PEDRO、社会情勢の変化とともに巻き起こした“現象” 様々な仕掛けから紐解く思いの連鎖と覚悟

PEDROが巻き起こした“現象”

 そして、PEDROは同日に全公演キャンセルとなった全国ツアー『GO TO BED TOUR』の無観客ライブをYouTubeで配信することを発表。

PEDRO / GO TO BED TOUR 無観客ライブ [OFFICIAL TRAILER]

 上記の動画の詳細欄には、このように書かれている。

「我々PEDROチームとしましては、『GO TO BED TOUR』のステージを最高の形でみなさまの記憶に残したい。この部分に関しては満場一致の結論でした」「先の情勢が見えない中で今回告知した生配信の実施ができない可能性もございます。生配信が実施できない場合、収録した内容をYouTubeにて日時時間を決めて放送させて頂きます。何年かかってでもみなさまに何かしらの形で、こちらのステージをお届けできるよう善処致します」。

 さらに、全国9都市を回る全国ツアー『LIFE IS HARD TOUR』を9月に開催することを発表。アユニ・Dのオフィシャルインタビュー動画も公開し、作品やライブに向けての思いを語っている。

PEDRO / OFFICIAL INTERVIEW [衝動人間倶楽部]

 こちらの映像は、プロジェクトがスタートしてからずっとPEDROに密着してきた映像作家のエリザベス宮地が撮影と編集を担当。PEDROのツアーを経て人間的にも大きな成長を果たしたアユニ・Dのライブにかける思いが中心にあり、それがスタッフや周囲のクリエイターを含めたPEDROチームに情熱として伝わり、人々を突き動かしている。そのことが生々しいドキュメントとして伝わってくる内容になっていた。

 こうした様々な仕掛けと思いの連鎖が、4月29日のEP『衝動人間倶楽部』の反響につながったわけである。

 しかも、その“仕掛け”はまだまだ継続中だ。

 PEDROは8月12日に1stシングル『来ないでワールドエンド』をリリースすることを発表。しかもEP『衝動人間倶楽部』の「PEDRO / BiSHファンクラブ限定特典付きパッケージ」に、サプライズで同曲の音源を収録したCDが同封された。

 同パッケージを購入し、CDを受け取ったファンは2200人。その1人1人がgigafile便やdropboxを使って音源をシェアしたり、YouTubeに公開して楽曲をプロモーションするという「#PEDRO脱法宣伝大喜利」の企画がスタートした。

#PEDRO脱法宣伝大喜利

 オフィシャルページの企画趣旨にはこう書かれている。

「今回のCDを貰えなかった人が『転売』で買わなくても済むように、受け取った方は是非気軽に音源をUPしたgigafile便のリンクやYouTubeに音源をUPするなどして、Twitterで『#PEDRO脱法宣伝大喜利』を添えて発信するなどしてみてください!!」

「権利主であるレーベル及び事務所として、こちらの音源の使用の権利を主張することはありませんので、通常違法とされる形式でバンバン音源を拡散してください」

 しかも、アユニ・Dおよびスタッフの主観で最もプロモーションにつながった「大賞」を選び、その対象者には「iTunes Card 100万円分」もしくは「PEDRO主催ワンマンライブ一生入場可能な権利」がプレゼントされるという。

 これまでの音楽業界の常識や慣例を覆すような、相当面白い実験が行われている。しかも、この手の“仕掛け”は楽曲自体に魅力がないとスベってしまうことも往々にしてあるので、そこの自信も相当大きいということだ。目が離せない。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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