SIRUPにとって2020年は飛躍の年に? ティーンの心を掴んで離さない音楽性を紐解く

 2017年より株式会社AMFが発表している「2020年JC・JKトレンド予測」に、ヲタクあるあるで知名度をあげた末吉9太郎(CUBERS)や映画『タロウのバカ』などに出演し注目必須なYOSHIと並び、シンガーソングライターSIRUPの名前があがった。また、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の人気企画「売れっ子プロデューサーが選ぶ2019年の年間ベスト10」にピックアップされるなど注目を集めている。

 早耳な音楽リスナーの間では知らない人もいないであろう彼が、なぜこのタイミングで注目され、若者たちの心を捉えているのか。2018年末からのSIRUPの動きを追いながら、検証していきたい。

流行を率先する『テラスハウス』挿入歌や著名人からも支持

 若者に認知される最初のきっかけとなったのは、おそらく『テラスハウス OPENING NEW DOORS』(軽井沢篇)だ。44話のプレイルームで海斗とまやがキスするシーンで使われたのが、SIRUPの「LOOP」。メロウで艶っぽいサウンドと〈まるで LOOP LOOP LOOP〉というリリックは、毛布をかぶり何度も唇を重ねるふたりにピタリとハマった。

 これまでもテラスハウスは映像にフィットする音楽を用いり、若者の音楽ブームを率先してきている。あいみょんの「ふたりの世界」やOfficial髭男dismの「Stand By You」は、その筆頭と言ってもいいだろう。テラスハウスでの起用が”SIRUPというオシャレなアーティストがいる”という認知の先駆けとなったのだろう。

SIRUP - LOOP (Official Music Video)

 そして認知の拡大にさらなる追い風となったのは、2019年1月31日より公開されたHonda「VEZEL TOURING」のCMだ。この作品にSIRUPの「Do Well」が起用されたのである。颯爽と駆け抜けるVEZELと〈Da la ta ta ta do well〉という誰でも口ずさめるサビは、記憶に引っかかるインパクトを与えた。

 Suchmos「STAY TUNE」や米津玄師「LOSER」などの認知率をあげたのも、同社CMだったわけだが“自動車業界”というのは重要な点のひとつ。自動車業界のCMというのは、週末にかけてスポットCMの放送回数が増える傾向にあり、端的に言うと視聴者が多くなる時間帯を狙って放送されている。(参照:XICA magellan)たった15秒といえど何度も目にすると、記憶にすりこまれていくもの。CMを通してのアプローチが、ただでさえインパクトある「Do Well」という曲を誰もが耳にしたことのある曲にしたのである。

SIRUP - Do Well (Official Music Video)

  また、“誰もが耳にしたことのある曲”の歌い手がSIRUPだと印象づけたのは、2019年7月31日に放送された『スッキリ』(日本テレビ系)内での「HARUNAまとめ」のコーナーだ。番組内で「次世代R&Bシンガーソングライター 」と紹介され、この放送により、多くの人に「HONDAのCMを歌っていたのはSIRUPというアーティスト」という事実を色濃く刻んだ。放送されたのは約1分30秒という長くはない尺だったが、HONDAのCMや彼自身のMV、ライブ映像などを交えたアプローチは多くの人の興味を惹いた。

 また、同番組では、岩田剛典(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)がよく聴いていると紹介され、「この人が聴いてるなら……」とより関心を集めたのだろう。また、永野芽郁が『しゃべくり007』(日本テレビ系)で好きなアーティストにSIRUPをあげたのは有名な話だが、V6の三宅健やSexy Zoneの菊池風磨なども好きなアーティストにSIRUPをあげている。ティーンから熱視線が注がれる岩田や菊池が「この曲好きなんだよね」と話をすれば、彼らのファンが同じものを耳にすることは想像に難くないだろう。インフルエンス力の強いファンの存在が、新たなファン層の獲得に繋がったのかもしれない。

 様々な入り口から幅広いリスナーへ広がっていった「LOOP」のMVは1300万回以上再生され(2020年3月25日現在)、2019年12月5日には、『YouTube FanFest』に出演。クオリティの高いパフォーマンスで「LOOP」と「Do Well」を披露し、他のアーティストのファンを新たに惹きつけた。バンド編成の演奏は共に出演したACE COLLECTIONやwacciファンなどのバンド好きや、洒脱なR&Bサウンドはトレンドにも敏感なちゃんみなやSnow Manファンからも注目を集めた。

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