ゴールデンボンバー、「かまってちょうだい///」「首が痛い」の共感性の高さ “ファン心理”熟知した2曲を考察

ライブの魔力をシュールに表現した「首が痛い」

 「首が痛い」は、ヴィジュアル系のファン、いわゆる“バンギャ”を狙い撃ちした楽曲だ。ライブで暴れたバンギャが筋肉痛に悩まされるというだけのごくごくシンプルなストーリーだが、共感性は抜群に高い。ライブへ足を運ぶバンギャなら、誰でも一度は体験する“あるある”だろう。

 しかしよくよく考えてみると、ライブの魔力やバンドマンの力は、恐ろしいものだと思わないだろうか。この楽曲で出てくるヘドバン、拳、ギターソロの“ヒラヒラ”は、あきらかに非日常的な動きだ。ライブハウスを出た日常ではまずやらない、言うなれば、理性があるときには出来ない動きなのだ。〈明日のバイト疲れ果てそう〉と思わせる程に、身体への負担も大きい。しかし、〈もうライブには行かない 絶対行かないからぁぁぁぁぁ〉という歌詞は明らかに前振りで、きっとまたライブに行き、頭を振ってしまうのだろう。“理性<本能”へと、いとも簡単に切り替えさせてしまうライブの魔力に改めて気づかされる楽曲だ。

ゴールデンボンバー/首が痛い MV

 さて、この曲のMVの見どころは、何と言っても“コテ系バンドマンになったゴールデンボンバー”だろう。ヴィジュアル系の王道の一つ、黒いエナメル素材の衣装に身を包み、「頭振れ!!」とオラオラ系のバンドマンとして煽る姿はなんとも新鮮だ。対比となるスーツ姿で痛めた首を押さえて踊るシュールなシーンも中毒性が高い。また、ライブハウスの階段を降りるシーンでは、実在するバンドのポスターが映るカットもあり、細部まで楽しめるつくりに。何度もリピートして楽しめるMVだ。

 ステージに立つ者とファンの距離が近づきやすい傾向にある昨今。ゴールデンボンバーは、物理的にではなく、心理的にファンに非常に近い場所にいるのではないだろうか。あまりにもファン心理を熟知したこの2曲を聴くと、そんな風に思えて仕方がないのだ。

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。

関連記事