シングル『DEAD STROKE』インタビュー
藤田恵名が語る、シンガーソングライターとして『バキ』に重ねた「DEAD STROKE」 「やめちゃいけない、やるしかないんだ」
やるしかないんだっていうお示しだったのかな
ーーいい状態でのレコーディングだったんですね(笑)。またカップリング曲「バスルームジェットキャンディ」は、憂いある内容とはギャップのあるハネたビート感が心地良い曲になりましたね。藤田:歌詞だけ見るとちょっと切ないというか達観したような、もう辞めちゃえって思いながらも、それでも歌っちゃうんだよなっていう、私の日頃の思いを詰め込んだような曲ですね。あとは表題曲「DEAD STROKE」との差が出るようにと思って、曲調も今までにない感じにしていただきました。
ーーこちらは藤田さんが作曲ですが、アレンジのイメージはガー子さんに伝えたんですか。
田渕:基本的に、僕は一旦独断で進めるんです。この方向でいこうと思うけど、どう?というのは毎回聞いて。大体いいですよとかしか言わないので。
藤田:(笑)。この方向じゃなかったというのってちょっと失礼かなって思って。
ーー作り手だし、そこは何かイメージがちがってたら言ってもいいところでは。
藤田:いえ、文句のつけどころもないし。私のデモでは簡単にギターを弾いていたんですよ。それがとんでもない、難しいアレンジで返ってくるので。それは意地悪だなと思います。
田渕:(笑)。
藤田:そういうことは多々起きてますが。この曲は、今回のジャケットでお風呂のなかで撮っている写真があるんですけど。その撮った写真を見て、カップリングはこういうイメージにしようって思って、写真から作った曲だったんです。
ーーということは、結構急ピッチで進んだ曲ですか。
藤田:そうですね。でもずっと煮詰まっていて。「DEAD STROKE」の方で頭を回転しすぎたので。どうしようって感じになっちゃってたから。それで写真を見て、パッと思い浮かんで作った感じで。
田渕:とはいえ、そんなに急ピッチに進んでいたわけではないんですよ。「DEAD STROKE」のレコーディングが終わってひと月後くらいに、3曲分のデモをもらっていたんです。そのなかで、そこから進めていくのか、もうちょっと作るのかどうしようかと考えていたんですけど。1曲に絞って、これをベースに作っていこうとなって、それがジャケット写真を撮っていた時期だったんですよね。
藤田:厳しいガー子コンペがあるんですよ。何曲も送るんですけど、たまに誰やねん! って思うんですけどね(笑)。人が必死にやっとひねり出したものを、LINEの1行で“うーん”とかスタンプとかで返してきたりすると、さすがにやる気も失せて寝かせる曲はすごくありますね。今回の曲はガー子がいいんじゃない?って言っていたもので。
ーーこの「バスルームジェットキャンディ」のデモは、藤田さん自身も自信がある曲だった。
藤田:耳心地のいいものだったので、好きな曲でしたね。これだったら曲ありきのタイアップとか、今すぐじゃなくてもいつか隠れた名曲みたいな感じになるんじゃないかなって思ったりしてます。
ーー先ほどガー子さんは、今の藤田恵名さんをこう見せたいというのはありましたが、藤田さん自身は今どう自分の曲を自己プロデュースしていくかというのはあるんですか。
藤田:戦略みたいなものは全然わからないですけど、もう麻痺してるんですよね。脱げって言われたら脱ぐし。これを練習しなさいって言われたら練習するし。
田渕:おい(笑)。
藤田:自分が果たして何がしたいのかが、良くも悪くもわからなくなっているんですけど。でも歌えたらいいし、ライブができたらいいなっていう感じなので。ノンストレスなんですよね。
ーーただ、今こうして上がってくる曲はかなりハングリーな部分が強く出ますよね?
