欅坂46にとって“フロントメンバー”とは何なのか? 過去シングル曲のポジション構成から考察

 ひとまず全員が前列を経験したことで、6作目以降はフロントの意味合いにも変化が起きたと見てよいだろう。加えて、この時期から平手友梨奈がグループ活動から離れることが度々あったため、フロントメンバーがその代わりを務めることが増えていった。6作目の「ガラスを割れ!」では前列にいた今泉佑唯と小林由依がセンターに立ち、7作目の「アンビバレント」では結果的に前列の全員がセンターを経験している。つまり、この時期の欅坂46のフロントにはセンターとほぼ同等の役割が与えられていたのだ。欅坂46を取り巻く議論でよく目にするのが不動のセンターに対する是非だが、実際のところは他のメンバーが何度もセンターを経験している。なので、フロントのメンバー構成こそもっと注目されるべきではないか。

 選抜制になった現在、ポジションの持つ意味は以前にも増して強くなった。だからこそ、9作目のフロントに立つ2期生の田村保乃と松田里奈には期待せざるを得ない。2期生が本格的に活動し始めた今、フロントからも彼女たちへの期待感が読み取れるだろう。そして、これまでフロントを何度も務めてきた小林と渡邉理佐が、その2人を支えるようにして両端に立つのは2期生にとっても心強いはず。年末の音楽特番でも常にこの小林と渡邉は抜群の安定感を発揮していた。現時点で楽曲との関連性はわからないが、“将来性”と“経験値”に重きを置いたメンバー構成であることは容易に理解できる。

 どのグループでも重要なポジションとなるフロント。欅坂46の場合、全員に担当させながらも曲に合わせた人選がされてきた初期段階から、センターという大きな役割を同時に担わせた期間を経て、現在は新メンバーと手を取り合って進んでいくモードへと移り変わっているようだ。単にポジションと言えども、そこにはその時どきのグループの状況や目的が見えてくる。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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