Kis-My-Ft2、シングル『HANDS UP』が首位 「洋楽テイスト」「クセになるサビ」について考察

参考:2019年7月22日付週間アルバムランキング(2019年7月8日~2019年7月14日)

 2019年7月22日付のオリコン週間シングルランキングでトップを飾ったのは初登場のKis-My-Ft2(以下、キスマイ)の『HANDS UP』(196,438枚)。2位には2週目となるBTS『Lights / Boy With Luv』が129,856枚でランクインしている。この二作が3位の虹のコンキスタドール『愛をこころにサマー』(25,545枚)を大きく引き離している。ちなみに『Lights / Boy With Luv』の初週推定売上枚数は620,670枚とのことで、2週目に入ってなおこの成績というあたりにグループの人気の根強さが見える。テレビアニメやアニメ映画、ソーシャルゲームの関連作が並ぶ中、ヤバイTシャツ屋さんが初登場4位、2万枚余の売上と好成績&好スタートを切っているのも見逃せない。

 さて、今回ピックアップしたいのはキスマイの『HANDS UP』。当然ながら、リード曲の「HANDS UP」はクオリティも高くキャッチーな一曲だ。オフィシャルサイトの紹介によれば、「クセになるサビが印象的な、洋楽テイストのキスマイミュージック!」とのこと。楽曲とつきあわせてみると、ここでふたつ疑問が出てくる。「クセになるサビ」とはどこなのか。「洋楽テイスト」とはなんなのか。

Kis-My-Ft2 / HANDS UP-short edition- (シングル「HANDS UP」<初回盤A>収録曲)

 順序がテレコになってしまうが、まずは「洋楽テイスト」の言わんとするところから考えてみよう。楽曲はEDM寄りの派手なリードシンセやメンバーによる力強いシャウトがとてもアグレッシブ。歌詞を見ると英語と日本語の比率で言えばもはや英語の方が多い。こうしたサウンド面と歌詞に「洋楽テイスト」があらわれているということは推測できる。

 とはいえ、もしそれが「洋楽テイスト」なのだとすれば、ここでいう「洋楽」の実質はK-POPなのではないだろうか。日英ちゃんぽんで綴られるために断片的になった日本語、そしてシンプルだが力強い押韻を含むリフレインは、K-POPのボーイバンドがリリースする日本語ローカライズバージョンを彷彿とさせる。とりわけ、サビ前の〈I gotcha I gotcha 突き進め ラジャー〉というフレーズと、それを歌う藤ヶ谷太輔の節回しがこの印象を強める。「洋楽」性の内実が、アメリカやイギリスといった英語圏のメインストリームのポップスよりも、地理的に最も近い外国である韓国からやってきたK-POPと一致するというのはきわめて現代的な現象だ。

 次いで、「クセになるサビ」とはどこか、ということ。「HANDS UP」では「ブンブンダンス」という振り付けを推しており、YouTubeでは発売元のavexがこのダンスにフォーカスした動画もアップロードしている。

Kis-My-Ft2 / 「HANDS UP」~“ブンブンダンス” Kids Ver.~

 これを踏まえれば〈Boom Boom Boom Boom Put your hands up〉の一連のパートが「サビ」ということになる。実際、個人的にも楽曲を聴いてみて耳に残るのはまさにこのパートだった。

 にも関わらず少し戸惑ってしまうのは、そもそもこの楽曲が持つ展開の細かさによる。メロディの反復やサウンドの編成から考えると、この曲のワンコーラスは7つか8つに分けられる。あくまで筆者の解釈だが、Aメロ1、Aメロ2、Bメロ、ブリッジ、前サビ、サビ、後サビ、といったところ。件の「ブンブンダンス」はこのなかで言うと後サビにあたる。前サビとサビのあいだでビートが止み、〈Put your hands up〉というキメのフレーズが入るが、それを独立させるかどうかで7つか8つかが分かれる。このようにワンコーラスが細かな部分に分けられ、かつ部分ごとの分量も相応にある。頭から聴いていくと、「まだ盛り上がる…… まだ盛り上がる?!」とサービスに次ぐサービスという印象だ。

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