04 Limited Sazabys『YON EXPO』とは何だったのか 現地で感じたバンドとファンの強い繋がり

 肝心のライブもたまアリならではの演出が盛りだくさんで、ハードボイルドテイストな個々のメンバー紹介映像(一部笑あり)から始まり、映像通り初のスーツ姿でステージに登場。メンバーが慣れないスーツでの演奏に「熱い」を連発しながらファストチューンを畳み掛けるという、いい意味での天邪鬼ぶりを見せる。短いMCを挟んで冒頭のスタートダッシュ的なブロックに新曲「Cycle」や「Montage」も盛り込んで見せたのだった。

 その後、「麺や おがた」の「おがたさん」が中津川からたまアリまでラーメンをマラソンで届けるという小芝居の映像が流れ、その間にカジュアルな服装に着替えたメンバー。その後のポイントとしてはGENが「ほんとはベース&ボーカル、めんどくさい。ハンドマイクで歌いたかった」と話すと、HIROKAZがエレキギターからアコギに持ち替えアコースティックバージョンの「labyrinth」へ。GENとHIROKAZ、鳴り物を持ったRYU-TAとKOUHEIの二手に分かれてステージを降り、アリーナエリアを横目にフロアを歩きながらセンターステージに到着。RYU-TAがベース、KOUHEIはカホンを担当し、アコースティックで「hello」を披露した。「hello」とその後披露した「Shine」(アコースティックバージョン)演奏時は限られたスポットライトがセンターステージを照らしており、会場全体は暗い状況だったが、観客の一人ひとりが自発的にカメラのライトを点灯したことで、ファンとバンドの絆を感じる幻想的な空間が生まれた。たまらずにGENが「綺麗だ」と、「hello」歌唱中につぶやいたことも付け加えておきたい。

 後半も火柱などのアリーナならではのド派手な演出もありつつ、、怒涛の畳み掛けで、普段のライブハウスと変わりない熱量を生み出していた。何度も感謝を繰り返すGENのMCの中でも印象的だったのは、今年に入り近い存在のミュージシャンが逝去したり、活動できなくなったことに触れ、バンドを続けることは決して当たり前のことではないと真剣な面持ちで話したことだ。しかし、だからこそ冒険の旅のようなこの場所が貴重であり、自分たちの音楽や存在がファンの人生とともにあることを願うという言葉は、切実であるとともに、バンドのモチベーションが更新されていく生々しい感覚も伝わってきた。現在の心境と相まったところで、本編の締めくくりとして代表曲「Feel」「monolith」を披露。そのパフォーマンスには、これからさらに前進する4人の意思の塊が宿ったような凄みがあった。

 筆者はステージから最も遠いスタンド席で見ていた。そこからフロアに目を落とすと、最前のエリアは目視できなかったが、センターステージを挟んだ中央のブロックでは初っ端からおびただしいクラウドサーフが起こり、しかも悠然とアクションしながらまたブロックに戻っていくファンを多数見た。

 ほかにも大きなサークルから数人程度のサークルまで、あらゆるところでファン同士がその時々のテンションで楽しんでいるのだ。バンドとファン、ファンとファン、恥ずかしげもなく言うが、そこには愛しかなかった。さいたまスーパーアリーナ規模でスタンディングエリアの自由度をファンへの信頼を担保に成功させたバンドサイド、そして終演後にはブロックごとに集合写真を撮影するファンサイド、どちらも04 Limited Sazabysのスタンスが育んだたくましさを実感できる現在地だった。

写真=Viola Kam (V'z Twinkle)

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

04 Limited Sazabys公式サイト

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