金子厚武の「アーティストの可能性を広げるサポートミュージシャン」

“理論派”の小西遼と“感覚派”のAAAMYYYが語る、インターネット以降における音楽家のあり方

小西遼「アーティストが変わったというよりも、むしろ社会の方が変わった」

――お二人のように多方面で活躍している「個人」の存在は、ある種の時代感の表れでもあると思うのですが、音楽家のあり方の変化について、活動の中で実感していることはありますか?

小西:インターネット以降で個人のあり方が変わってきて、アーティストのあり方が変わってきた部分もあるとは思うんですけど、でも本当は、The Beatlesにしても、Radioheadにしても、もともと一人ひとりがアーティストだったと思うんです。メディアのあり方として、バンドを総体として打ち出していったので、コアなファンやマニアだけがそれぞれの人にフォーカスしていたけど、アーティスト自身は昔から変わってない。そもそもソロの集まりで、その上でバンドがあったと思うんです。

――なるほど。

小西:ただ、インターネット以降は、バンドをやりながらでも、個人の意見を発信することがマイナスに働かなくなってきたというか、一人ひとりが好き勝手なことを言ってても、それが集まったときの面白さがあるし、一人のときの面白さもあるっていう、そこがイコールになったっていうか。だから、アーティストが変わったというよりも、むしろ社会の方が変わったっていうイメージが俺にはありますね。

――アーティストのあり方自体は昔と基本的に変わっていないけど、インターネットによって本来のあり方が可視化されて、顕在化した。

小西:解像度が上がったというかね。AAAMYYYにフィーチャリングの話が多いのもそういうイメージで、すべてが並列になった中で、AAAMYYYと何かやってみたいっていうのが、そんなに難しくないというか、みんながそれを面白いって共有し合える状態になってるっていう、そんな感じがしますね。

AAAMYYY:私はもともとアーティストに対して完璧主義的なイメージを持ってたんですけど、そういう音楽業界ではなくなってきた気がして、実際はもともと完璧じゃなかったんだなって。小西の言ったことと同じになっちゃうけど、もともと個人の集まりで、それ以上でもそれ以下でもなかったんだけど、メディアとかマネジメントの力によって、より大きなものに、完璧主義的な、パーフェクトな商業物に見せていたというか……。

小西:プロダクトとしてね。

AAAMYYY:そう。そういうイメージがすごくあったんですけど、自分自身が音楽をやるようになって、レコーディングで完璧に歌おうとすると、それよりもっとニュアンスを大事にする人が多くて、「オオッ」って思ったり。そういうところに時代感が表れてると思っていて。タブーだったものがタブーじゃなくなったり、LGBTQがありのまま受け入れられるようになってきたり、時代に合わせてそうなっていったのかなって。

ーー契約でガチガチに縛って、完璧なプロダクトを作り上げるのではなく、個人を尊重して、幅広い活動が許容されるようになり、そこから新しいものが生まれている時代なった。

AAAMYYY:これまでと同じことをしていてもダメで、変化しないと難しい時代だっていうことでもあると思うんですけどね。

小西:間違いない。やっぱり、新しくないとね。

――現在お二人はTENDREのサポートで活動をともにしているわけですが、そもそもTENDREに関わるようになったのは、どんな経緯だったのでしょうか?

AAAMYYY:Ryohuが誕生日公演をやったときに、そのバックバンドがampelで、私はコーラスで、それが太朗ちゃんとの出会いです。そこからRyohuのサポートを一緒にやるようになり、TENDREでも一緒にやるようになったっていう。

小西:俺はもともと太朗ちゃんは大学(洗足学園音楽大学)の同期なんです。でも、全然絡んだことなくて、ampelとは一回CRCK/LCKSで対バンしてるんですけど、そのときも「洗足なんだよね?」みたいな話をちょっとしたくらい。でも、その後ドラムの(松浦)大樹と下北沢の飲み屋で仲良くなって、TENDREがマルチプレイヤーを探してるってことで、推薦してくれて。で、『Red Focus』(TENDREデビューアルバム)を聴いて、「絶対やる!」って。これは俺にとってめちゃくちゃ楽しい仕事だなって……いや、仕事とも思ってないくらい、「とにかくこの音楽をやりたい」って思ったので。

AAAMYYY:私もそれはある。『Red Focus』を聴いて、「え、かっこよ」って思って、会ったときに「歌いたい」って。

――いろんな巡り合わせもあったけど、作品自体の魅力が一番の鍵だったと。

小西:間違いないですね。最初に『Red Focus』を聴いたときは衝撃だった。

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