YURiKA×大原ゆい子ジョイントライブレポ 物語と楽曲があいまった新しい音楽表現

 アニソンシンガーのYURiKAとシンガーソングライターの大原ゆい子による、『YURiKA×大原ゆい子ジョイントライブ「LIVE THE MOVIE」』が、6月15日と16日に東京・浅草花やしき 花劇場で開催された。それぞれがホストを務め、撮り下ろしのショートムービーと共に楽曲を披露するというライブで、15日はYURiKAがホストを務めてドキュメンタリームービーを上映した。一転、大原がホストを務めた16日は、上白石萌歌が主演のオリジナル短編恋愛映画『月より綺麗だった』を上映。このために書き下ろした楽曲「月より綺麗だった」も披露される特別な内容になった。青春時代のほろ苦さがよみがえる物語と楽曲があいまった、新しい音楽表現でファンを魅了するステージになった。

大原が示した新たな音楽表現 

 映画『月より綺麗だった』は、人気の若手女優=上白石萌歌が主演、井上雄太が相手役を務めた。この1日限定の上映で、DVD化の予定もないとのこと。観ることができたファンは、実に貴重な経験をしたと言える。物語をざっくり話すと、こういった内容だった。

 上白石が演じる主人公が路上でギターを弾いていると、井上演じる青年から8ミリフィルムで撮らせてほしいと声をかけられる。最初は戸惑っていた主人公だったが次第に打ち解け、それぞれの夢を打ち明け合うような仲になる。主人公の夢はシンガーソングライターで、青年は映画監督だった。数年後、主人公はまだ路上でギターを弾いていた。そこにふと現れた青年は、スーツ姿だった。久しぶりの再会に最初は話が弾んだ二人だったが、夢を諦めた彼にどこか寂しさを感じる主人公だった。自分ももうあきらめようか。そんな風に考え始めた主人公の携帯に、青年から1本のムービーが届いた。それは数年前に撮った8ミリを動画に編集したもの。再生すると、そこには嬉しそうな表情でギターを弾きながら夢を語る、キラキラとした主人公の笑顔があった。そのムービーの中で主人公は一曲の歌を書き上げる。タイトルは「月より綺麗だった」。その歌は、過ぎ去った二人の日々を切なく歌い上げる曲だった。

大原ゆい子

 映画はシーンごとに分割され、映画、歌、映画、歌という風に順番に披露され、楽曲の歌詞が主人公の心情とシンクロしていくといった展開だ。二人の出会いのシーンには「時のミラージュ」があてられ、まるで暗闇だった世界に光が差し込んでいくような雰囲気になった。「言わないけどね。」では、主人公の淡い恋心が表現された。8ミリに収められた、主人公のくったくのない笑顔や素の表情が、楽曲の軽やかさといたずらっぽさにマッチしていた。ミディアムバラードの「ユビオリ」は、離れていってしまった彼を、今も愛おしく感じている様子が歌われた。しっとりとしたサウンドと、儚く響く大原の歌声が、物語の切なさをより引き立てていた。悲しみを乗り越えようとする主人公の心情は、「光の淵」で表現された。〈夢なら一雫 こぼれて 運命が変わるのにね〉という詩的なフレーズが、苦しい気持ちを代弁しているようで、それに反して決して暗くはないサウンドが、余計に気持ちを切なくさせた。そして物語の最後には、このために大原が書き下ろしたという「月より綺麗だった」が歌われた。バンドサウンドのミディアムバラードといった雰囲気の楽曲で、大原はアコギを奏でながら歌った。しんみりと、しかしどこか力強く清々しさもある曲だ。青春時代の美しい思い出を胸にしまい、また前を向いて歩いて行く……。誰もが上る大人への階段。そこには、一生のうちのほんのわずかな期間だからこその美しさがある。そんな風に思わせてくれる曲だった。音源化は未定とのことなので、もしまたどこかで聴く機会があれば、それは貴重な機会となるだろう。

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