ヲタみん、花たん、鎖那、000、鹿乃……“歌ってみた”文化彩る実力派女性歌い手を解説

鎖那

 一方、鎖那は歌唱力で実力の証左を示すのではなく、自身の声そのものの持ち味を生かすタイプの歌い手だ。そのチャーミングなウィスパーボイスでリスナーの心をキャッチしている。HoneyWorksのコンピレーションアルバムに彼女の歌った楽曲が収録されるようになったのも、彼女の声だからこそ表現しうるピュアさが、HoneyWorksの求めるイメージに合致したことにあるからだろう。“歌ってみた”動画を投稿してきた彼女が、2018年11月には編集・ミックス以外の音楽・イラスト・動画を自身で手掛けた「シュテルン」を投稿。彼女のキュートな感性が溶け込んだ作品となっている。今後の活躍にますます、期待したいところだ。

鎖那 - シュテルン [Music Video]

000(おれお/おれそ)

 “アンニュイ女子”を代表する歌い手ともいえる、000(おれお/おれそ)の魅力は可愛らしい歌声だけに留まらない。彼女は自身でイラストを手掛け、自身のキャラクターグッズ制作にも積極的な上、ファッションモデルとしても活躍する一面も持つのだ。自身作のイラストを背景に“歌ってみた”動画を投稿することもあり、イラスト、声、外見、そのどれもがファッショナブル。2018年12月には、ナユタン星人、和田たけあき、神山羊などいまのボカロシーンを牽引するボカロPによる書き下ろし楽曲8曲収録の『クライベイビー ハズ ポップコーン』をリリースしたばかり。彼女の弾けるポップな感性、歌声に胸が高鳴らずにいられない。

”クライベイビー ハズ ポップコーン" Trailer / 000

鹿乃

 2010年に投稿した「恋愛サーキュレーション」(アニメ『化物語』10話オープニング)をもって、歌い手活動をスタートした鹿乃は、囁くように歌う可憐な声から、リスナーに“ロリ声”と評されることが多い。ちなみに、2012年には作詞・作曲を手掛けるボカロPとしても活躍しており、2019年2月には甘い恋心を綴った「No Sweet N♥Life」を初音ミク歌唱ver.として投稿している。数々のアニメ主題歌を担当し、その名を広げている彼女は、直近でも2018年にTVアニメ『狐狸之声』のエンディングテーマ「HOPE」を歌唱しており、歌い手やボカロPの枠を超えた飛躍に目が離せないアーティストなのだ。

【MV】鹿乃「HOPE」【OFFICIAL】

 以上、ボカロシーン黎明期から“歌ってみた”動画を投稿している個性豊かな女性歌い手を改めて紹介した。最近では歌唱力のみに特化せず、特徴ある声質を生かした活動をしている歌い手も多くなってきている。今後の“歌ってみた”シーンでは、彼女たちのようにオリジナリティを追求する歌い手がますます増えそうだ。

■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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