藤田:あまり自覚はないんですけど、売れたいんでしょうねえ。
田渕:はははは(笑)。
藤田:口では「もう諦めてます」とかいいつつ、まだやりたい、成し遂げたい、まだ人目にちゃんと浴びれてないっていうのはすごく思いながら芸能活動をやっているので。悪あがきに近いものはありますね。
ーーそうやってなんだかんだと言いながら、今回のようにタイアップだって掴むわけじゃないですか。それはその“売れたい”という思いが近づけてくれるんですかね。
藤田:はい(笑)。また売れたいっていうのが、きたんだろうなと思っちゃいますね。ワンマンが終わってから若干、このあとどうしようかなとか、ぼんやりと考えたりしていた時期のオファーだったので。これはやめちゃいけない、やるしかないんだっていうお示しだったのかなと思ったりしちゃいますね。
ーーちょっと、やめてもいいのかなっていう思いもよぎったってことですか。
藤田:強くは思わないんですけど、どこまで頑張っていいのかとか、これをやりたいとかがぼんやりとモザイクみたいになってきていたので。このままいくのかな、だとしたらちょっとかっこ悪いよなとか思う時期もあったので。ファン層もなかなか新陳代謝しないところもあるし。私が歳をとるということは、ファンの皆さんもどんどん上に上がっていくので。打開策が見えないままずっとやるのが怖くなって。やめたいっていうか、怖いなって思ったんです。
ーー女性のシンガーソングライターはそれこそたくさんいますが、藤田さんのロールモデルとなるようなタイプはいないですしね。自分で切り開くしかない。
藤田:そうなんですよ、誰もお手本にならない。例えばシンガーソングライターということだと宇多田ヒカルさんとか椎名林檎さんとかは、星がちがうというか、別次元という感じで。自分くらいの感じでやっている人は、いるのかもしれないですけど、私は知らないので。ただ、私がやめて喜ぶ人もすごい多いだろうとも思っちゃうんですよ。同世代の子とかは半ば諦めて、YouTubeとかでオリジナル曲を歌ってみたりとかしていて、そういう人たちから見ると同い年くらいで右肩上がりできている藤田が、すごく嫌だろうなって。そういう僻みも感じながらきていて。爆発的に大きな何かがないとなって思っていた矢先に、こうしていいお話があって。これは“持ってる”としか言いようがないなと。
ーー今回の「DEAD STROKE」は『バキ』のエンディングとしてNetflixで全世界に放映されるから、国も世代も超えて広がる可能性がありますからね。
藤田:どういう広がり方を見せるのかが、見ものだなって思ってます。海外のファンも増えたらいいなと思いますし。今の活動でも、インスタのフォロワーとかで海外の人もいて。海外の人とかはわりと過激なものも好きだから、ジャケットとかでも刺さっていたと思うんです。そこに今回、アニメという日本のカルチャーが乗っかって、どうなっちゃうんだろうって。
ーーダイレクトな反応を感じたいところだと思いますが、しばらくライブができない状況は続きそうです。ライブハウスの運営も大変な状況でもありますが、そこでどうアーティストとして活動していくのかは何か考えていますか。
藤田:コロナが収束して、帰る場所=ライブハウスがなくなってしまうことが今いちばん怖いので。だから家からの配信などもできるけど、ライブハウス側から「うちで配信ライブをしてください」ということがあればなるべく協力する体制でいるんです。今は、帰る場所を守り続けないといけない時期だなと思っていて、月1で配信ライブをやろうというのは決めてます。ただ私ひとりが月1でやったところでこの場所は守れないので、ガー子さんの知識も借りて、みんなで配信できる環境を作り上げて、他のバンドさんとかのお手伝いをすることも今はやっているところですね。自分だけが潤えばいいっていう感覚じゃなく、シーン全体で守ってきたものだから、SNSでの歌つなぎとかバトンとかよりも全然必要なものだと思うんです。
■リリース情報
『DEAD STROKE』
発売:2020年6月10日(水)
・バキ盤
価格:¥1,273(税抜)
・エナ盤(MAXI+DVD複合)
価格:¥3,000(税抜)