橘慶太の「composer’s session」:西寺郷太(NONA REEVES)
w-inds. 橘慶太×NONA REEVES 西寺郷太 対談【前編】 楽曲制作への目覚めと活動原点振り返る
西寺郷太、バンドブームの中で過ごした暗黒の10年
橘:西寺さんは最初1人で音楽をやりたいと思っていたんですよね。そこからバンドを組むまでは自然な流れだったんですか?
西寺:いや、大変でしたね。音楽的に孤独な十代のことを思い出すたびに泣きそうになりますよ(笑)。僕はマイケルと同時にプリンス、Wham!とジョージ・マイケル、それからTears for Fears、Scritti Politti、といったいわゆる「80年代洋楽」のデジタルとアナログを融合させたバンドが好きになって。高校生くらいになると日本は当時バンドブームで、BOOWY、X JAPAN、ユニコーン、ブルーハーツなどが全盛で。日本だとむしろ田原俊彦さん、松田聖子さん、少年隊のようなクオリティの高い歌謡曲・アイドル音楽が好きだったんです。でも学校にいるバンドが好きなやつらは、みんなそういう曲は聴かないんですよ。だからみんながコピーバンドをやり始めて、ドラムとか参加するんですけど、すごく仲が良くても、クラスメイトと一番好きな音楽の話はできなくて。それが10代の自分の悩みでしたね。身近に音楽に詳しい人もいないし。
橘:それはつらい。
西寺:例えばベースにしても、僕が本当にかっこいいと思うのはシンプルでも同じフレーズを繰り返していくようなファンクネス。でも当時の中高生にはわからないんですよ、運指が難しかったり速弾きしないとやり甲斐ない、みたいな(笑)。それこそDaft Punkの「Get Lucky」じゃないけど、ブルーノ・マーズ「Uptown Funk」も含めて2010年代の感性だと伝わる気がしますけど。
橘:たしかにそうかもしれないです。
西寺:それで大学生になって、上京して。今もバンドのメンバーの小松(シゲル)やKIRINJIの千ヶ崎(学)っていうすごいベーシストに出会ったりするんですけど。今思い返せば、たまたま僕が行ってた早稲田大学の色んなジャンルの音楽サークルにはすごい人が集結してて。GALAXYっていうヒップホップサークルにちょっと年上でしたけど、RHYMESTERのメンバーがいてStreet Corner Symphonyていうアカペラ好きのサークルにはゴスペラーズのメンバーがいましたし、シンガーの土岐麻子さんも歳下ですが僕らの隣のサークルにいました。ただ、僕個人で言えば「バンド」が組みたかったのに結局、大学時代も音楽的にはうまくいかないことの連続だったんです。諦めてソロでやるしかないか、くらいに自暴自棄になってた卒業間際に、「え?」っていうくらい最高のメンバーが揃ったのが、1995年。それが、NONA REEVESで。
だから僕が曲を初めて作った10歳から、10年以上は暗黒時代。大学生の頃はNirvanaとかRed Hot Chili Peppersが全盛で、みんなカート・コバーンに憧れて「死にたい」みたいな歌を作ってるんですよ。大学三年生の春にカートが亡くなって。スタジオのバンドのメンバー募集の掲示に「Nirvanaみたいな音楽やりたい。当方孤独で人生に絶望しているギター・ボーカル」とかいうメッセージと、下だけピッて切れるようになってる電話番号を貼っていて、それがバンバンちぎられてて。スタジオから楽しそうに歪んだギターと爆音のドラムで「誰もわかってくれない、寂しい、死にたーい」みたいな曲が漏れてくるんです。「お前らめっちゃ共感されてるやん、めっちゃ仲間いるやん」って羨ましかったですね(笑)。
橘:ちなみにw-inds.メンバーにも1人Nirvana大好きな人がいますよ。カート・コバーンが大好きで20歳くらいの口癖は「僕は27になったら死ぬ」でした(笑)。
西寺:(笑)。でも誤解されると困るのは、Nirvanaそのものは最高なのよ。大好きだし僕も。その時の自分が卑屈になってたから、楽しそうなNirvanaのコピーバンドを勝手に憎んでいただけで。カート・コバーンは天才だし、Nirvanaは本当にいい。自分はどちらかというと、リフとかリズム主体で曲を作っていくタイプなので、キーボーディストとかギタリストのコードワークに強い人、今だったらギターの奥田(健介)がそうなんですけど。そういう人が相棒に欲しかったんですけどね。だけどそれを見つけるのにものすごい苦労したって感じかなぁ。
橘:今はどう思います? ファンクとかソウルとかって、昔よりJ-POP、ポップスの中で市民権を得ているのかとか。
西寺:それはだからもうw-inds.のおかげで。
橘:いやいや(笑)。
