長濱ねるは、なぜ欅坂46にとって特別な存在だったのか 卒業イベント開催を機に考える
彼女がもたらしたのは”知性”や”安定感”だけではなかった
2017年の12月には個人写真集『ここから』を発売し、自身の故郷である長崎の五島列島を中心にロケを敢行。冠番組『欅って、書けない?』(テレビ東京系)でも同地を訪れ、故郷の魅力を存分にアピールしていた。また、ライブ中のMCなどでも標準語に混じって方言が飛び出すこともしばしば。デビュー時から何かと”渋谷”がキーワードとなり都会的なイメージが持たれる欅坂46で、対照的な”地方”の要素を変わらず持ち続けた人でもあったのだ。
また、ブログにはよくオススメの音楽を公開していた。J-POPに限らず邦ロックや洋楽まで幅広いアンテナを持ち、バンドTシャツを着ている姿も散見された。さらに、読書も趣味であった。同じく読書好きとして知られるメンバーの織田奈那をして「ねるの方がすごい」と言わしめるほど。愛読書に西加奈子『おまじない』や重松清『エイジ』を挙げている(参照)。メンバーに先んじて積極的に音楽や読書といったカルチャーへの関心を示していたのだ。
このように多くの要素を持っていた長濱ねる。よく彼女を(容姿やソロ曲のイメージなどから)80年代の昔ながらのアイドル像に重ね合わせる声を聞くが、むしろ彼女は”可愛いことが取り柄”だったアイドルのイメージを幾重にも更新させるような、現代的でハイスペックなアイドルであった。
彼女がいることで欅坂46は、単に”クール”なだけではない、都会的なだけではない、多くの側面を持ったグループに成り得たのである。欅坂46を何倍も面白くさせる存在として、彼女は重要な役割を担っていた。
グループに所属しながら、ファンの前で笑顔を振り撒く姿をまだまだ見続けたかったと思っているファンは少なくないだろう。筆者もその一人である。
■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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