デビュー30周年の鈴木彩子、ありのままを貫く生き様 アーティストとフラワーデザイナーを両立しながら歌い続ける理由

鈴木彩子が歌い続ける理由

「音楽ができる理由はお客さんが全て」

――さきほどお話に出た静の部分を感じる楽曲に関しても、恋愛ではなく自然に対する思いを描いたものが多いですよね。自然への思いは、ずっと持っていたんですか?

鈴木:そうですね。田舎が宮城県で、自然もいっぱいで空も大きいんです。そういうところで育っているので、自然が好きなんだと思います。

――そういうルーツって、今お花屋さんをやっていることとも繋がっているんですか?

鈴木:お花も昔から好きだったんです。母親もお花が好きで、幼い頃から二人で歩いている時に「これは◯◯という花だよ」って教えてもらうようなこともあったんです。あと、母親は歌も歌っていて、若い頃はシャンソン歌手だったんです。よく歌っている姿を見ていたから、花と音楽が好きなのは母親ゆずりなんだと思います。

――そうなんですね! この道を歩んでいることは必然だったのかなと思います。

鈴木:そうですね。私は忘れていたんですが、18歳の時に雑誌で受けた取材で、音楽のインタビューなのに「私は将来お花屋さんになりたいです」って言っていたみたいです(笑)。ただ、今お花屋さんをやっているのは、流れがうまく繋がっていったというか。そこにふわっとのっかって……いや、そんなに簡単ではなかったですね。

――確かに、今作を聴いていてもわかるように、ここに辿り着くまでの道のりって、簡単ではなかったと思うんです。今作のブックレットも……表紙はデビュー当時の写真ですか?

鈴木:デビューした年の写真ですね。

――そして、ページをめくるごとに年を重ねていって、裏表紙が今の彩子さんの写真で終わる。そういったところも含めて、今作を制作しながら、ご自身のアーティスト人生を振り返ったところもあると思うんですが、彩子さんは、いろいろなことが変わっても、歌い続けているというところは変わらないですよね。それはどうしてだと思いますか?

鈴木:待ってくれているファンの方がいらっしゃるというのが、すごく大きいですね。不思議だなと思うのが、私がファンの方にメッセージを送っているはずなのに、逆にいつもみんなに助けられているんです。ライブ中も、中断してファンの方と話し合いになって「がんばれ!」って言われたり(笑)。どちらかというと、私が挫折しそうになった時も、ファンの方に「急がなくていいから」「待っているから」って言ってもらって、ここまでこれたんです。1年半前に久しぶりにライブをやった時も、最初はライブの予定がなかったんですが全国からファンの方がお花屋さんに来てくださって、今までの熱い思いを、時には泣きながら、震えながら話してくれて。「中学時代に助けられたから、ずっと感謝している」とか……そういう話を聞いて私も感動して、そんなにみなさんが待っていてくれるならライブをやろうと決めました。そうやって、いつも背中を押してもらっているし、ずっと(ファンと)一緒に歩いてきた感じがしています。音楽ができる理由はお客さんが全てだと思っていたし、そう教わってきたし、みんながいるから今までやってこれたと思うので。もちろん、スタッフのみなさんにも恵まれています。田んぼの真ん中で育った田舎者を育ててくれたわけですからね。だから続けてこられたんだと思います。

――お話を伺ってきて思ったんですけど、彩子さんがいつでもありのままでいるから、ファンの方や周りの方もありのままの気持ちを彩子さんに伝えられるんじゃないんですか? 裸の心でコミュニケーションし続けていられる、というか。

鈴木:そうかもしれないですね。ありがとうございます。

――DVDで過去のライブの様子を拝見すると、水を得た魚のように楽しそうにしているので、彩子さんにとってライブは心地よい場所なんだろうなと思ったんですが、どうですか?

鈴木:そうですね。私は見えないものやパワーを信じているのですが、言葉や音だけじゃなく、気迫って絶対に伝わると思うんです。ライブは、お客さんの“気”もこっちに伝わるし、自分が出せば伝わると信じているし。その相乗効果もあるんでしょうね。すごくエネルギーをもらえます。

――今回のCD、DVDの選曲に関しても、SNSを通じてファンの方からリクエストを募ったそうですが、どんな声が届きましたか?

鈴木:みんな、リクエストの際に曲への思い入れを書いて下さってて、胸が熱くなりました! 全ての曲を入れる事はできないので、悩みましたが、最初自分が出した選曲から少しだけ変えました。

――今回のオールタイムベストを経て、これからどう進んでいきたいとか、見えている目標はありますか?

