“攻撃型”の鈴本美愉と“自在型”の小林由依 欅坂46のパフォーマンス支える対照的な二人の魅力

 さて、鈴本が「攻撃型」なら、小林は「自在型」と言えるだろう。昨年の『NHK紅白歌合戦』でセンターを任された小林は、「ガラスを割れ!」の激しい振付をしっかりとこなし、日本中に力強い姿を見せつけた。冠番組では”埼玉の狂犬”と名付けられたこともあり、そういう意味では彼女も攻撃的な魅力を持ったメンバーのひとりである。

 しかし、一時期は元欅坂46の今泉佑唯とともにフォークデュオ・ゆいちゃんずとして歌唱力でファンを魅了するような存在であった。見る者を揺さぶる力強い一面から、ライブ会場を包み込むような温かな一面まで、実際は幅の広い魅力を持ったメンバーなのである。

 いわば、彼女は曲によって変化できる「自在型」。表情や所作に多くの引き出しを持っている。ブログにおける文章センスや、ファッション誌の専属モデル起用など、彼女を形作る要素は多い。ダンスだけでなくマルチな素質を持っているからこそ、数ある引き出しの中から作品やステージごとにスタイルを選んでいる印象を受けるのだ。

 鈴本と同じく『2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE』において「風に吹かれても」でセンターを担当した際には、誘うような表情でこちらを向きながら踊る姿が新鮮であった。爽やかでクール。それに、どこか周りを巻き込んで楽しく踊っている雰囲気も出せる。黒スーツでこの曲を踊るときは細身のスタイルに衣装がぴたりとハマり、楽曲イメージを最も的確に体現しているようだ。

 最近のライブでは煽り役としても定着している小林。ライブ本編の盛り上がりの最高到達点を記録したのは彼女のマイクパフォーマンスだったと言っても過言ではない。幅広い引き出しと、それを自在に取捨選択できる力、さらに観客を湧かせる能力もある。その柔軟さが彼女の本質的な魅力なのではないか。

 不器用なほど鋭く「攻撃型」な鈴本と、器用に変化できる「自在型」の小林。現在の欅坂46はある意味、対照的な2人が中心を支えていると言えるだろう。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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