薬師丸ひろ子の歌の魅力 80年代名曲とエレガンスなステージングによる『薬師丸ひろ子 2019コンサート』を振り返る

『薬師丸ひろ子 2019コンサート』を振り返る

 40年変わらぬ魅力を放ち続ける奇跡の歌声

 薬師丸ひろ子×シンガーソングライターの足がかりとなったのが歌手デビュー曲「セーラー服と機関銃」で、ライブでは終盤の盛り上がりどころとなった。来生たかおの作曲と来生えつこの作詞で、2人は同曲で一躍ヒットメーカーへの仲間入りを果たし、中森明菜の「スローモーション」を手がけた他、薬師丸のアルバムでも数多くの楽曲提供を行っている。ライブでは、イントロの印象的なギターフレーズが鳴り響くと会場に手拍子が広がった。当時と寸分違わぬと感じさせる歌声に観客の目が輝き、映画で彼女が演じた主人公・星泉の凛とした佇まいそのままの力強さでファンを魅了した。

 またこのライブでは、1曲目に披露された「野の花」を始め、2018年にリリースされたアルバム『エトワール』に収録された楽曲が、要所要所で歌われた。同作は20年ぶりのアルバムであったことや、松井五郎など大御所だけでなく、さかいゆうやいしわたり淳治といった近年のクリエーターが参加したことでも話題を集めた。薬師丸自身が作詞を手がけた楽曲も収録され、それはライブでも披露されて集まったファンを感動させた。

 彼女が作詞した「アナタノコトバ」は、ピアノをバックにしっとりと歌い上げたバラードで、年齢を経て今をどう生きるかを歌った。母親の言葉を胸に凛として前を向いて生きる強さと、すべてを許し慈しむような歌詞が胸を打つ、大人に向けたメッセージソングだ。「エトワール」も彼女の作詞で、昭和、平成、令和と激動の時代を生きてきた大人へのレクイエムといった雰囲気。彼女の包み込むような歌声が実に優しく、すべてを浄化してくれるような清らかさが感じられた。

 デビュー当時から少し大人びた楽曲を歌い、80年代当時の多くの女性アイドルとは一線を画した存在感を発揮した薬師丸ひろ子。その根底にあるのが、しっかりとした芯が感じられる、透明で清純さを湛えた声質の魅力だろう。彼女の歌声がシンガーソングライターたちに刺激を与えたことで、多くのヒット曲が生まれたと言える。そんな歌声の魅力を失うことなく、40年経った現在でも保ち続けていることはまさに奇跡だ。『薬師丸ひろ子 2019コンサート』は、そんな奇跡の歌声に触れ、当時の思い出と共に新鮮な驚きを与えてくれる作品。今聴いても尚新鮮に輝く80年代の名曲と薬師丸ひろ子の奇跡の歌声、そしてエレガンスなステージングに、この機会にぜひ触れてほしい。

薬師丸ひろ子 -「薬師丸ひろ子 2019コンサート」ダイジェスト映像

■リリース情報
Blu-ray&DVD&CD
『薬師丸ひろ子 2019 コンサート』
発売:2020年2月19日(水)
Blu-ray ¥6800(税抜)
DVD ¥5800(税抜) 
CD(2枚組) ¥3800(税抜)

ビクターエンタテインメント 薬師丸ひろ子公式サイト

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