーZORNさんの韻を踏むスキルというのはどういうところに表れているんでしょう?
KREVA:まずは絶対量が多い。俺は“密度”って呼んでるけど、今までは4拍目のところでだけ韻を踏んでたところが、2拍目も踏んでるし、なんなら1拍目と3拍目の部分でも踏んでる。そういう圧倒的な量の押韻が詰まってるラップというのが一つ。もうひとつは、彼は“飛距離”って言ってるけど、たとえばストリートの話と家族との生活っていうところをガシャッと組み合わせるんですよ。歌詞にも、たとえば少年院に入ってたりしてたときの話に、急にアカチャンホンポとかアンパンマンとか、そういう子供がいる生活をしてたら絶対誰もが通る、生活感のあるワードでパンチラインを持ってくる。それは発明級ですね。
ーーそれで「One Mic feat. KREVA」を一緒に作った。
KREVA:いや、コロナ感染症の影響とかいろいろあって、最初に曲を作ったのはまずPUNPEEの方だったかな。
ーーPUNPEEさんとの「夢追人 feat. KREVA」はどういうきっかけで、どんな風に声がかかって始まった話なんでしょう?
KREVA:たしか今年の2月くらいに話が来て。ZORNもPUNPEEも、誰かの伝手とかじゃなくて正式ルートでオファーを受けました。で、俺も昔からPUNPEEと一緒にやりたいなと思ってたので、断る選択肢は全然なかったですね。
ーー曲のモチーフはPUNPEEさん側から提示されて作っていった感じですか?
KREVA:そうです。事務所でミーティングみたいなことをやって、その時にいろんな話をしたんですけど、その中で話してたことがあの歌詞とかスタンスに全部入ってる感じですね。NulbarichのJQと「One feat. JQ from Nulbarich」を一緒に作った時にJQも同じこと言ってたんですけど、曲の中でストレートに、いわゆる強い格好いいラップをしてほしいっていうことは言われました。
ーー曲のテーマもあり、こういうラップをしてほしいというオファーもあるというのは、KREVAさんにとっても言うべきことの照準が定まる感覚があったんじゃないかと思います。
KREVA:まさにそうですね。いつも舞台を作るところから始めなきゃいけないし、そこの舞台で何を言うかっていうことをずっと考えてるから。あの曲はPUNPEEに舞台も与えてもらって、役柄も与えてもらってる感じだから、ラップを書くのはあっという間でしたね。
ーーミュージックビデオや発表のやり方も含めて、あの曲の反響はどうでした?
KREVA:素晴らしかったですね。PUNPEEとやり取りのメールを見返してみたんですけど、曲が出来上がる前の結構早い段階から、あの発表のやり方を考えてたみたいなんです。最初は俺がフィーチャリングしてるのを伏せて、MVを発表して、曲を聴いてたらそこに俺がいきなり出てくる。その後に「feat. KREVA」っていうクレジットを追加で表示したいというのを言ってました。PUNPEE全体に言えることですけど、ストーリーとか、アルバムのコンセプトとか、大きな枠から作るのが上手いですね。そういう想像力もすごく面白い。
ーーこれは楽曲の制作もコロナ禍の自粛期間の真っ只中だったんでしょうか?
KREVA:そうですね。だから、基本的にはメールでやり取りをして作っていった感じです。一度だけPUNPEEが素材を録るためにうちのスタジオに来て、結局4時間くらいヒップホップの話をしてたみたいなこともあったけど。MVの撮影も平塚のスタジアムで撮らせてもらって、コロナ禍だったから芝がすごく綺麗な状態でやらせてもらえましたね。
ーーZORNさんとの「One Mic feat. KREVA」はどんな風に作っていったんでしょうか?
KREVA:そもそも、今回のZORNの『新小岩』ってアルバムは全部AKLOのスタジオで録ってるんです。だからミーティングはうちのスタジオでやって、歌詞を書いて送って、ZORNが全部直して、だから俺も全部ほぼ全部直して、3番を書きにAKLOのスタジオに行った。そこで一緒に作っていった感じでしたね。
ーー「One Mic」は地元で撮影したMVも含めて二人の関係性がストレートに表れているし、ZORNさんとやることでKREVAさんのクリエイティブも触発されたんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
KREVA:3番を一緒に作ったときに、同じ熱量で同じスキルの話ができるんだなってことがお互いにわかりました。ZORNも今までこんな風に作ったことないって言って、ものすごく興奮してたし、「タンポポ」は、よりうまくいくだろうなっていうのは確信してました。
ーーなるほど。ということは、そこから続けて「タンポポ」に取り掛かった。
KREVA:いや、「タンポポ」は後ですね。「One Mic」を出す前にtofubeatsの「RUN REMIX (feat.KREVA & VaVa)」の話があって。
ーーtofubeatsさんとは「Too Many Girls feat. KREVA」以来ですね。
KREVA:そうそう。「またお話が来ました」みたいな話になって。「また来たか!でもこれはやろう」ってことになって。それで「RUN」を録って、「Fall in Love Again」をレコーディングした。ZORNと「タンポポ」を作ったのは『908 FESTIVAL』の前々日くらいだったかな。