鈴木:今までも、その時に思っていることを、最高の形で表現してきただけで、そんなにいろいろ計画してスムーズにできるタイプではないんです。今は……まだライブがどうなるかわからないですけど、縄跳びと腹筋とジョギングで、トレーニングしておきます(笑)。

――では、いろいろ収束したあとは、生でパワフルな歌声が聴けそうですね。

鈴木:そうですね。本当に、早くこの状況がなんとかなってほしいですよね。

――こういう状況下だからこそ、歌もお花も大切なものだと改めて実感した部分はありますか。

鈴木:そうですね。お花屋さんも、今は短縮営業しているんですけど、みなさん買いに来てくださるんです。「花でも飾らないと気が滅入るから、お店を開けてくれてありがとう」って言ってくださるんですよ。音楽にも、私自身が癒されていて。テレビは同じようなニュースばかりだから、音楽もののDVDを観ているので。でも、こういうことがなくても……音楽を聴いていると、空を飛べるじゃないですか。花もじっと見ていると、めしべとおしべが宇宙に見えてくる。遠出ができなくても、音楽とお花で旅ができるんですよね。

鈴木彩子 / ALL TIME BEST ALBUM トレーラー映像

■リリース情報
鈴木彩子『ALL TIME BEST ALBUM 』
生産限定盤 CD2枚+DVD1枚+別冊BOOK
価格:6,000円(税抜)
通常盤 CD2枚
価格:3,000円(税抜)
2020年5月27日(水)リリース予定

<収録曲>(※カッコ内は初収録作品)
Disc1: Passionately
01. 葛藤 (1993年 Single)
02. 有罪 (2000年『サイコ』)
03. ループ (1998年『9 -nine-』)
04. 自分自身の証明 (1997年『罪深き英雄』)
05. 希望の鐘 (1994年『BORO BORO』)
06. 罪 (1994年『BORO BORO』)
07. 僕はここにいるよ (Acoustic Live Version) (1996年 Video『あの日に帰ろう』より)
08. HELP (1994年 Single)
09. HOPE (1997年『罪深き英雄』)
10. 長い放課後 (1995年『愛があるなら』)
11. 愛があるなら (1995年『愛があるなら』)
12. 道 (1994年『BORO BORO』)
13. あの素晴しい愛をもう一度 (1996年 Single)
14. VOICE ~明日への滑走路 (1993年『けがれなき大人への道』
15. 独立戦争 (ロングバージョン) (1990年『天地創造』)

Disc2: Softly & Gently
01. COUNT DOWN (1992年『19才の鼓動』)
02. 風に吹かれて (1992年『19才の鼓動』)
03. それぞれの探しもの (1993年『けがれなき大人への道』)
04. この道の上 (2001年 Single)
05. この星で出会った君 (1995年『愛があるなら』)
06. 水色の手紙 (1997年『罪深き英雄』)
07. 好きと言おう (1992年『19才の鼓動』)
08. Tomorrow (1995年『愛があるなら』)
09. 光 (2010年 Single)
10. あの日に帰ろう (1996年 Single)
11. 少年 (1996年『24の誓い』)
12. 世界が静かで こんなに静かで (2007年『Numb』)
13. ラムレーズン (2005年 LIVE会場限定配布CD)
14. やわらかに ゆるやかに (2000年『サイコ』)
15. たった一度の物語 (1994年『BORO BORO』)

DVD(生産限定盤のみ) (二層式:154分収録)
・COUNT DOWN (LIVE)
・導火線に火をつけろ! (LIVE)
・僕はここにいるよ (LIVE)
・葛藤 (LIVE)
・Dreamer (スタジオLIVE)
・愛があるなら (MV)
・ひとりぼっちの意味 (LIVE)
・HELP (LIVE)
・希望の鐘 (スタジオLIVE)
・VOICE ~明日への滑走路 (LIVE)
・石ころ (MV)
・一度だけの昨日 (MV)
・O. K. (MV)
・ニュース (LIVE)
・黄金時代 (MV)
・ピアニシモのように (LIVE)
・風に吹かれて (スタジオLIVE)
・電話できなかった (スタジオLIVE)
・独立戦争 (メイキングMV)
・GOAL (未発売LIVE)
・月光 (スタジオLIVE)
・情熱 (MV)
・あの日に帰ろう (LIVE)
・最後の抵抗 (LIVE)
・罪人 (LIVE)
・遠い夜明け (LIVE)
・心臓 (MV)
・インコ (MV)
・天国 (MV)
・世界が静かで こんなに静かで (MV)
・ガラスの様な雨 (弾き語りLIVE)

■配信情報
iTunes Store、レコチョク、mora他、主要配信サイト、定額制聴き放題サービスにて、
5月27日(水)から配信スタート!(*ビクター時代の全音源の配信も準備中です)

■鈴木彩子(すずきさいこ)
宮城県出身。中学生の時にライブハウスで聴いた曲(RADIO SHOP「VOICE」)に衝撃を受け、音楽の夢を志す。モデルとしてスカウトされて上京、音楽活動を開始する。
1990年5月21日「独立戦争」(作詞作曲:高見沢俊彦)でビクターからデビュー。以降、90年代は多くの作品をリリースし、コンサートツアーを行った。1996年、映画『アトランタ・ブギ』(監督:山本政志)で主演を務め、毎日映画コンクールの新人賞を受賞。1998年、芸名を「サイコ」に変更。同年12月、自動車事故に遭い大怪我を負うが、懸命なリハビリの結果、2000年6月には復帰作をリリースした。2005年に芸名を「SAICO」に変更し、以後は自主制作で作品を発表している。
2017年、フラワーショップ「アナスタシア」をOPEN。近年はフラワーデザイナーとしても活躍中。

鈴木彩子(SAICO)オフィシャルサイト
ビクターエンタテインメント 鈴木彩子オフィシャルページ

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