堂本剛は時間も空間も超えた大きな流れの中で歌う 『東大寺LIVE 2018』映像から感じたこと

 堂本剛が40歳の誕生日となる4月10日に『堂本剛 東大寺LIVE 2018』DVD&Blue-rayをリリースした。本作は、昨年9月15日に奈良・東大寺で開催された、1日限りの奉納演奏の模様を収録したもの。ふるさとの奈良は、堂本にとって「自分のことを愛してあげられる時間が増える」(NHK総合『SONGS』9月29日放送回インタビューより)と語る特別な場所だ。

 近代的な楽器と鐘の音が共鳴する、幻想的にライトアップされた東大寺。投影されたカラフルな映像は、まるでアニメでタイムマシンに乗ったときに描かれる背景のようだ。時間も空間も超えた大きな流れの中で、歌う堂本。彼にとって、ここは生まれた場所であり、やがて回帰したい場所なのだろう。生と死も、時代の終わりと始まりも、メビウスの輪のように表裏一体の地続きであることを改めて気付かされるようだ。

 赤や青の光に染まる大仏の姿を拝みながら、さらに脳がジンワリとしてくる。かつてこんな風景を寺院で見たことがあるだろうか、と。そしてハッとした。自分の中で“東大寺”と“音楽”をセパレートしていたのだと気づいたからだ。「東大寺でライブ?」と、どこかで思い込んでいたのだ。

 「東大寺さん」「大仏さん」。堂本の口から発せられる言葉は、敬意と親しみが同時に聞こえてくる。歴史や伝統へのリスペクトはあっても、近寄りがたいという感覚はない。彼が東大寺も音楽ライブも、もっと自然な存在で、フラットにとらえているのが伺える。ただ“そこにある”を、そのまま受け入れること。現代社会を生きる私たちは、なかなかその作業ができなくなっているように感じた。

 システマチックに効率化を目指す社会では、画一的なわかりやすさばかりが先行し、曖昧さがどんどん削ぎ落とされていく。できあがった形式にとらわれて、その枠組みの中でしか物事を見られなくなってしまう。自分がどこでセパレートしているかも、気づかないほどに。

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