内田真礼、Ray、電音部……声優/メディアミックスコンテンツに訪れた、“エレクトロポップ”ムーブメントを考察

エレクトロの高揚感と声の癒やしが求められる時代

 そしてもう一つ注目なのが、今年6月にプロジェクト始動が発表されたメディアミックスプロジェクト『電音部』だ。『電音部』は、アキバ、ハラジュクなど東京の各都市を代表する高校の電音部がしのぎを削るという内容で、輝夜月などを手がけるイラストレーターのMika Pikazoによるキャラクターデザインも話題だ。すでにアキバエリアの外神田文芸高校による『New Park』、ハラジュクエリアの神宮前参道學園による『New Pallet』という2作のミニアルバムがリリースされており、今月下旬と来年1月にもリリースが続く。

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電音部
ハラジュクエリア 1st Mini Album『New Pallet』

 参加クリエイターは、前述のkz(livetune)とTAKU INOUEの他、“おしゃかわポップ”ユニット=TEMPLIMEのトラックメイカーであるKABOSNIKKI、水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミ、声優・小野坂昌也のEDMユニット=EMERGENCYを手がけたDJ/トラックメイカーのYunomi、Ujico*名義でも活動するエレクトロアーティストのSnail's House、DTM音楽ユニットのパソコン音楽クラブ、「ホロライブゲーマーズ」のテーマソングも手がけた韓国のエレクトロミュージシャン=Aiobahn、福岡出身のシンガーソングライターでトラックメイカー/プロデューサーとしても活動するYUC'eなど、多彩なクリエイターが参加している。

 これまで女性声優アーティストは様々な音楽ジャンルと融合し、かつて一世を風靡した音楽ジャンルを新たなブームとして再ブレイクさせてきた。かつては渋谷系、近年はシティポップ、そして次に注目されているのが、2000年前後のフロア志向のエレクトロポップだろう。これは、近年増えているアニソンのクラブイベント=アニクラや、リズムゲームにおいて既存曲をリミックスしたりオリジナル曲を提供するDJ/トラックメイカーに対する、注目度の高さとも符号する。また、VTuberとの相性度が高いトラックメイカーも多く、彼らのサウンドはネットを通じて急速に世界へと広まっている。コロナの時代、エレクトロの高揚感と2.5次元のキャラクター、声優の声の癒やしが求められているのかもしれない。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

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