森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.192
UVERworld、sumika、KANA-BOON、Lucky Kilimanjaro……バンドのスタイルを活かし新たなアプローチを取り入れた最新作
4つ打ちの高速ビートを軸にしたダンスロックでシーンを席捲し、作品を重ねるごとにロックバンドとして強さを手に入れたKANA-BOONによる、デビューから7年の軌跡を追体験できる初のベストアルバム『KANA-BOON THE BEST』。「ないものねだり」「フルドライブ」「Fighter」などを網羅した本作によって彼らは、“デビュー5周年/ 新体制に移行”というターニングポイントの向こう側に突き進むことになるはずだ。さらに特筆すべきは新曲の「マーブル」。アコギと歌で始まるこの曲は、大きな変化の時期を経験したKANA-BOONが未来に向かって歩き始めていることを告げるミディアムチューン。大らかでドラマティックなメロディライン、メンバーの豊かな表現力が反映されたサウンドを含め、このバンドの新たな代表曲として浸透することになるだろう。
“想像力を上手く使って、新たな可能性を生み出そう”というメッセージするきらびやかなダンスチューン「Imagination」、才能とか成績という区分けを超えて、ひらめいたアイデアを自由に描くんだという意思を響かせるエレクトロナンバー「Drawing!」。Lucky Kilimanjaroのメジャー1stフルアルバム『!magination』は最初の2曲を聴くだけで、驚くほどポジティブな感情が自分のなかに宿っているのがわかる。80‘sテクノポップから2010年代のEDMを網羅するダンスミュージックのセンスとめちゃくちゃ聴き取りやすい日本語の歌が自然に結びついた本作は、J-POPシーンのなかで一気に浸透しいくはず。シリアスになり過ぎず、現実逃避もせず、それでも“楽しいことをやり続けよう”と鼓舞されるポップミュージックの魔法を久々に感じた。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。