映像から日記、ウェブトゥーンまで BTSが『花様年華』で展開する“二次元と三次元の融合”

 ウェブトゥーンの『<SAVE ME>』は「6人の仲間が死ぬ未来を最年長のソクジンが同じ時間を繰り返して阻止しようとする」といういわゆるタイムリープパラレルもの。設定や物語の伏線はこのコミック作品の中で概ね回収されているが、前後のストーリーや人間関係などはいくらでも想像・拡張出来るようになっている。BTSのブレイクポイントだったこのシリーズは、“思春期に傷ついた少年たちが仲間と出会い、絆によって成長していく”というのが大まかなコンセプトで、作中に登場するキャラクターは貧困や自殺、精神的な病や暴力、親の支配や死別・断絶など現実の10代が遭遇する問題の中でも特に重いとも言える不幸を背負っており、実際の彼らとは全く異なる境遇だ。

 しかし、部分的なキャラづけにおいてはファンに周知されているようなわかりやすいメンバーとの共通項がある。例えば、SUGAによく似たキャラクター・ユンギは、母と死別し抑圧的な父親と2人暮らしで非行を繰り返すという点は全くのフィクションだが、ピアノが弾けるというのは事実であり、キャラクターの名前もSUGAの本名そのままだ。このようにフィクションに現実の彼らのリアルを少しだけ混ぜこむことによって、受け手の側に微妙な錯誤を起こさせる効果もあるのではないだろうか。『花様年華』の陰鬱でエモーショナルなストーリーや作中の人間模様に触れた時に感じる思いそのものが、リアルの彼らへの感情と混ざり合い、触媒的な効果を起こす可能性も高いということだ。

 BigHitエンターテインメントは『花様年華』以前にも『We On』や『HIPHOP MONSTER』などメンバーをモデルにしたウェブコミックをリリースしており、“二次元と三次元の融合”の試みを繰り返していた。それがもっともハマったのが『花様年華』のストーリーだったのだろう。実際に『花様年華』の物語にBTSのリアルをどこかしら重ねて見てしまうファンが少なくないことが、その効果を実証していると言えるかもしれない。『The NOTE』は未完であり、4月にリリースされる新しいアルバム『MAP OF THE SOUL : PERSONA』にもブックレットは封入される。BTSと『花様年華』の物語はまだ続くようだ。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

関連記事