Twenty One Pilotsが描く“2020年4月を生きるリアル” 不安と混沌の時代に〈alright〉を告げるダンスポップ
“距離を置いた”制作プロセスとコミカルなMV
制作プロセスにおいても「Level of Concern」は今の状況らしい取り組みが行われている。本楽曲は前作同様にメンバーのタイラー・ジョセフ自身とポール・ミーニー(Mutemathのフロントマン)のプロデュースによって制作されており、ジョシュ・ダンのドラムプレイとタイラーの太いベースが生む力強いボトムを活かした音像を楽しむことができる。しかし、制作において、メンバーは一度も顔を合わせていない。最初から最後まで互いにデータをやり取りすることで楽曲を完成させているのだ。
今作のミュージックビデオはその制作風景をテーマに据えた内容となっており、USBメモリを使ってお互いの環境で距離を置きながら楽曲制作を行う様子がコミカルに描かれる。序盤こそシンプルな録音風景が続くが、クライマックスでパートナーの協力と手持ちのアイテムによってドラマティックな映像を作り上げる光景は、変わり映えしない日々を生きる今だからこそ胸に響く。このMV自体も、「自宅にいながらクリエイティブを楽しもう」という一つのメッセージになっているのだ。また、ラストで発覚する“ある事実”で、彼ららしいユーモアも感じることができる。
ロック不遇の時代と言われる中、ほぼ唯一の“例外”として絶大な人気を誇るTwenty One Pilotsは適切なタイミングでその時々の“リアル”を描いてきた。驚異のスピードでリリースされた「Level of Concern」も多くの人々に共感を与えるだろう。しかし、彼らはただ不安を煽るだけの存在ではない。楽曲の後半で、彼らは不安を抱えながらも〈〈We're gonna be okay(僕たちは大丈夫だ)〉〉と歌っている。今、「大丈夫」と言えることがどれほどファンにとって心強いだろうか。次は我々が「大丈夫」と言う番である。
■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。
シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura
■楽曲情報
Twenty One Pilots「Level of Concern」
4月9日(木)配信開始
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