ALBATROSS、ハプニングすらも感動に変えた“奇跡”の夜 幼馴染の絆が生む極上のバンドマジック
今年9月にプロデューサー TAARとのコラボレーションシングル「BINARY」をリリースしたALBATROSSが、10月18日に東京・渋谷clubasiaにてワンマンライブ『BECOME THE PLASMA』を行った。1998年に結成され、地元・名古屋を拠点に年間100本以上のライブを行なってきた彼らは、メンバーの脱退を経て2009年に解散。それぞれが別の人生を送っていたが、バンドが拠点としていた名古屋のライブハウスAPOLLO BASEの閉店を機に「復活ライブ」を行い、12年の歳月を経て活動再開を果たした。その後、9カ月連続リリース企画「9Chants」の実施を経て自身初となる東京でのワンマンライブを今年1月に開催。今回は、そこからおよそ9カ月ぶり、東京では2度目のワンマンライブとなる。
定刻となり、まずはメンバーの一見(Gt)、小林(Ba)、大野(Dr)がサポートメンバーのハナブサ ユウキ(Key)、Ryo Yoshinaga(Cho)、そしてワンマンならではのサポートとなるホーン隊、野口勇介(Tp)、堂地誠人(As)、前田大輔(Tb)の3人を率いてステージに登場。遅れてボーカルの海部(Vo)が姿を現すと、フロアから大きな歓声が上がる。まずは今年7月にリリースされたシングル「トーキョーリバー」からこの日のライブはスタートした。孤独と喧騒が螺旋のように交錯する「東京」をテーマにしたこの曲は、疾走感あふれるリズムと洗練されたコード進行、そして華やかなホーンセクションが入り乱れる高密度なアレンジが特徴だ。高校時代の幼馴染を中心に結成されたというだけあり、息の合った鉄壁のバンドアンサンブルを率いて海部の伸びやかな歌声が会場に響き渡った。
続く「ニュータウン」は、前述した9カ月連続リリース企画「9Chants」の中の1曲。ジャズ、AOR、ソウル、ファンクなどを貪欲に取り込んだアレンジと起伏のあるメロディが心地よく響き渡る。歯切れ良いホーンのフレーズに身を委ねていると、「ESCAPE」では狂おしいミドルバラードでオーディエンスの琴線を揺さぶるなど、卓越した演奏力と幅広いアレンジで盛り上げていく。
「9カ月ぶりのワンマンライブです。楽しむ準備はできていますか?」と海部が笑顔でフロアに呼びかけ、披露したのは「雨の夜と桃源郷」。台湾でバイラルヒットを記録し、Spotifyのチャートにも入るなど再結成以降ひときわ反響の大きかった楽曲だ。抑揚を抑えた海部のボーカルに寄り添い、そのメロディを華やかに彩るRyoのコーラスも今回の聴きどころの一つだった。
ここでホーン隊は退場し、「この日のために作ってきた」という完成したばかりの新曲「Pain Killer」を6人で演奏。ゴスペルをALBATROSSなりに取り入れたアーシーで雄大なサウンドと、力強い海部のボーカルが感動的だ。「10年前に、このメンバーでこの景色を見ることはもうないと思っていました。それからずっと、瞼の裏に焼きついて離れなかったこの景色を、もう一度見るために戻ってきました」そう海部が語り、再び登場したホーン隊とともに「光の影」を披露。まるで感情のリミッターが振り切れたかのように、激しく歌う海部の姿に思わず胸が熱くなる。
ところが、序盤から機材のトラブルと格闘していた一見のギターが、ここにきてほとんど聞こえなくなってしまった。が、そうした窮地に陥ってもなお、新曲「BINARY」ではハナブサがいつもより激しいピアノソロを繰り出したり、「情熱の果実」ではギターソロの代わりにベースソロやオルガンソロを急遽差し込んだり、この想定外のハプニングをメンバー全員で乗り越えようとする様子に、会場のボルテージはさらに高まっていった。