『TWEMPTY』インタビュー

Rei©hiが語る、JK時代から飛躍したハタチの自分 ルーツを探りながら紐解く『TWEMPTY』に込めたリアルな気持ち

背伸びもまったくしてないし、嘘もまったくついてない

ーー今回のEPのタイトル『TWEMPTY』は、今年1月18日で20歳=“TWENTY”になったことと、空っぽを意味する“EMPTY”を掛け合わせた造語だそうですが、なぜ“空っぽ”なんですか?

Rei©hi:“EMPTY”にはいろんな意味があって。まずは2000年生まれだから、もともと何かのタイトルで“EMPTY”って付けたいと思ってたんです。

ーーゼロが並ぶ年の生まれだから。

Rei©hi:そう。あと、EMPTYは“空っぽ”の他に、“空っぽにする”っていう意味もあるんですよ。私の言葉を曲にしたら、曲は100%になるけど、私自身は空っぽになると思うんです。曲に100%ちゃんと入れたら自分が0になるっていう。だから、今の私は20歳の空っぽという意味で“TWEMPTY”なんです。

ーーなるほど、そういう思いを込めていたんですね。

Rei©hi:あと、私の名前はRei©hiで、0(れい)1(いち)にもなるじゃないですか。0から始まるから“EMPTY”っていう言葉を使ったところもあるんです。で、次はフルアルバムを出したいと思ってるから、それを「Rei©hi」というタイトルにしたら、0(れい)から1(いち)になるなって、勝手に自分の中で考えてるんです(笑)。

ーーリード曲「UCHIRA」は、どのように制作を進めていったんですか?

Rei©hi:私から、こういう曲をつくりたいとトラックメイカーのTARO(MIZOTE)さんに伝えて作りました。リード曲にするものだから、自分のスキルを存分に発揮できる曲が欲しいっていう頼み方をしました。自分の中の基準ですけど、ラップスキルという面ではこの曲がいちばん出せたと思ってます。

ーー曲調やテンポなども具体的にオーダーしたんですか?

Rei©hi:TAROさんは普段ヒップホップを作ってる方じゃないので、こういうのを参考にしてって渡しました。あと、イントロから入ってるシンセのリフとか頭のサイレン音とかは私からアイデアを出しました。

ーーグライムのテイストを感じたんですが、インスパイアされて作ったところもありますか?

Rei©hi:それはあまりなかったですけど、UKドリルとか、イギリスの音楽は好きです。たとえばストームジーとか。あとはレディ・レイーシャっていう女性ラッパーも好き。ラップで勝負してる人が好きだから聴きます。今回のEPはメロディアスな曲が多かったから、ラップで勝負したいなと思って、こういうビートを作ってもらったんです。

Rei©hi / UCHIRA -Music Video-

ーー「ウチら」というテーマは最初から決めていたんですか?

Rei©hi:決めてました。今回一緒にMVに出てくれてるモニとミラは普段から仲良い友達で。2人とも大阪から出てきてモデルをやってて、私はラップをやってる。舞台は違うけど、(2人とは)悔しいなっていう話をよくするんです。その子たちの目標は、たとえば「カルバン・クラインのモデルになりたい!」とかで。でも、現状はそこまで有名になれてない。私もそう。そういうときに「もっとカマしたいな」とか「最近悔しいことあってん」とか話すんです。でも、「お互いイケてんのわかってんで」って言うんです。そういう普段の気持ちをこの曲に詰めたいなと思って作ったんです。

ーー悔しいときもあるけど、仲間同士で励まし合って、一緒に乗り越えていこうっていう感じ?

Rei©hi:もっと生意気かもしらんけど、モニとミラがモデルとして有名になったら「ほら、言ったやん! イケてるって言ったやん!」って言いたいんです。私が売れても同じで「ほら言ったやん!」「やろ?」「Rei©hiがイケるってことはみんなもイケるやろ!」っていう。お互いを励ますと同時に、お互いの自信になったらいいなと思って書いたんです。

ーー「UCHIRA」でこだわった部分は?

Rei©hi:私がリスペクトしてるラッパーの言葉をちょこちょこ入れてます。たとえば〈笑顔が消えたら始まる Side B〉の“Side B”はANARCHYさんとか、韻踏合組合の「一網打尽」とか。昔から聴いてたから自分でラップしてても気持ちいいし、リスペクトも込めて入れたんです。

ーー〈私はラブリー/でもやってる仕事はライムディール〉は、抜群の自己紹介フレーズだと思いました。

Rei©hi:ありがとうございます。日頃からこういう気持ちでいるんで。見た目はこんな感じやけど負けん気は強いっていうのは自分のアピールポイントだと思ってて。それをどうやったら格好良く言えるかな?って考えたときに、これは自分にぴったりのフレーズだと思って。背伸びもまったくしてないし、嘘もまったくついてないから、いいなって思ってます。

ーーあと、「UCHIRA」を聴いて感じたんですが、Rei©hiさんはリズムに対してあえて少しモタらせてラップを乗せていますか? 

