北野創の新譜キュレーション
麻倉もも、DIALOGUE+、諸星すみれ……春らしい華やかなアニメ/声優ソングをピックアップ
そして今回のミニアルバム『せめて空を』には、前作に続いての参加となるriya(eufonius)や、CooRieのrino、元CooRieの長田直之といった面々が楽曲を提供。森ガール的なナチュラル感も感じられた前作に比べて、より打ち込みの要素を強めつつ、引き続きガーリーで透明感のある、耳に心地よい音を展開しています。なかでも白眉と言えるのが、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの松井洋平が作詞、石川智久が作編曲した「premier」。80年代のYMO周りの人脈によるポップス仕事にも通じる、ニューウェイヴ以降のヨーロピアンポップス~テクノポップといった風情のサウンドは非常に洗練されていて、釘宮の不思議なピュアネスを宿した歌唱との相性も抜群。上品にして上質、時代の波や流行り廃りに左右されることなく、タイムレスに愛聴できる作品と言えるでしょう。
最後に「女性声優による作品」というテーマからは少しズレますが、音楽的に刺激に富んだ内容なので、『アイドルマスターシンデレラガールズ』のキャラクターソングより、『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 055-057 早坂美玲・藤原肇・夢見りあむ』を紹介させてください。同作に登場するアイドルのソロ楽曲シングルを3人分まとめて収録した本作。石濱翔(MONACA)によるエレクトロニコア未満のクール&キュートなシンセロックがキャラのイメージにハマった早坂美玲(CV:朝井彩加)のソロ曲「Claw My Heart」、椎名豪が作編曲したクワイア入りの壮大なバラードを藤原肇(CV:鈴木みのり)が堂々と歌い上げる「あらかねの器」も素晴らしい楽曲なのですが、特にすごいのが夢見りあむ(CV:星希成奏)のソロ曲「OTAHEN アンセム」。“ザコメンタルのアイドルオタク”というキャラ立ち抜群の彼女らしく、楽曲の中にコール要素を大量に盛り込んだ電波ソングになっているのですが、ピーキー極まりないシンセのフレーズがP-MODELの代表曲「美術館で会った人だろ」などを彷彿させるということで、ラジオ番組で同曲が解禁された直後にP-MODELの名前がツイッターのトレンドワード入りする事態に。この何が飛び出すかわからない面白さこそが、アニメ音楽やキャラソンの魅力だなと改めて感じた次第です。
■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。