22/7(ナナニジ)、無観客配信ライブで体現した“11人が集まった理由” グループの完成形で踏み出す新たな一歩
そしてここから、アニメで各エピソードのエンディングテーマを受け持ったキャラクターソングメドレーへと突入、同時にこのブロックは、無観客配信ライブならではの演出の妙が最も現れた時間になってゆく。
バーチャルアイドルとしての名義で発表されてきた各楽曲をスムーズに繋いでいく同パートは、トップバッターを務める河野都(CV:倉岡水巴)「夢の船」で幕を開ける。次いで画面が切り替わると、戸田ジュン(CV:海乃るり)「人生はワルツ」では縦長の空間や単独カメラとの距離感を上手く用いたパフォーマンスが行なわれ、また佐藤麗華(CV:帆風千春)「優等生じゃつまらない」では、スタンドマイクとミラーボールでクラシカルな歌番組を模したような画作りを見せる。
さらにラウンジスペースを活用した丸山あかね(CV:白沢かなえ)「感情無用論」から、バルコニーで披露される斎藤ニコル(CV:河瀬詩)「孤独は嫌いじゃない」へと、会場内の各所を独立したセットとして利用する展開が続く。一転して、滝川みう(CV:西條和)「One of them」と藤間桜(CV:天城サリー)「生きることに楽になりたい」は、同一フロア上を背中合わせに使うことでライブ感のある繋ぎを見せつける。観客と空間を共有できない環境だからこそ、縦横無尽に会場全体を活かしてむしろ強みに変える、グループの積極的な姿勢が示された。
そして、楽屋スペースのようなセットで色濃い世界観をみせる立川絢香(CV:宮瀬玲奈)「Moonlight」を経て、神木みかみ(CV:涼花萌)・東条悠希(CV:高辻麗)・柊つぼみ(CV:武田愛奈)の三人による「神様に指を差された僕たち」へと集約してキャラソンメドレーは締めくくられる。
メンバー各々の個性を引き立てるキャラソンパートのラストを、グループにおける後発キャラクターを担当する涼花・高辻・武田の三人楽曲で締めたことの意義は、ライブ後半で明確になる。MC明け、ライブの熱量をさらに高める「韋駄天娘」から始まった5曲は、いずれも11人楽曲として制作された作品である。今回のライブタイトルとして掲げられた「11」を強く意識させる展開で、ライブ完成へと走ってゆく。
やがて、ライブリハーサル風景を収めた映像を挟んで迎えたクライマックスで披露されたのは、11人全員による「ムズイ」であった。TVアニメ主題歌であり、元は先行する8人のキャラクター担当メンバーに充てられた同曲。そこに涼花・高辻・武田の3人も肩を並べ、11人全員でパフォーマンスされたこのとき、22/7は一つの“完成”を迎え、新たな道程を歩き出したといえるだろう。
同じくTVアニメに使用されている「空のエメラルド」も11人バージョンで披露されたのち、ライブ最終楽曲として歌われたのは「11人が集まった理由」。“11”という数字の意味をあらためて描きなおしたライブのラストを飾ることで、この曲にはこれまで以上の強い意味が宿された。
ライブ中のMCでは、2021年2月24日に7thシングルリリースが決まったことも発表され、来年へ向けた活動も見えてきた22/7。新しいスタートを切った11人は、さらなる高みへ進んでゆく。
■香月孝史
1980年生まれ。アイドルカルチャーほかポピュラー文化を中心にライティング・批評を手がける。著書『乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟』『「アイドル」の読み方 混乱する「語り」を問う』、共著『社会学用語図鑑』など。