『MEMORIES』インタビュー
<Chilly Source>より1st EPリリースの15MUSが語る、自身の音楽性がもつ“切なさ”の根幹
90年代のポップスが楽曲やリリックの方向性に影響している
——音楽性の話に戻りますが、15MUSさんはいわゆるヒップホップという括りのなかでもメロディアスな作風で、MCスタイルはラップと歌を自然と織り交ぜたものですし、曲調もメランコリックでポップなものが多い印象です。
15MUS:それこそ90年代のJ-POPにしても何にしても、自分が今まで好きだった音楽には耳に残るメロディやフックのラインというものがあったし、とにかくメロディを聴かせたいという気持ちが根底にあるから、作る曲もメロディアスになるんだと思います。エモのバンドをやっていたのも切ないメロディと結びつきますし、きっとそういうものが好きなんでしょうね。僕は明るめの曲を作ろうとしても、いい意味でも悪い意味でも切なくしてしまうんですよ。だから曲のカテゴリーにはあまり捉われてなくて、自分としてはCD屋さんに並べるにあたってヒップホップというラベルを付けてるぐらいの気持ちです。
——その音楽性を今の時代性に照らし合わせるとしたら、たとえばドレイク以降のラップと歌がシームレスに融合したスタイルや、tofubeats「水星 feat.オノマトペ大臣」以降のレイジーなラップ曲との共振性を感じたりもしますが。
15MUS:僕は普段からSpotifyで音楽をたくさん聴いたりして、音楽のトレンドみたいなものはずっと追っているんですよ。最近は毎日ランニングをしてるんですけど、そのときに「New Era:J-Hip Hop」とか「Frontline -ヒップホップ最前線」といったプレイリストをずっと聴いていて。そこでトラヴィス・スコットとかを聴いたりする一方で、槇原敬之とかMr.Childrenみたいな昔から好きなポップスも聴いてるから、そういうものがすべて凝縮されて生まれたのが、僕が今作ってる音楽なんだと思います。この1stEPは、作ってる段階で自分がいいなあと思ったメロディをそのまま書き出したものなので。
——今回のEP『MEMORIES』は、15MUSさんにとっては初のまとまった音源集になりますが、どのような経緯で制作することになったのですか?
15MUS:いままでのシングル曲は、そのときに作りたいものをポンと出していたので、「OVER」はポップスっぽいし、「CITY」はめちゃくちゃ暗いことを歌ってたりして、たぶん自分がどんな奴なのかということが、リスナーにいまいち伝わってない気がするんですよね。イベントとかでお客さんから「カレー好きの人ですよね」と言われることもあって(笑)。
——Instagramに上げてるのがカレーの写真ばかりですものね(笑)。
15MUS:僕自身も個としての15MUSというものを表現しきれていないと感じていたし、作品として「これが俺です」と言えるものがなかったので、自分でもそういうものを作りたいと思っていたし、去年ライブで「作ります」って言っちゃったんですよね、勢いで。なので去年の11月ぐらいから着手し始めて。最初はコンセプトも全然考えてなかったし、出来上がれば自分らしさも出るだろうと思っていたので、とにかく曲をいっぱい作って。基盤ができあがるまでは結構すぐでした。
——収録曲のなかで作品としての方向性や手応えを感じた曲を挙げるとすれば?
15MUS:MVも撮ってもらった「OhNo」は今までの系譜があったうえで出来た曲かなと思っていて。メロディやコーラス、合いの手もうまくできたし、サウンド感やリリックも含め、トータル的に見てもいい曲になったと思います。
——たしかにトラップっぽいビート感や合いの手が、15MUSさんの作風にうまくマッチングした曲だと思います。先行シングルの「OVER」もそうでしたが、歌詞は別れた相手への未練や後悔の気持ちが書かれていますね。
15MUS:そうですね。この『MEMORIES』自体がそういう作品になっていて。僕、すごく女々しい性格なんですよ、暗いし(笑)。たぶん僕の音楽の根底には、哀しいことや辛い出来事があるんでしょうね。そういう感情のほうがリリックを書きやすいというか、自然とドバッと出てしまっていたので、こうして改めて言われると恥ずかしいですね(笑)
——ではリリックはそのときどきのご自身の気持ちを切り取ったものになっていると。15MUS:普段言っていることよりも本音が出ていると思います。自分はいつも本音の部分が言えなかったり、茶化して誤魔化してしまったりするところがあるので、いつも言えなかったことが楽曲に昇華されてるんだろうなと思いますね。『MEMORIES』は女々しい曲ばかりになりましたが、きっとそれが切なさなんでしょうね。
——未練や後悔というのは誰でも抱く気持ちなので、きっとそういう部分が聴き手にとっても感情移入できるのではないでしょうか。
15MUS:それは時々言われたりします。結局全部そこに結び付いてしまうんですけど、90年代のポップス、小田和正とか槇原敬之はそんな曲ばかりだったじゃないですか。(オフコースの)「さよなら」や「Yes-No」は切ない恋愛のことを書いてるし、槇原敬之の「もう恋なんてしない」や「ズル休み」もメロディはものすごくいいけど、全部どうしようもなく切ないことを書いてて。僕もその系譜を自然と体現してるのかもしれないです……いや、間違いなくそうですね。自分の音楽を振り返ると、昭和歌謡や平成の歌謡曲、今のシティーポップとはまた違う、90年代のポップスが僕の楽曲やリリックの方向性に影響していると思います。