『キラメイジャー』『プランダラ』『まほよめ』手掛ける音楽作家 松本淳一に聞く、特撮&異世界を音楽で表現することの面白さ

『キラメイジャー』音楽作家インタビュー

音の風合いや手触りを学んだアイスランドでの経験

ーー松本さんは「奇景」がお好きで、アイスランドに音楽留学されたとのことですが、アニメで異世界ファンタジーの音楽を作ることと関わりはあると思いますか?

松本:まず、驚いたのは最初にアニメ音楽のオファーが来た『魔法使いの嫁』では、アイスランドが舞台になっていたことですね(笑)。アイスランドに留学し、何か掴んだものがあるとしたなら、きっとそれは「音を手で創る」っていう部分だと思います。留学の期間中、音の風合いや手触りのような部分をしっかり意識するようになったし、生地や彫刻のように捉えるようになりました。

 アイスランドって離れ小島で、あまり物資が潤沢じゃないところもあって、首都のレイキャビクにある僕が通っていた芸術大学では、楽器を自分で作ってる人なんかもいました。廃材に釘を打って糸を張って音を自由に調弦して鳴らしたり、そこに自作プログラミングしたエフェクトを通して変な音響を作ったり、そしてそれをまったり小さなカフェで発表し合ったりしている(笑)。僕も参加してやったりしました。

 レイキャビクの人達は、割と手作りで音を作り、そしてそれをお金に換える意志がそんなに強くないようにも見えました。力抜けてるとなーっと。世界的に活躍していても、別の本業がちゃんとあったり、といった事も普通な話ですし、不思議な音楽シーンでしたね。

ーーアイスランドのみなさんの音楽の楽しみ方って、本当に気軽な感じですね。

松本:そうですね、すごく軽やかかもしれないです。皆さん、当たり前に音楽を楽しみ、やりたいようにやっている風土というか。そういう意味でいうと、劇伴づくりはいろいろなオーダーがあって大変なときもありますが、自分の感覚を当たり前に信じきる、という土台ができたのはアイスランドだと思います。仕事ごとに「正解」は違う訳ですが、最終的には自分の感覚を頼らなければいけないところがあります。そういう意味でも、アイスランドは僕にとってリスタートできた土地かもしれないですね。

ーーもともと映像作品の音楽にはご興味があったのでしょうか?

松本:子どもの頃から「こういう曲を作りたい!」と思った曲が、映画の劇伴だったんです。最初にそう思ったのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のテーマ曲でした。そこが僕の原点だと思います。そこからジョン・ウィリアムス、ヘンリー・マンシーニ、クインシー・ジョーンズ、(エンニオ・モリコーネの)『ニュー・シネマ・パラダイス』の劇伴も好きになりましたね。よくドリマトーンで映画の劇伴を弾いていました。

ーー松本さんにとって映像作品の音楽を作ることの面白さは、どのようなところにありますか?

松本:案件ごとにいろいろなお宅のお茶によばれてるかのような、楽しさがあります(笑)。それぞれにいろいろな流儀や考え方があって、そこに触れて自分を共振させていくと、自動的に音が呼び出されていきます。いろいろな音を集めて、球体に整えて、先方にお渡しする。その音楽が映像と合わさったとき、時に、予想もしなかったマジックが起きる。それが映像の音楽を作る醍醐味だと思います。自分だけでは絶対に見ることができない世界を見せてもらっている感じです。もっと、いろいろな方たちに呼び出してもらいたいです(笑)。

ーー今後、どのような作品に音楽をつけてみたいと思いますか?

松本 そういえば、そういうことを思ったことがないかも、です。呼んでいただいて、初めてお仕事させていただけると、思っているので。

 でも、他芸術と音楽の掛け合わせの可能性って、奥が深いと思っています。今は、ダンサーの森山開次さんと新国立劇場バレエ団のために2時間ぐらいのバレエ曲を書いています。人が舞台で踊り、映像もあって、そこに音楽が合わさると、二次元では出会えない、その場独自の生命体とでも言えるような、有機的な何かがバーッと立ち上ってきます。『竜宮 りゅうぐう』というタイトルで7月末から公演が始まるので、ぜひ見に来ていただきたいですね。

 あと、今日、現代音楽の最先端では、世界のあちこちで個性的な言語感覚の音が目まぐるしく誕生していると思うんです。ただ、僕普段から音楽を全く聴かず、自分の中を探求するようにしているので、地球上のどこかで誰かが新しい響きを今日も作ってるんだろうな、と空想しているだけです(笑)。でも、そんな遊びをしていると、自分の内なるハートに図らずも不思議なアイディアや音楽景色が湧いてくることがあります。そこで生まれてくるものは劇伴の仕事ではなかなか出せないので、そういった方向を求めてくださる案件の音楽も、してみたいですね。

■リリース情報
『魔進戦隊キラメイジャー オリジナル・サウンドトラック クリスタルサウンドボックス1』
発売日:2020年6月10日(水)
音楽:松本淳一
価格:¥3,000+税
(C) 2020 テレビ朝日・東映AG・東映

<収録内容>
『魔進戦隊キラメイジャー』の作品を彩った作曲家 松本淳一が手掛ける劇中BGMを収録したオリジナル・サウンドトラックCDの第一弾。 

TVアニメ『プランダラ』オリジナル・サウンドトラック2
2020年6月24日(水)発売
音楽:松本淳一
¥3,000+税
(C)2020 水無月すう/KADOKAWA/プランダラ製作委員会

<CD収録内容>
01. 孤高の光 Lonely dark(TV-size)/歌:伊藤美来
作詞:許 瑛子 作曲:間瀬公司 編曲:中畑丈治
02. Battle(M-66)
03. 離人(M-56)
04. 殺さない軍隊になろうぜ(M-62)
05. “Plunderer” Main Theme - TIME TRAVEL -(M-54)
06. Fighters(M-63)
07. 支配された校舎(M-61)
08. 惑う星たち(M-60)
09. Bath Time(M-71)
10. 夕日色(M-55B)
11. DOUAN(M-58)
12. アルシングの謎(M-69)
13. Oh - My Gah -(M-72)
14. 荒野の墓標(M-64)
15. Trip to the World 300 Years Ago...?(M-59)
16. オーバーテクノロジー飛来(M-67)
17. 二魂閃光衝突(M-68)
18. ナナの想い出(M-70)
19. 学園(M-55A)
20. Room - 7号被験体 -(M-57)
21. Reason of Life(TV-size)/歌:陽菜(CV:本泉莉奈)、リィン(CV:小澤亜李)、ナナ(CV:伊藤静)
作詞:荘野ジュリ 作曲・編曲:坪田修平(TRYTONELABO)

■キラメイジャー関連リンク
テレビ朝日公式サイト
日本コロムビアHP

■プランダラ関連リンク
日本コロムビア音楽情報特設サイト
アニメ公式HP

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる