LEO今井、人間椅子やZAZEN BOYSら楽曲で表現した新境地 ヘヴィーな音像を追求した理由を読む

 前野健太、呂布カルマ、人間椅子、ZAZEN BOYS、eastern youthという濃密すぎるゲストを招き、自主企画ツーマンライブ『大都会ツアー』を8月30日から全国5都市で開催するLEO今井が、ツーマンツアーだけでは飽き足らず、対バン相手の楽曲をカバーした新作EP『6 Japanese Covers』をリリースした。

「どだればち」(人間椅子カバー)MV

 ZAZEN BOYS「ポテトサラダ」、eastern youth「夏の日の午後」などを強靭なメタリックサウンドでカバーした本作は、METAFIVEにおける印象とは一味違う音像を提示すると同時に、デビュー当初は“先鋭的なエレクトロサウンド”というイメージもあったが、約8年間ライブを中心に活動を続けてきた自身のバンドLEO IMAI (LEO今井、岡村夏彦、シゲクニ、白根賢一)では、メタル、グランジ、カントリーなど、彼自身の体のなかにある音楽を融合させたハイブリッドなサウンドを体現。ZAZEN BOYSの向井秀徳が同アルバムについて「LEO今井が病的なほどヘヴィーなカバーをブチかました!」とコメントしているように、昨年発表した5枚目のソロアルバム『VLP』の延長線上にありつつ、さらにヘヴィーさを増した現在のLEO今井の音像を体感できる作品となっている。

LEO今井 カバーEP『6 Japanese Covers』試聴動画

 1981年に東京で生まれ、幼少期をロンドンで過ごしたLEO今井は、オックスフォード大学大学院在学中に音楽活動をするために来日し、2006年にアルバム『CITY FOLK』を発表。翌年、シングル『Blue Technique』でメジャーデビューを果たした。エレクトロ、テクノ、オルタナティブロックなどを融合した無国籍な音楽性、文学性の高い歌詞の世界はすぐに音楽ファンの耳にとまり、洋楽・邦楽の枠組みを超えた独創的なアーティストとして評価を獲得。その後、向井秀徳(ZAZEN BOYS)とのユニットKIMONOS、高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコともにMETAFIVEを結成するなど、活動の幅を広げてきたことは周知の通りだ。

LEO今井「ファックミー」(前野健太カバー)試聴用映像

 2011年頃から現在のバンドメンバー、岡村夏彦(Gt)、シゲクニ(Ba)、白根賢一(Dr)ととともにライブ活動を行い、ロックとエレクトロのハイブリッドを志向したアルバム『Made From Nothing』(2013年)、自身のバンドでスタジオレコーディングし、90年代のオルタナ、メタル、カントリーなどを想起させるロックサウンドにアプローチした『VLP』(2018年)と作品を重ねるたびにロック濃度を高めてきたLEO今井。もともと彼のルーツはPearl Jam、Pantera、Helmetなど、オルタナ、ヘビーロック、ハードコアが中心。最新作となるEP『6 Japanese Covers』は、彼の根底にある音楽がもっとも強く表出した作品と言えるだろう。

 EP『6 Japanese Covers』制作の直接的なきっかけは、昨年9月、Shibuya O-EASTで人間椅子のライブを観たことだったという。オーセンティックなヘビーメタルサウンドに“和の猟奇”を融合させ、独自の音楽世界を体現し続ける人間椅子のステージを初めて目の当たりにし、感銘を受けたLEOは“ぜひ対バンしてみたい”と思い立ち、時を置かずしてオファー。さらに自主企画ツーマン『大都会』をツアーにすることを考え、以前から対バンを切望していたeastern youth、ZAZEN BOYS、過去の『大都会』に出演しことがある前野健太、呂布カルマも加わり、5都市のツアーが決定。そして、ツアーの打ち合わせをしているなかででてきたのが、“参加してくれるバンドの楽曲をカバーする”というアイデアだったのだという。

 当初はツアーの物販CDとして考えていたそうだが、最終的に対バンする5組の楽曲と未来の対バン相手としてペトロールズの楽曲を加えた6曲を収録するに至った『6 Japanese Covers』。1曲目はもちろん(?)この企画の発端となった人間椅子の「どだればち」のカバーだ。ライブを観たとき、ギターのリフと“あらどした”という合いの手に度肝を抜かれたというLEO。ディストーションギターによるリフとギターソロ、重厚なリズムアレンジ、歪みまくったボーカルがひとつになったLEO IMAIバージョンからは、原曲とヘビーメタルへの愛がダイレクトに伝わってくる。

 2曲目は、LEOが高校生の頃から愛聴していたというeastern youth「夏の日の午後」。名盤『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』(1998年)に収録された楽曲だ。原曲は疾走感のあるパンクチューンだが、LEO今井のカバーはBPMをグッと落とし、王道ヘビーメタル直系のアレンジを施している。軸になるのはやはり、切れ味するどいリフ、ずっしりと重いグルーヴ、感情剥き出しの歌。LEO今井自身のルーツと直結しているだけではなく、eastern youthの音楽に内包されているメタルの要素を抽出しているところが興味深い。

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