高見沢俊彦、ソロと小説で広がる“表現への情熱”「振り子の大きさが創作意欲を刺激する」

高見沢俊彦、表現への情熱

 THE ALFEE・高見沢俊彦のソロプロジェクトTakamiyが、3年ぶりとなるシングル『薔薇と月と太陽~The Legend of Versailles』を7月25日に発表した。表題曲はメタルとクラシックを融合した“Takamiy'sメタル”にのせ、ベルサイユ宮殿と現代を舞台に“禁断の恋”を描いたラブソングだ。本インタビューでは、今年結成45年を迎えたTHE ALFEEのリーダーとして、Takamiyとして、そして先日重版が決定した『音叉』を執筆する小説家・髙見澤俊彦として、それぞれの表現に通じる高見沢の根底にある音楽的志向に迫った。(編集部)

ベルサイユ宮殿と現代に通じる“人間の恋の本質や性”

ーー「薔薇と月と太陽~The Legend of Versailles」はハードロック/メタルとクラシックのエッセンスを融合してドラマチックに盛り上げる、ストリングスも印象的な楽曲です。今作の方向性について、高見沢さんはどんな風にお考えだったのでしょう。

Takamiy:3年ぶりのシングルでしたし、“どこから聞いてもTakamiy”を目指したらこうなりました。歌詞も含めてこの世界観を臆面なく歌えるのは僕だけかな、なんて(笑)。なんせ「薔薇と月と太陽」ですからね。

ーーこれまでにもTakamiyとしてたくさんのバリエーションの楽曲を生み出してきましたが、これがド真ん中ということでしょうか。

Takamiy:直球ですよね。大谷翔平選手流の豪速球がこれですよ(笑)。

ーー今回の曲は歌詞の世界観も特徴的です。この王道かつロマンチックなアイデアはどんなところから着想を得ましたか。

Takamiy:個人的にルイ14世の時代にハマった時期があったんです。当時の貴族は結婚するまで自由がなかったらしいんですよ。でも、結婚してからこそ、自由な恋愛ができた。今と逆ですよね。いわゆる“禁断の恋”はベルサイユ宮殿の貴族の世界はもちろん、現代の日本でもいけないこととされながらも、惹かれる危険な恋として存在している。だからそれをサビではベルサイユ宮殿、Aメロでは現代、というようにうまく時空を超えて、禁断の恋を綴ったラブソングにしようと考えました。歌の世界であれば炎上しませんから(笑)。だからそういう人間の恋の本質、性、というのかな。そういったものをベルサイユ宮殿を使って歌にしてみたのは自分の中でも新しかったです。

ーーどこか悲劇に終わる、悲恋のムードもあります。

Takamiy:それはやはり、テーマの背景にベルサイユ宮殿があって、マリー・アントワネットが夫婦共々断頭台に上がったという出来事があったからでしょうか。すべては自然発生的なものかもしれないけれど、その後に起こったフランス革命のためのベルサイユ宮殿だったのかもしれない。悲劇で終わってしまったからこそ永遠に語り継げるドラマになった。

Takamiy『薔薇と月と太陽~The Legend of Versailles』(初回限定盤A)

ーー今作は4形態が用意されていますが、初回限定盤AのCDジャケットは『ベルサイユのばら』の作者・池田理代子さんが書き下ろしたスペシャルバージョンとなっています。

Takamiy:これは歌詞を書いている途中に、ベルサイユが出てきて、薔薇が出てきたらもう池田理代子さんしかいないなと。個人的にも懇意にさせてもらっているので、おそるおそる打診したら快諾していただけました。嬉しかったですね。「髪型どうします? 高見沢さんにします? Takamiyにする? それともオスカルにする?」と聞かれたので「うん、オスカルにして!」とお願いしました(笑)。池田理代子さんのカバーデザインによってこの楽曲がさらにパワーアップしたような気がしますね。

ーー初回盤Cに収録されている「太陽はもう輝かない」は、The Walker Brothersのカバー。ドリーミーで美しい仕上がりです。

Takamiy:嬉しいです。そこを誰も追及してくれないんですよ(笑)。

ーー原曲も名曲ですね。

Takamiy:最初に聴いたときはそうでもなかったんですけど、だんだん聴いているうちにスコット・ウォーカーの声がいいなと子供ながらに思って。GSブームの頃、ものすごい人気でしたからね。イギリスでは1位になったし、日本でも「太陽はもう輝かない」「孤独の太陽」がものすごく売れたんですよ。「太陽はもう輝かない」は聴いていくうちにハマっちゃったんですけど、ただ自分では歌えないなあと思っていたんです。でも、THE ALFEEが40周年の時に僕が喉を壊してしまって、それ以降、喉を大事にする歌い方に変えたんです。それからしばらくしてこの曲をちょっと試しに歌ってみようと思い立って。The Walker Brothersより僕のほうがキーは一音高いんですけど、けっこういい感じで歌えたので、改めてカバーしてみようかなと。最初は他の楽曲と同じように生ギター1本でやったんですよ。ところがやっぱり最初のブラスのイメージ……あのイメージがあったのでちょっと音を入れてみたら「やっぱりこっちだな」と。どんどん足していったらオリジナルに近くなっちゃいました(笑)。

ーー今回オリジナルバージョンも聞き直してみたのですが、たしかにすごく忠実というか、オリジナルを発展させたアレンジでしたね。

Takamiy:キーが違うし、エレキギターのフレーズはアレンジしちゃいましたけど、それ以外はThe Walker Brothersに寄せていますね。この歳になってThe Walker Brothersのカバーができるようになったのはすごく嬉しかったです。

ーー高見沢さんのルーツにThe Walker Brothersがあるというのは意外でした。

Takamiy:スコット・ウォーカーが作り出すサウンドは今聴いてもいいんですよ。あのデヴィッド・ボウイが憧れたアーティストですからね。

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