石井恵梨子のチャート一刀両断!
King & Prince『L&』初週55万枚でチャート首位 王道と攻めを兼ね備えた、新たなスーパーグループの象徴に
さらに踏み込んでいるのは「Freak out」という一曲で、〈Yeah, Yo, Yo, Turn up〉の掛け声から始まるのは、世界を席巻するK-POPの一番クールな部分に迫っていくようなヒップホップ系ダンスナンバー。終始アグレッシブな構成、英語詞の多さ、初回限定盤の付属DVDにアメリカ武者修行の様子が収められているところまでを含めて、海外の音楽シーンを視野に入れているのは明白ですね。
さらに、5曲目「ナミウテココロ」は音数を可能な限り減らしたR&B/ソウル・フィーリングのミドルテンポ。不思議な音の配置で耳を虜にしながら、メンバーそれぞれの声色の違いを印象づけていく、とても大人っぽい一曲です。クレジットを見れば作曲者はAwesome City ClubのatagiとJazzin’Parkの久保田真悟。なるほど、この起用も思い切ったものです。似合っていない、と言わせないメンバーの歌唱も特筆すべきでしょう。
もちろん、意外性だけが本作のキモではありません。前述したように曲の大半はキラキラしたジャニーズ王道ソングだし、それぞれのプロデュース楽曲はキャラの違いを楽しませてくれるもの。憂鬱な時代に寄り添い、みんなの心の栄養となるエンタメを笑顔で完遂しながら、世界のトレンドをちゃんと押さえ、単なる真似事と言わせないクオリティでねじ伏せる。いやー、参りました。King & Prince。彼らは本当に新しいスーパーグループなんですね。
■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。