中村航が語る、Poppin’Partyの歌詞に刻まれた“成長の足跡”「十年、二十年と走り切ってほしい」

香澄たちの歩みと共に紡がれた歌詞

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ーーでは、『BanG Dream!』シリーズのはじまりの楽曲「Yes! BanG_Dream!」の歌詞についてはどんな風に考えていかれたんでしょう?

中村:まったくのゼロからスタートだったので、手探りな部分も多々あったと思いますね。最初の曲ということもあって、イメージを固定しすぎないように考えていったと思います。そのときあえてやったのは、「きっと」「もっと」のような言葉を意識的に使ったんですよ。こういう言葉って、歌詞を書きはじめたばかりの人が使いがちなものなんですよ。「きっと」「もっと」「ずっと」「そっと」という言葉は、ハネるメロディに乗りやすいんです。逆に言うと、経験を積むと、ちょっと避けるような言葉でもあって。でも、この曲は初めて香澄が作詞する曲になると考えたときに、あえてそういう言葉を入れておこうと思ったんです。あとはそのとき、「Yes! BanG_Dream!」だけではなく、「ぽっぴん'しゃっふる」と「STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜」も加えた3曲を作ることになったので、それらの幅も意識しました。メロディ自体もその3曲の間でかなり幅があったので。

ーー中でも「STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜」は、“星”というPoppin’Partyにとって重要なモチーフが登場する歌詞になっていますね。

中村:アニメ版へと繋がっていった曲ですね。最初に小説のストーリーの骨子を考えていったときに、“香澄が星を集めていく中でランダム「スター」に出会って、自分がかつて持っていたホシノコドウを取り戻す”という物語を着想して。でも、香澄にとって本当に一番大事な“星=STAR”って、“S(山吹沙綾)、T(花園たえ)、A(市ヶ谷有咲)、R(牛込りみ)”というPoppin’Partyのメンバーたちなんですよね。だけどこのことは、読者の方に言ってもらうまで、自分でも気づいていなかったんです(笑)。まるで僕自身も星を見つけたような気分でした。

Poppin'Party 2nd SingleCD「STAR BEAT!~ホシノコドウ~」アニメMV(フルサイズVer.)

ーー『BanG Dream!』の場合、登場人物がキャストの方々をモチーフに作られている部分もあることを考えると、メディアミックスだからこそ起きた奇跡でもあるのかもしれません。

中村:このプロジェクトでは、音楽や映像などのクリエイター、プロデューサーや、キャストの方々もそうですし、お客さんも確実にあると思うんですけど、それぞれが思いを込めて、“総体としての作品”を作っているんだな、ということをすごく感じます。最初にライブに行ったとき、このプロジェクトならではの魅力を感じて……。いろんな立場の人間が影響を受けたり与えたりする。物語、映像、音楽、キャストの表現、観客の反応、などお互いに影響を与え合っていて、幸せな空間をつくる。今も『BanG Dream!』の作詞をするときは、「これはどういうことに繋がっていくだろう」と考えながら作詞しています。

ーー詞を書くと同時に、『BanG Dream!』の可能性を広げていくような作業なんですね。

中村:そうだといいですね。今はそんな総体としての意思のようなものが、概ね同じ方向を向いていて、すごくいい雰囲気で回っているように感じます。

ーーキャストのみなさんに影響されて、歌詞が生まれていくこともありますか?

中村:もちろんありますよ。逆にキャストのみなさんが「ここはどういう気持ちで歌えばいいんですか?」と聞いてくれることもありますし。今はもう、「この人はこういう歌詞であれば、こんな風に歌ってくれる」ということも分かってきました。全員がどんなふうに歌ってくれるか、それぞれの声を想定しながら歌詞を書けるんですよ。表現にどんな幅があるか、とか。その幅は広がってもいますけど。

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ーー今回の1stアルバム『Poppin’on!』は、アコースティックVer.を抜いて時系列に考えると、ディスク1がTVアニメの第一シーズンのラストシーンで演奏された「夢みるSunflower」まで、そしてディスク2がそれ以降の「Time Lapse」から「ガールズコード」まで、という形になっています。ディスク1と2の間でも、作詞する際の変化を感じるでしょうか?

中村:今回のアルバムで言うとディスク1の4曲目までは、小説とのコラボをしながら、プロジェクト全体のテーマ曲を創っていく、というような感覚でした。そこからアニメの放送が決まって、5〜9曲はそれに歩調を合わせての曲ですね。オープニングやエンディング曲は比較的初期に創っていて、その後、シノプシスや脚本などを読みながら、物語に寄り添って創った感じです。

ーーそういう意味では、劇中で香澄が声が出なくなった時期を経て歌われた楽曲「前へススメ!」などは、その象徴的なものと言えるかもしれません。

中村:そうですね。この曲はメンバーが次々に歌い継いでいって、最後に香澄が歌う歌割りになっていますが、最初は均等に歌割りだったんですけど、それでは香澄の思いも、物語のカタルシスも表現しきれなくて、香澄のパートだけ長くしたんです。あと僕は「夢みるSunflower」もすごく好きなんですよ。

ーーアニメの第1シーズンの最終話で演奏される曲ですね。

中村:全体としては「夏に向かって、希望を残しながら終わっていく」、だけど完全な大団円ではなく、「成長してきたけれど、まだまだ足りない部分もあるんだ」という気持ちの表現。そうなんだけど同時に、13話の最後に流れる曲なので、最後には大きく、ありがとう、また会おうね、の気持ちを込めました。

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