ハナレグミ、Caravan……ネット配信を介して音楽を届ける、弾き語りによるアクション

ハナレグミ、Caravan……ネット配信を介して音楽を届ける、弾き語りによるアクション

Caravanのライブ配信 違うフェーズの世界での再会を約束

 そして、Caravanだ。まず4月18日に「4月21日PM8時頃から久しぶりにインスタライブやろうと思います」と告知。で、その日時に、彼の仕事部屋でありプライベートスタジオである「Studio Byrd」から、生配信でライブをスタート。

 Caravanもハナレグミと同じく、ひとりでライブをやる時は、ギター等でループを使ったり、歌にハモリをつけるボーカルエフェクターを用いたりすることが多いが、この日はノーマイク・ノーケーブルで、アコースティックギター、ハープ、歌、カメラ一台(たぶんスマホ)、というシンプルな仕様で、全6曲をプレイ。

 「Sweet Home」「Bye-bye bluebird」「Magic Night」「Stay Home」「Night song」「ハミングバード」というセットリストだった。「Magic Night」は3月30日にリリースされたばかりの配信シングル、「Stay Home」はこの日初めて発表された新曲、「Bye-bye bluebird」は、「普段あまりライブではやらないレアな曲を」という理由で歌われる。

 「Night song」は、Caravanが初めてインディリリースしたアルバム『RAW LIFE MUSIC』(2004年4月)のラストの曲。その『RAW LIFE MUSIC』がリリースされた日が16年前のこの日で、Caravanという名前になって初めて作った曲だそうだ。最後にアンコールっぽく追加された「ハミングバード」も、「『RAW LIFE MUSIC』からもう1曲」という理由で選ばれた。

 なお、その「ハミングバード」を歌う前に、次は初めての試みとして、有料の配信ライブ『“Live in Your Room #2”』を、4月30日に行うことを発表した。ZAIKOの配信システムを使って実行、1,200円、とのこと。

 で、その4月30日。あ、なぜタイトルに『#2』と付いているのかというと、以前に『#1』=1回目をやっているのだ。2019年4月24日で、その時は「デビュー15周年を記念して」ということと、生活環境の変化等で、昔みたいにしょっちゅうライブを観に行けない、というファンの声にも応えたい、というふたつが理由で行われた。その時は無料だった。つまり開催の動機が異なっているわけで、本人もMCで「前回のYouTubeライブの時の感じと同じなんだけど、目的というか、心づもりが全然違って……2回目で、まさかこんなことになるとは……」とか、「なんかね、こういうライブがね、あたりまえになってきちゃうのも、なんかせつなくて」などと、複雑な思いを吐露する。

 場所は、前回と同じく「Studio Byrd」。ただし、今回はカメラが複数台入っていて、曲中に切り替わる。Caravanの映像仕事を長年手掛けてきた映像作家、番場秀一のディレクションだそうで(とCaravanが説明)、曲によって、カメラマンが盛り上がっちゃって振り上げた腕が見切れたりしていたのが、彼だと思う。

 サウンドの面でも、前回は歌とギターとハープだけだったが、今回はギターのループもボーカルエフェクトもあり、ギターもアコギとセミアコを持ち替えながら進んでいく。

 セットリストも、「今日はライブでよくやる曲を」ということで、「Stay Home」「Trippin’ Life」「Wagon」「Music Save My Life」「The Passenger」「アイトウレイ」「Magic Night」「モアイ」「夜明け前」「Hello & Goodbye」、ラストにアンコールとして「サンティアゴの道」という11曲だった。

 それが終わったあとに、作ったばかりだという「Stay Home」のMVが流れる。途中で、「Stay Home」は無料ダウンロードでみんなにプレゼントする、もう落とせるようになっている、という告知もあった。

Caravan / Stay Home 【MUSIC VIDEO】

 それから、中止になった5月30・31日の渋谷さくらホール2デイズの日に、有料配信でライブを行う、発表されていたとおり1日目は堀江博久とふたりでライブをやり、2日目はお客さんからの希望に応えて選曲する「オール・リクエストデイ」として行うことも、アナウンスされた(ライブの詳細はこちら)。

 前回もそうだったが、全体に、なぜ自分は今この曲を選んで歌うことにしたのか、その必然が1曲ごとに伝わってくる、すばらしいライブだった。そして、〈全てがホントで 全てがウソかも それでも行かなきゃ Hello & Goodbye〉と歌う「Hello & Goodbye」のように、とうの昔に書かれた曲なのに、今のこの状況を描いているかのように響く曲が何曲もあることも、Caravanらしいと感じた。

 あと、最後に、「まあほんと、今しんどい時だけど、乗り越えましょうよ。そいで、必ず笑顔で再会しましょうよ。その時は、元通りの世界に戻るんじゃなくて、もっと違うフェーズの世界で、再会しましょうよ」という言葉で締めていたのが、とても印象的だった。

 よく言われていることなので、もうききたくないだろうし、僕だって書きたくもないが、この先、事態がだんだん好転して、少しずつ世の中の動きが元に戻り始めたとしても、音楽のライブ(特にライブハウス)という場は、その「元に戻る」順番としては、最後になるだろう。自粛に入る順番がいちばん最初だったのと同じで。という時に、何を考えてどう動くか、という例を、このふたり(だけではないが)のミュージシャンのアクションは、見せてくれているように感じる。

 その後ハナレグミは、5月13日にohana(永積崇とクラムボン原田郁子とPolarisオオヤユウスケのバンド)の楽曲「ヒライテル」の弾き語り動画をアップした。 この時は映像はカラーで画角は正方形。

 そしてCaravanも、5月13日にまた「Studio Byrd」から生配信ライブを行った。この日はトーク多めで、 本人曰く「小さな場末のスナックに飲みに行く気分で遊びに来て下さい」 という、リラックスした生中継だった。なお、5月16日に配信限定で『Callin’ / Today’s the Day』をリリースすることをこの日発表(詳細はTwitterにて)。 前者は2013年のアルバムでサブスク配信されていない『Quiet Fanfare』の収録曲。後者は新曲で、「先日亡くなってしまったビル・ウィザースにリスペクトを込めた曲」とのこと。

■兵庫慎司
1968年生まれ。音楽などのライター。「リアルサウンド」「DI:GA ONLINE」「ROCKIN’ON JAPAN」「週刊SPA!」「KAMINOGE」などに寄稿中。

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