日向坂46 上村ひなのはアイドルとして逸材だーー初ソロ曲から歌声の魅力を分析

 同曲は、9月9日放送の『ゆうがたパラダイス』(NHK-FM)で初解禁された。冒頭のパワフルでかっこいい豪速球な歌声には、彼女の愛らしい容姿とのギャップも相まって一瞬で聴き惚れてしまう。「やさしさが邪魔をする」でもその歌声は十分に発揮されていたものの、楽曲とのバランスを考えてか少々抑え目に歌われていた印象だった。しかし、同曲ではフルスロットルで声を張っている。

 鈴木亜美の歌声に似ているという声も多いようだ。特に小室哲哉がプロデュースしていた時期の歌声には重なる部分がある。小室の楽曲は、そのアーティストが出せる音域の限界に挑戦しているものが多いが鈴木の楽曲もそうだった。そして、それが結果として彼女の力強さやセクシーな一面を引き出していたのだ。上村の歌声にはそれに近いものを感じる。

 また、アレンジはロック調のダンスミュージック。今までの欅坂や日向坂にはない路線の楽曲となっておりその意外性には感心させられる。さらに、文章のような長いタイトルや、曲中のポエトリーリーディングなど、上村らしい変化に富んだ楽曲となっているのも面白い。

 またこのタイミングで、上村と同じく坂道合同オーディションで合格した研究生15人が1年の時を経てお披露目となる。今後、日向坂にも研究生から新メンバーが加入することだろう。歪ではあるが、上村と研究生たちは同期にあたる。近い将来、長濱とけやき坂の関係性のようなかたちで『おもてなし会』が行われてもおかしくない。

 日向坂になってから初のソロ楽曲となる「一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない」。二期生メンバーではなく上村がソロ楽曲に抜擢されたのは、それに見合う実力と未来があると制作側が期待しているからだろう。そして、その期待に見事に応えている上村はやはり逸材だ。3rdシングルの表題曲「こんなに好きになっちゃっていいの?」に並び、上村のアイドル伝説の始まりとなる同曲にもぜひ注目したい。

(文=本 手)

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