星野源が貫くミュージシャンとしてのあるべき姿 『おげんさんと(ほぼ)いっしょ』“ばらばら”の世界に向けて

『おげんさんと(ほぼ)いっしょ』から教わること

 そして曲作りにおけるポイントも以下のように語っている。

「この曲を作るときに気を付けたのが、キーを低くして上に声を重ねられるようにということ。女の子でも歌いやすいように、あとは男の人でもオクターブ上で重ねられるように」

「たとえば、クリックを聞きながらちゃんとリズムキープして歌っちゃうと打ち込みの人が有利になる。打ち込みだとループで作れたりもしてすごく楽だから。生楽器でやってくれる人と打ち込みの人が同じスタートラインに立ってほしいなと思ったから、わざと後半テンポを上げたりとかして」

「僕が弾いてるギターって進行としてはシンプルだし、わりと王道の進行なんだけど、ちょっとずつ変なテンション(コード)を使ってる。そしたらジャズ的なアプローチをしてくれる人もいて」

「だからこれをきっかけに、この人と一緒に今度やってみようという人がめちゃくちゃ増えた」

 たった1分に満たない動画だが、その中にはこうした様々な思いが詰め込まれている。なんとなく曲を作っているわけでも、なんとなく始めた企画でもない。そこに彼のミュージシャンとしての基本姿勢すら感じる。

 わずか30分ほどの番組であったが、そこには星野源のデビュー時から貫かれているスタンスから、ミュージシャンとしてのあるべき姿まで伝わってくるものだった。

 ちょうど放送のあった5月25日に緊急事態宣言は全面解除され、少なくとも日本では、徐々に"ばらばら"から戻ろうとしている。とはいえ、完全に元の日常に戻るまではまだまだ時間が必要だろう。

 しかし、たとえ今後も私たちがまた“ばらばら”になることがあっても、“それぞれの場所で重なり合う”ことはできるのだと、星野源から教えてもらったような気がした。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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