Rei©hi:それ、私のクセなんです。なんでかはわからないんですけど、最初に曲を作ったときから自分は後ろに乗ってるなと思っていて。レコーディングで何回もテイクを録っていると遅れすぎることもあるし、逆にちょっと早めに乗せてて周りからは違和感がなくても、ミックスの段階になって私から「ちょっと後ろにズラして欲しい」ってお願いするときもあります。それが自分の耳に心地いいんですよね。

ーー「Mommy」はお母さんへの愛憎を赤裸々に書いています。これはどういう思いから書いたんですか?

Rei©hi:絶対人生のどこかで母親に対する曲を書いてやろうと思ってたんです。それこそ『JKはブランド』のときも書きたかったんだけど、自分の技量が足りなかったのと、そういう曲は人生で1回だけでいいと思っていて。でもこれ以上長引かせたら、“嫌い”という気持ちがそこまでじゃなくなりそうというか、ディスられへんようになってきそうだなと思って、だったら今回書いてしまおうと。

ーーお母さんはフィリピンの方なんですよね。

Rei©hi:そうです。私はもともとお母さんがメッチャ嫌いやって。父子家庭やからお父さんが大好きでした。

ーーお母さんへのヘイトはありつつ、「I love you mommy」とも歌ってます。

Rei©hi:結局産んでくれた人やから。ヒップホップって、2パックを始め、お母さんをリスペクトしてるじゃないですか。その感情を持っていいものなの? っていうのもヒップホップに出会って気付いたことなんです。

ーーお母さんのことは嫌いだけど、たくさんのラッパーが母親への愛を歌ってると。

Rei©hi:そう。みんな「お母さんは大事にしろ」って言う。けど、みたいな。中学生の頃は「絶対むかつく。いつか絶対何かしたんねん」と思ってたから。ただ、好きじゃないと言っても、やっぱり家族やから大事にせなアカンっていうのもわかるようになってきて。たとえば25歳になってこういう曲を書こうと思っても感情が変わってるかもしれない。それを考えたら今のうちに、このリアルな気持ちを全部吐き出してしまおうと思ったんです。

ーー世の中には、こういう気持ちを抱えて悩んでる子もいるでしょうし。

Rei©hi:たまにDMとかでそういうメッセージとか相談も来るんです。私もお父さんが好きでお母さんがメッチャ嫌いとか。お母さんに彼氏ができて今どうしたらいいかわからないですとか。さっき言った「ウチら」は、そういう子も含めてて。そういう境遇の人はいるわけだから、そういう人たちにも「次はウチらの番やから大丈夫」っていう思いも込めてるんです。

ーー「#bowdown」という曲には、負けん気が強いRei©hiが詰まっていますね(笑)。

Rei©hi:あはは! これもスキル重視で作りたかった曲。タイトルは最後につけたんですけど、ヴァースはガンガンラップすることを考えて作りました。

ーーリリックには〈1 for da fight〜〉から始まるRei©hiの心掛け5箇条が出てきます。第一のfightにはいろんな意味がありますが、どう訳すのがしっくり来ますか?

Rei©hi:闘いですね。自分自身との闘いもあるし、予期せぬことに対する闘いもある。私は闘うことが好きなんです。争いはダメ。私が圧倒的に上におって、格下の子と闘うのは違うんです。それはイジメになる。でも、MCバトルって闘いたいヤツ同士が出てるでしょ。格闘技もそう。そういう中で120%闘うのはアリなんです。同じ土俵に乗ってるんだから。その気持ちで相手にも闘って欲しいし、自分も闘っていきたい。世の中には大小関わらず闘わなきゃいけない場面はあるし、同じ条件のときは絶対に120%で闘うっていうスタンスでいたい。

ーー闘争心とか闘志を失いたくないっていうことですね。

Rei©hi:そうですね。

ーー2番目の〈mind〉は、どのような意味合いですか?

Rei©hi:自分の心ですね。自分の心の中で、ホンマに思ってることとか、自分の本質的なもの。自分にある真実・真意っていう意味です。

ーーじゃあ、精神力というよりは、本心とか本音みたいなことだと。

Rei©hi:そうです。お金や名誉に惹かれてしまうこともあるかもしれない。けど、本当に心からそれでいいと思ってたらそれでいいと思うんです。

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