森久保祥太郎が語る、コロナ禍を経て伝えたいメッセージ 「価値観をアップデートして、新たなものをクリエイトしていく」

森久保祥太郎が語る、コロナ禍を経て感じたこと

映像作品として成立するクオリティのライブを目指す!

ーー本来はツアーでみんなと盛り上がるための曲になるはずだったわけで、あの表情はリアルなものだったんですね。でもツアーが中止になったことについては、どんなお気持ちですか?

森久保:レコード会社としては出来ればやらせてあげたいと思ってくれて、だからこそギリギリまで状況を見ての判断だったと思います。でも僕はもっと現実的に考えていて、早いうちから中止にするべきだと思っていました。何かの状況が変わってパズルが組み上がることをただ待っているよりも、例えば有料生配信ライブであるとか、別の案にシフトして突き進んでいくほうが、お客さんもどうなるのかなってギリギリまで待たされるより良いし、僕自身も、1日でも多くワクワクしながら何をやるか考えたいと思ったし。

 それに音楽のジャンルによって、静かに鑑賞するようなジャンルならまだしも、僕のライブは、音に乗ってみんなでいろいろなものを共有して、一緒に汗をかくというものだから。ステージ上の僕らがガンガンやっているのに、客席で声も発せず微動だに出来ないのは、お客さんにとってはそのほうが地獄じゃないですか。

ーーガンガンのライブで大人しくしなくちゃいけないのは、ヘビの生殺しですね。それに「WAY OUT」の歌詞に〈後手後手フロウにバックブロウ〉と出てくるように、後手後手になるよりはるかに良い。

森久保:そうそう(笑)。方針転換するなら早いほうがいい。それに実際、配信ライブには新しい可能性がたくさんあると思っています。まだまだ掘れると言うか、むしろどんどんすごいものになっていく可能性があると思うと、早くその可能性を見いだしたいと思って。

ーー実際に9月19日、20日に『おれパラPRESENTS ORE!!SUMMER 202』の無観客オンライン生配信があり、11月14日には森久保さんのソロライブが無観客でのオンライン生配信で決定していて。ライブステージに対しての価値観のアップデートという部分は、どういう風に考えていますか?

森久保:考え方はすごくシンプルで、映像作品として成立するクオリティを目指しています。生で体感出来る価値観とは異なるものと言うか。例えば舞台で生の演技を見て良いと思うものもあれば、映像で大きなスクリーンで見たいと思う物語や作品があるじゃないですか。それと同じで、今までのライブは舞台でプレイしていたけど、今回は、映像だからこそ何かが伝わるものを作るイメージでいます。だからと言って、今までのライブDVDと同じような映像を見せても意味がないので、新たな映像作品を作るイメージで演出や構成を考えていますね。

ーー例えばそれは、どういうものですか?

森久保:『ORE!! SUMMER』では、普通ならお客さんが「何じゃこりゃ!」となってしまうセットを作りました。それに遠くの客席からも見てもらうためのサービスモニタがいらないわけだから、それを取ってしまって代わりに何かを作ったり。ステージも客席から見るわけじゃないから全景を考える必要もないし、もっと言えば、ステージを無闇に走り回る必要もない。そうやって、いくつもアイデアが出て来ているので、それを実現させるのが楽しくて。だから配信ライブに対しては、何もネガティブな要素を感じていませんね。ただ舞台監督は、困っていましたけど(笑)。

ーー『おれパラ』のメンバーとは、お互いの状況を報告し合ったりしていたんですか?

森久保:リモート会議をしましたね。あとはSNSでやりとりをしたり。でも「そっちはどう?」みたいな話より、「こんな配信ライブを見たよ」とか、「これは参考になるから見たほうが良いよ」とか、最新の情報を共有するという意識のほうが強かったと思います。

ーーオンラインライブは、実際にどういうものを見ましたか?

森久保:6月にイギリスで開催された『ダウンロード・フェスティバル』とか。あと、ライブハウスから配信しているインディーズバンドのライブを見ました。たくさん見たおかげで、言い方に語弊が出てしまうかもしれないけど、成功例とそうじゃなかった例が自分の中に蓄えられていって、とても参考になりましたね。去年buzz★Vibesで一緒に活動したバンドの「ウルトラ寿司ふぁいやー」がやった配信ライブは、とても参考になって、歌詞のテロップが画面に入ってるのは良いなと思った。いままではテロップの重要性を考えたことがなかったけど、配信ライブということを考えると、歌詞テロップが入ることで、その状況も含めてより歌詞の言葉が刺さって来るかもなって。例えば『おれパラ』で「ここはコニファーフォレストだ」とアドリブを入れた時に、歌詞があるとアドリブだって分かるじゃないですか。歌詞を間違えた時もバレちゃうけど(笑)、それも含めてよりライブ感が伝わるんじゃないかなって。

 あとさっき思ったのは、配信でやる時は、意外にアッパーよりもしっかり伝えるエモーショナルな曲のほうが、電波越しにじっくり聴いてもらえて伝わるんじゃないかなって。

ーー「Alright」のような?

森久保:そうですね。そう考えると、来年以降出来る新曲も、配信ライブを想定した、配信には適した聴かせる曲が多くなるかもしれないです。

ーーでは最後に、今後シーンに期待することは何かありますか?

森久保:こういう状況になって、これまでの日常とは違う角度から、改めていろんなものがより楽しめるようになりました。その上で、1つの場所にみんなで集えて、そこに音楽があることの尊さも改めて感じています。客席にオーディエンスを入れたかつてのようなライブは、時が経てばきっとまた出来るようになると思うけど、観客を入れた一発目のライブがどういうものになるか、その日が今からすごく楽しみです。きっと1曲目から俺もお客さんも泣いちゃうんじゃないかって(笑)。一度隔てられてしまったからこそ、ライブや音楽に対する本質を、改めてみなさんにも感じていただけると良いなと期待しています。

森久保祥太郎『WAY OUT』

■リリース情報
『WAY OUT』
発売:2020年9月16日(水)
価格:¥2,300(税抜)

森久保祥太郎レーベルサイト

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