秦 基博の原点、F.A.D YOKOHAMAでの配信ライブの見どころ 歌を中心に自由な発想で進化してきたキャリアも振り返る
秦 基博が8月27日、無観客配信ライブ『Hata Motohiro Live at F.A.D YOKOHAMA 2020』を開催する。
今年の3月から5月にかけて最新アルバム『コペルニクス』を携えた全国ツアー『HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2020 コペルニクス』を開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、全公演が延期に。秦の初ライブの場所であり、原点ともいえるF.A.D YOKOHAMAで開催される弾き語りスタイルの配信ライブは、まさにファン待望のステージだ。
「鱗(うろこ)」「アイ」そして「ひまわりの約束」。2006年のメジャーデビュー以来、数多くのヒット曲を生み出してきた秦 基博。豊かな叙情性をたたえたフォーキーな楽曲からエッジの効いたナンバーまで、幅広い音楽性を持つアーティストだが、その中心にあるのが“アコースティックギターと歌”であることは間違いない。
前述したように、秦の音楽活動のスタートはF.A.D YOKOHAMAの弾き語りライブ。最初はもちろんワンマンライブではなく、レギュラーの弾き語りイベントに出演したという。歌詞とコードが書かれた大学ノートを譜面台に置き、ギターにもマイクを立てて歌う……というアマチュアミュージシャンらしい(?)初々しいステージから始まり、F.A.D YOKOHAMA代表の橋本勝男氏にアドバイスを受けながら、自らのオリジナリティを少しずつ獲得してきた。コードを弾くだけではなく、楽曲の世界観、歌の表情に合わせてギターのアレンジを構築していくスタイルは、ライブハウスの弾き語りで培われたと言っていいだろう。
メジャーデビュー後は、レコーディング、ライブを通して自らの音楽性を進化させてきた秦。アルバム『青の光景』(2015年)では全曲のアレンジも手がけた。キャリアを重ねるなかで、サウンドメイク、編曲の知識も蓄え、自身の手で音楽の世界を構築するのはきわめて自然な流れだが、やはり中心になっているのは歌。筆者が行った『青の光景』のインタビュー(参照:ナタリー)でも「(表現の真ん中にあるのは)“詞と曲と歌”というか、“シンガーソングライターである”というのが一番大切だし、そこを聴いてもらいたいのはずっと同じ」と語っていたが、アーティストとしての軸はデビューから現在に至るまで、まったくブレていない。
そのことを端的に示しているのが、2008年からスタートしたアコースティックライブシリーズ『GREEN MIND』。5月4日(みどりの日)に合わせて不定期に行われているこの公演は、彼の原点であるアコギの弾き語りを中心に構成。ホール、ライブハウスだけではなく、芝居小屋、映画館、酒蔵でも開催され、秦 基博の歌とギターをさまざまなシチュエーションで堪能できる貴重な機会となっている。もっとも印象的だったのは、10周年を記念して行われた2017年5月4日の横浜スタジアムライブ。第一部はバンドセット、第二部は『GREEN MIND』として行われたのだが、大きなスタジアムを包み込む秦の弾き語りーー繊細で小さな歌から、壮大なスケール感をたたえた歌までーーの素晴らしさは、今も強く心に残っている。