浜田麻里、魂を絞り出す命の歌ーー35年の歩みを見せた圧巻の武道館公演映像作品をレビュー

浜田麻里、魂を絞り出す命の歌ーー35年の歩みを見せた圧巻の武道館公演映像作品をレビュー

 圧巻。

 そう形容するしかない浜田麻里のライブ映像作品の登場だ。昨年デビュー35年目を迎えた浜田麻里の達した高みを徹底して見せつける。パフォーマンスの強力さはもちろん、その決意の深さも、志の高さも、すべてを明らかにした決定的な作品だ。

 デビュー35周年記念ツアーのファイナルとなった2019年4月18日武道館公演を収録した『Mari Hamada 35th Anniversary Live“Gracia”at Budokan』である。MCも含めコンサート全編がほぼノーカットで収録されている。収録時間2時間半近く。浜田にとって15作目にあたるライブ映像作品である。

 同公演は最新アルバム『Gracia』(2018年)のツアーファイナルであると同時に、ファン投票選出の曲を集めたベスト盤『Light For The Ages -35th Anniversary Best~Fan’s Selection-』(2019年)のレコ発ライブという性格も持っていた。『Gracia』から8曲が演奏されたほか、『Light For The Ages』に収録された過去楽曲、そしてそれ以外の楽曲も含め全26曲が演奏されている。35年の歩みを振り返り、かつ自身の最新型を提示しようという趣向である。

 コンサート前半は『Light For The Ages』収録曲を中心にショウは進行する。「Blue Revolution」や「Return To Myself」といった人気曲、代表曲がコンサート序盤で早々に登場し、後半に『Gracia』収録を中心とした重厚な楽曲を配する構成となっている。コンサート前半で、おそらくは久しぶりに彼女のライブを見るであろう古くからのファンをまずはコンサートに引きずり込む。現在の浜田麻里を表現する『Gracia』の世界観をたっぷり体験させようとする狙いもあるのだろう。

 中盤のハイライトは長いMCで自分の辿ってきた35年の長い道のりを振り返り「私はステージからいくつもの幸せを見てきた。だからお返しに私は、みなさんの”明日”になります」と語り、増崎孝司の繊細なアコースティックギターのみをバックにして歌った「Promise In The History」「Canary」という2曲のバラードだろう。〈愛を失っても/歩みゆく/道がある限り〉〈今、目の前の長い長い道は/何に続くんだろう?/でも僕は僕でしかないんだ/何も持たず行くだけ〉と、これからも自分は人々の”明日”に、”未来”に、”希望”になるのだ、という決意を述べる歌詞が深く染みいってくる。浜田のバラード歌手としての高いスキルと強い説得力があってこその境地だ。

 「Mangata」のドラマティックな展開から浜田の衣装替えがあり、さらにMR.BIGのビリー・シーンが登場し、浜田バンドのBOHとのツインベースを聴かせて会場を大いに湧かせ、一気に高揚した空気のまま後半に突入する。

 「私の歌は楽しみなんかじゃない、魂を絞り出す命の歌なんだ」と宣言し歌われた「Historia」からの3曲はコンサートのクライマックスだ。『Gracia』収録の「Zero」ではステージ後方の幕が開き、30人規模のストリングスオーケストラが演奏に加わり、壮大な世界を描き出す。

 現在の浜田のバンド編成は、長年彼女のライブを支えてきた増崎孝司(Gt)、増田隆宣(Key)、ERI(Cho)、中尾昌文(Key)と、ISAO(Gt)、BOH(Key)、原澤秀樹(Dr)という若いメンバーの混成である。2018年に『Gracia』のツアーを始める際に浜田が決意しメンバーを入れ替え、若い3人が入った。そこに浜田が示す”明日”がある。若手のエネルギッシュでテクニカルなプレイが演奏全体を強力に引っ張り、ベテランたちの安定したプレイが演奏を支え落ち着かせる。そのうえに歌われる浜田のボーカルは、古いとか新しいとか過去とか未来とか関係なく、圧倒的な存在感をもってライブを支配している。彼女のこの歌があるからこそ、そのメッセージは強い説得力をもって迫ってくるのだ。

 このライブを通じて浜田が終始歌ってきたのは、これからも歩みを止めず、決して妥協することなく、過去を大事にしながらも過去を引きずられることなく、我が道を、そのど真ん中を堂々と歩んでいこうという強い決意だ。楽しみのための音楽など求めず、魂を振り絞り、人々の未来を指し示し照らすための灯りになりたいと宣している。アンコール最後に歌われた「Tomorrow」には、そんな決意が込められているように思う。

 35年。そして次のディケイドへ。すでに彼女の目はそこに向けられている。

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■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

浜田麻里 /Mari Hamada 35th Anniversary Live “Gracia” at Budokan ダイジェスト

■リリース情報
『Mari Hamada 35th Anniversary Live “Gracia” at Budokan』
発売:2019年12月18日(水)
PhotoBook付、スリーヴケース入デジパック仕様
[Blu-ray Disc] ¥8,000(税抜)
[DVD]  ¥7,000(税抜)

「Mangata」が歌唱映像単曲配信
iTunes Store、レコチョク、他にて配信中

オフィシャルサイト

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