倉木麻衣、純粋に音楽と向き合った20年の歳月 ファンと駆け抜けた“薔薇色の人生”はこれからも続く
倉木麻衣が、12月8日にデビュー20周年を果たす。8月14日には20周年YEAR記念オリジナルアルバム『Let’s GOAL!~薔薇色の人生~』をリリース。『20th Anniversary Mai Kuraki Live Project 2019 "Let’s GOAL!~薔薇色の人生~"』と題して、全国15カ所でのライブを完走した。2019年は、まさにこれまでのキャリアの集大成とも言えるステージを披露してきた倉木。デビュー日を控えた今、彼女の誕生日直前(10月26日)に行なわれた東京国際フォーラム ホールAでの公演の模様を振り返るレポートをお届けする。
20年前と変わらぬ姿でサプライズ登場
開演時間になると、会場に流れていたBGMとライトがフェードアウトしていく。暗くなった客席ではローズ型ペンライトがキラキラと輝き、アニバーサリーアルバムのタイトルにある“薔薇色の人生”とは、この光=ファンの愛情に満ちた倉木の人生そのものだと痛感する。
そして聞こえてきたのは、この20年、多くの人が耳にしてきた「Love, Day After Tomorrow」のイントロだ。スクリーンに流れた映像は、懐かしのMV。透明感のある歌声、ミステリアスなビジュアルで、鮮烈デビューを飾った倉木麻衣の姿が、そこに映し出された。
感慨深く眺めていると、ステージ中央のセットが回転。ハーフアップのロングヘア、グレーのハイネック&ノースリーブのニット、そして黒いタイトなパンツ姿で椅子に腰掛け、MVをそのまま再現した倉木が登場したのだ。そのあまりに変わらぬ姿に、会場から大きな歓声が上がった。
「皆さん、こんばんは! 今日は最後までLet’s Singing!」そう客席に声をかけると、一緒に「L・O・V・E」の手振りをして盛り上がる。確かに、人としての年輪を重ねているのだが、倉木の印象がこれほど変わらないのは驚異的だ。もちろん、同じ髪型と衣装を身につけたからといって、人間は変わらぬ印象を作れるわけではない。
この夏、倉木に直接インタビューをした際、彼女自身が変わらない理由をこんなふうに語っていた。「きっと音楽に対する想いが、変わらないからかもしれませんね。大好きな気持ちだったり、もっといろんなライブを皆さんに見ていただいて、元気をお届けしたいっていう気持ちだったり」(参照:倉木麻衣が語る、“出会い”が育んだデビュー20周年の軌跡「音楽を発信していくことこそ私の使命」)
音楽に対するピュアな気持ち、ファンとまっすぐ向き合う姿勢……倉木麻衣とは誰もが変わってほしくないと願う部分はそのままに、挑戦と進化を続けてきた歌姫なのだ。「いつか夢は叶う 歌が大好きで 歌手になったあの日から20年…」黒いスクリーンに白い文字が浮かび上がる。それは直筆で綴る感謝の言葉たち。倉木の表情に、仕草に、言葉に、20年変わらない純粋さが透けて見えるのだ。
“様々な楽器とのセッション”の夢も実現
ときどき胸に手を当てながら、またその手をファンへと掲げながら、「Stay by my side」「Secret of my heart」と往年のヒットソングを丁寧に歌っていく倉木。唇に左手の人差し指を当てて“シークレット”な仕草をしてみせるチャーミングな一面も。歌うことが好きな女の子が叶えた夢が、20年の時を経ても色あせない奇跡を体感する。
これまでのシングルジャケットが次々と出てくる華やかなVTRを経て、再登場した倉木は白いロングシャツを腕まくりしたアクティブな姿に。「皆さん、楽しんでいきましょう」と観客をリードしつつ「Delicious Way」では〈Oh Delicious Way〉の歌詞に合わせて手を挙げる動きを楽しむ。
続く「Long distance」ではオープニングアクトを務めた期待の新星ボーカルデュオall at onceをコーラスに迎えるなど、周囲を巻き込んでライブを盛り上げていく。「Your Best Friend」は、大空に飛んでいく風船の映像に乗せて伸びやかに歌う。まるで、この会場に来られていない全国のファンにも届けるようだ。
薔薇の模様のドレスに身を包み、サックスとピアノのシンプルな演奏に乗せて、1音1音紡ぐように歌った「Missing You」など、倉木の多彩な歌声を堪能できる曲が続く。そして、夢だったという“様々な楽器とのセッション”へ。
ストリングスカルテットの奏でる音色にのせた「冷たい海」。デビューシングルをはじめ多くの名曲を生み出してきた大野愛果の弾くピアノに合わせて「Tonight, I feel close to you」をデュエットで披露。さらに社会貢献活動にも精力的に参加している倉木が感銘を受けたという、難病から再起を果たしたピアニスト・西川悟平と「あなたがいるから」を熱唱。
そして、親友を思って作ったという「happy days」などを、デビュー当時から倉木のライブを支えてきたバンドメンバーたちの演奏で、しっとりと歌い上げる。また一つ新たな夢を叶えて、清々しい笑顔を見せる倉木だった。