薬師丸ひろ子の歌の魅力 80年代名曲とエレガンスなステージングによる『薬師丸ひろ子 2019コンサート』を振り返る

『薬師丸ひろ子 2019コンサート』を振り返る

 4月18日にNHK BSプレミアムで、『薬師丸ひろ子コンサート2018「歌がくれた出逢い」』が再放送された。「セーラー服と機関銃」「探偵物語」「Woman“Wの悲劇”より」など名曲のライブシーンの他、それら楽曲を手がけた松任谷由実・井上陽水・大瀧詠一等ソングライターたちとの交流秘話も放送され、往年のファンの間で話題を集めた。また2月には、昨年10月26日に東京 Bunkamura オーチャードホールで開催したコンサートの模様を収録した、ライブBlu-ray&DVD&CD『薬師丸ひろ子 2019コンサート』もリリースされた。女優とはまた違った表情を見せる、薬師丸ひろ子の歌の魅力について改めて考えてみたい。

有名シンガーソングライターが手がけた名曲の数々

 映画『ALWAYS 三丁目の夕日』やドラマ『あまちゃん』などのヒット作に数多く出演し、日本を代表する女優として活躍する薬師丸ひろ子は、1978年に映画『野性の証明』でスクリーンデビュー。映画『翔んだカップル』(1980年)『ねらわれた学園』(1981年)『セーラー服と機関銃』(1981年)といったヒット作に立て続けに主演。映画『セーラー服と機関銃』では、主題歌「セーラー服と機関銃」で歌手デビューし、同曲でいきなりチャート1位を獲得した。その後も主演作の主題歌を自ら歌う形で「探偵物語」(1983年)「Woman "Wの悲劇"より」(1984年)など多くのヒット曲を世に送りだし、アイドル全盛だった80年代当時において、女優と歌手の両輪で大きな存在感を放った。

 硝子細工のような繊細さと真っ直ぐさ、そして包み込むような温かさ。薬師丸ひろ子の持つ歌の魅力は、デビューから40年経った現在も決して失われることなく、むしろ深みを増している。『薬師丸ひろ子 2019コンサート』では、「セーラー服と機関銃」を代表とした往年のヒット曲を始め、2018年にリリースしたアルバム『エトワール』からの楽曲、そして『あまちゃん』劇中歌「潮騒のメモリー」や、松任谷由実が歌った『ねらわれた学園』主題歌「守ってあげたい」などのカバーも披露された。

 セットリストは80年代のヒット曲を中心に構成され、その多くの詞曲を80年代から現在も活躍を続ける人気シンガーソングライターが手がけてきたことも、彼女の楽曲の魅力だろう。

 例えば「探偵物語」とそのカップリング曲「すこしだけやさしく」は、2曲とも作詞を松本隆、作曲を大瀧詠一が手がけた。元はっぴいえんどの2人によるタッグは、松田聖子の「風立ちぬ」など80年代のアイドルシーンで多くのヒットを生んでおり、このシングルは薬師丸ひろ子をアイドルへと押し上げる起爆剤になった。「探偵物語」は松田優作と共演した同名映画の主題歌で、大人の恋に背伸びをした少女の心情が歌われ、大人と少女との間で揺れ動く切なくもどかしい表現が聴きどころだ。いくつになっても色褪せない少女性を感じさせる歌声は、彼女の歌声の魅力と言えるだろう。

 井上陽水の作詞作曲による「ステキな恋の忘れ方」(1985年)は、少し暗い雰囲気からハイトーンに展開するところが実に陽水らしい楽曲で、この大人びた曲を彼女は当時21歳で歌っていた。それから大人になった今歌う同曲は、説得力が増し楽曲の魅力が倍増している。今の年齢だからこその深みと色気が陽水ワールドとマッチして、実に聴き応えのあるものになった。また彼女の1stアルバム『古今集』(1984年)のために竹内まりやが書き下ろし、後に竹内がセルフカバーしたことで広く知られるようになった「元気を出して」も披露。同じ歩幅で寄り添ってくれるような、非常に親しみのある温かみが感じられ、ライブでは観客もゆったりと肩を揺らして楽しむ様子がうかがえた。

 他に薬師丸の80年代の楽曲には、松任谷由実、高見沢俊彦(THE ALFEE)、南佳孝、玉置浩二、宇崎竜童、阿木耀子、大貫妙子など多くのシンガーソングライターが携わっている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる