AUTO-MOD GENETが語る、日本でポジティブパンクを広めることの難しさ 「“化粧をする”っていう部分だけが率先された」

今、ライブをやることで昔の曲が生きてくる

ーーライブでは解散前の楽曲も披露していたかと思いますが、楽曲への感じ方に変化はありますか?

GENET:当時は別の意識で作ってた曲だったのに、歌ってみると今の考えをまるっきり投影できるような歌詞になってることがある。たとえば「デストピア」だったら、“異端者たちのユートピアを作ろう”っていう意味があったのに、今の管理社会自体がまさに「デストピア」になってるし、「世紀末キャバレー」だったら、当時は“酒と薬に溺れ死んで行け”みたいな退廃ソングだったけど、今歌ってみると“貧困層は与えられた娯楽で飼いならされ、何の疑問もなく死んで行く”奴隷階層への曲になってる。今、ライブをやることで昔の曲が生きてくるんだよね。

ーージュネさんの詞は、直接的ではないからこそ時代を超えて別の意味も含むようになるのかもしれないですね。では、『祈り』はどのような意識で制作されたんですか?

GENET:このアルバムは、“世界の仕組み”みたいなつもりで作った。だから一発目は「愛の讃歌」(「Hymne à l'amour(愛の讃歌)」)なんだよ。だってもう、俺たちには何にもないじゃん。本当に0.1%の金持ちが、世界中の99.9%の富を握ってるのがこの世界だから。ほかの連中は富もなければ何もない。じゃあ愛しかないじゃん。だから、まず1曲目に「愛」を歌った。

ーーなるほど。2曲目「Halloween Song」は、タイトル通り“ハロウィン”をテーマにしていて面白いですね。

GENET:俺自身十何年もゴシックの連中を引き連れてハロウィンイベントをやってたけど、その“ハロウィン”自体何なのか知らないやつが多いんじゃないかと思ったんだよね。ハロウィンは、もともとケルト民族系のドルイド教のお祭りで、生贄の儀式があったり、今も日本でいうハロウィンとはまったく別のもの、秘密のサーウィンとして存在しているソサエティーがある。だからこの曲には、「ハロウィンってものには2つあるんだ。だから浮かれてる場合じゃねぇんだよ」っていうメッセージを込めたんだよね。

ーー隠された意味がある楽曲なんですね。

GENET:それで3曲目の「REAL WORLD (double faced society)」は、富を持つほんの一握りの人間が社会を動かしているんじゃないかって思って作った曲。今ではディープステートが世の中に出てくるようになったけど、実際は何を信用していいのかわからない。そんな社会の仕組みを歌ったマジな歌です。

ーーでは、4曲目の「Ave Maria」はどうでしょうか。

GENET:この曲は、戦争で本当のことを知らないまま多くの人たちの命が奪われていく様子を歌ってる。「本当は誰のために子供たちが殺されていってるのか?」「本当は誰が戦争やテロを仕掛けてるのか?」「宗教が本当に救ってくれるのか? 聖母よ、できるんだったら救ってくれ」っていうメッセージを込めた曲だね。

ーー4曲という曲数ながら、ひとつの映画を観たような濃密さがありますよね。

GENET:このアルバムを通して、俺が何のために音楽を続けてきたのかはっきり見えてきた。紆余曲折していろんな音楽をやりながらも、俺は自分自身のことをずっとパンクロッカーだと思ってる。だからこの作品は、これまでの活動の集大成になってるんじゃないかな。

ーー昔のAUTO-MODで発し続けていたメッセージが、今にも繋がっているように感じます。

GENET:昔は、空想の御託を並べてたけど、徐々に空想じゃなくなってきた。だから、俺は作品を作って発し続ける。今は、またパンクに戻れたっていう気がものすごくするんだよね。

ーーでは、今後もAUTO-MODとしての楽曲制作やライブ活動を積極的にしていくということ?

GENET:そうだね。ネタは尽きないよね。今は、自分の発するメッセージを時には笑わせたり怯えさせたりしながら、もっとエンターテインメントとして見せていきたいという思いがある。今年は12月13日に、年末恒例の『FREAKS OF THE LEGEND 2019』を高円寺Highでやって終わりだけど、来年はAUTO-MOD結成40年、当然ガンガンやることになりますね。もちろん次の音源もだしますよ。俺はパンクの連中ってやっぱ仲間だと思ってるし、そいつらが喜んでくれるんだったら絶対やれるって自負がある。今まで培ってきたいろんな引き出しを最大限に利用していきたい。来年の40周年メモリアルイヤー、盛大にやりたいね。

(取材・文=ISHIYA、写真=北村奈都樹)

■リリース情報
AUTO-MOD『祈り』
発売中
¥2,500(税込)
<CD収録曲>
1.Hymne a l'amour (Ai No Sanka)
2.Halloween Song
3.REAL WORLD (double faced society)
4.Ave Maria

<DVD収録曲>
1.時の葬列
2.マイクロチップ…首枷
3.Yapoo Domination
4.Ave Maria
5.Cannibal of Love
6.Hymne a l'amour (Ai No Sanka)
7.Deathtopia
8.Requiem

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