宇多田ヒカル、崎山蒼志、Rude-α……作品や活動から感じる“キュレーター”としてのセンス

 またカバー曲にもアーティストの感覚は表れる。崎山蒼志が選曲したのは、ネットで確認できるだけでもクリープハイプ「手と手」、KANA-BOON「結晶星」、坂本九「上を向いて歩こう」、ゆらゆら帝国「空洞です」、ザ・スパイダース「バンバンバン」、薬師丸ひろ子「Woman “Wの悲劇”より」など。統一性がないと言えばないが、これがYouTubeネイティブ世代の思考なのかもしれない。リアルタイムだろうが、オールディーズだろうが関係なく「良い曲だから歌いたい」というスタンスが読み取れた。それにしても16歳でこのような振れ幅の楽曲がインストールされていることにおどろく。

 若手ラッパーのRude-αもSuchmos「STAY TUNE」、久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」、FUNKY MONKEY BABYS「告白」、あいみょん「マリーゴールド」、THE HIGH-LOWS「日曜日よりの使者」、ORIGINAL LOVE「接吻」など、独特なカバーセンスを持つ。崎山と比べるとポップな曲が並んでおり、Rude-αを形成しているのはヒップホップというよりJ-POPなのかもしれない、と深読みできそうだ。こういう点からも彼の越境的な活動を理解できるだろう。

 ほかに自主企画に呼ぶ対バンやDJ、アートワークに誰を起用するか、といったこともキュレーションとして捉えられるだろう。そう考えると今や活動のすべてが展示企画のようなものだ。アーティストはテクノロジーの発達やSNSで自由度が広がり、自分の価値観を多角的に表現するようになった。情報が氾濫する現代において「何を選択するのか」が重要な今だからこそ、アーティストの審美眼に注目してほしい。

■小池直也
ゆとり第一世代・音楽家/記者。山梨県出身。サキソフォン奏者として活動しながら、音楽に関する執筆や取材をおこなっている。ツイッターは@naoyakoike

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