Machico、夢のつぼみが開花した2019年の充実 初の生バンドで臨んだワンマン公演レポ

 ライブ本編も中盤に。ここからは、Machicoのこれまでの声優/アーティスト活動と“共鳴”するような楽曲が歌唱された。ゴシックなトラックビートの「Lunar eclipse」で怪しい雰囲気を誘い込むと、〈死ぬまで孤独だと諦めていた〉というネガティブな歌詞が印象的な「Everlasting Glory」に。そこから、自身の作詞曲「花音」へと繋ぎ、周囲との活躍や活動ペースの比較から生まれた劣等感をエモーショナルに歌声に込めた。

 「Everlasting Glory」と「花音」は、どちらも心の中にあるマイナスな側面をテーマにした楽曲だ。しかし、前者の歌唱時の雰囲気が悲痛な“抑圧”だったとすれば、後者にはそんな想いを“解放”する様子や、ファンへの感謝の想いが溢れていたようにも思う。

 サウンドの質感の違いもあるだろうが、実際にMachicoは「『花音』は当時よりももっと、(楽曲の)情景をみんなに伝えながら歌えるようになった」「“これからもよろしく”とか“今が楽しいよ”という前向きなイメージを込めた」と歌唱後に振り返っていた。それらを踏まえるに、「Lunar eclipse」の誕生が「花音」の楽曲としての立ち位置を相対化させ、本来の歌詞の意図を超えた“祝福”のイメージに結びついたのかもしれない。

 彼女は続けて、2019年の充実ぶりについても語ってくれた。ここではその一部を書き留めておきたい。

「順調って良いことだと思うんですけど……私は他の子たちと比べたら歩みは遅かったかもしれないし、初めて主役をもらえるまでにもすごく時間が掛かったかもしれないけど……。今だからこそできることだったり、仲間に余裕を持ってもらえるような環境づくりとか、先輩がしてくれたようなことを、私も一緒に歩んでいく仲間にしたいなと思っています」

「私は“遅かったな”というのはあるけれど、いま主役ができて“よかったな”と思っています」

 Machicoにとって、2019年はこれまで大切に育んできた夢のつぼみが、一斉に花開いた一年だったといえる。かねてからの願いだったという今回の生演奏ライブの開催も、そのひとつだろう。そんな時間のかかった道のりも決して無駄ではなく、今まさに充実の季節を迎えられたと喜ぶMachicoには、もっともっと多くの報われる場面が訪れてほしい。この日のパフォーマンスを見て、彼女のさらなる飛躍を心の底から祈る一夜となった。

 同日のライブはアンコールまで及び、最新シングル曲「1ミリ Symphony」や、代表曲のひとつ「TOMORROW」などを最後まで届けたMachico。今まで以上に多彩な感情を切り取った快作『マチビトサガシ』発表から今回のライブ開催、そして自身初の主役キャストに選ばれるまで、そのすべてを成し遂げた今の彼女には、声優/アーティストとして“付け入る隙”がどこにもない。そんなMachicoに、2020年を“託して”みてはどうだろうか。

(取材・文=一条皓太/写真=青木早霞)

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