西寺:ま、でも海外のトレンドに普通に対応しながら日本の芸能界のど真ん中で独自のサウンドを展開してる、それも自分自身で慶太くんがクリエイトして、ミックスまでしてるわけですからね。ちなみに、2009年6月にマイケル・ジャクソンが亡くなったんですけど、そこから彼の再評価が様々な影響を与えたと僕は思ってます。2000年代末にレディ・ガガが出てきて「Just Dance」が流行った時、生前のマイケルが「次のスターはレディ・ガガだ」って言ったんですよね。ブルーノ・マーズもちょうどマイケルと入れ替わるようなタイミングでデビューして。一番彼の曲で好きなのは、2ndの『Unorthodox Jukebox』に入ってた「Treasure」。ジャクソンズ的な楽曲でバンドやメンバーも踊って、本当に最高ですよね。w-inds.も全部細かく聴いてきたわけじゃないんですけど、もちろんすごいなと思っていつも見てましたし。2010年代の作品だとDaft Punk『Random Access Memories』は人生ベスト10に入るし、Calvin Harris『Funk Wav Bounces Vol. 1』とか、Thundercatとかも大好きですね。
橘:本当に増えてきましたよね。
西寺:フュージョン、ソウル、デジタルと生演奏を組み合わせたダンサブルな音楽はすごく好きだし、2010年代は本当に楽しい。このムードはもう変わらないんじゃないですかね。だから自分も今はようやくやりやすくなりましたね。
(後編はこちら)
■橘慶太(w-inds.)
1985年12月16日生まれ。福岡県出身。
3人組ダンスボーカルユニットw-inds.のメインボーカリストとして、2001年にシングル『Forever Memories』でデビュー。同年、第43回日本レコード大賞最優秀新人賞に輝く。その17年の活動において、いままでにw-inds.として12枚のオリジナルアルバムと40枚のシングルをリリース。
国内外でそのアーティスト性、パフォーマンス、そしてセールスは高く評価され、デビュー当初より日本のみならずアジア各国で数々の賞を受賞。その活躍は、台湾・香港・韓国・中国・ベトナム・タイ・マレーシアなど東南アジア全域に拡がっている。
2017年、「We Don't Need To Talk Anymore」からは、橘慶太が作詞・作曲・編曲をセルフプロデュースするなど、世界の音楽のトレンドをいち早く取り入れながら、グループ独自の音楽を追求し、常に進化を遂げている。
(構成=久蔵千恵/写真=下屋敷和文)
■NONA REEVESリリース情報
『未来』
3月13日(水)発売
¥3,000(税込¥3,240)
※タイトル楽曲「未来」先行配信中
配信一覧はこちら
■NONA REEVESイベント情報
『THE FUTURE 2019』
5月3日(金・祝)新代田FEVER
開場17:30/開演18:00
5月4日(土・祝)新代田FEVER
開場16:00/開演16:30
5月11日(土)心斎橋 Music Club JANUS
開場16:30/開演17:00
5月12日(日)名古屋 ell.FITS ALL
開場16:30/開演17:00
5月18日(土)札幌 KRAPS HALL
開場17:30/開演18:00
5月25日(土)福岡 DRUM SON
開場16:30/開演17:00
6月1日(土)渋谷クラブクアトロ
開場17:00/開演17:30
チケット一般発売:3月30日(土)10:00〜発売
NONA REEVES「未来」ミュージックビデオ
NONA REEVES オフィシャルサイト
■KEITAリリース情報
12カ月連続配信リリース第1弾
KEITA「Don't Leave Me Alone」
1月18日(金)配信スタート
*All produced by KEITA
<配信サービス>
iTunes/Apple Music/Spotify/LINE MUSIC/AWA/Google Play Music/レコチョク/mora/dヒッツ 他、ダウンロード及びサブスクリプション(定額制聴き放題)
<ダウンロード>
こちらから
■w-inds.リリース情報
『w-inds. LIVE TOUR 2018 "100"』
2018年12月12日(水)発売
初回限定盤DVD(2枚組+2CD)¥5,926+税
特典映像:Documentary of LIVE TOUR 2018 “100” -Another Story-
特典CD:w-inds. LIVE TOUR 2018 "100" Live CD(2枚組)
Blu-ray(1枚組)¥5,926+税
特典映像:Documentary of LIVE TOUR 2018 "100"
DVD(2枚組)¥4,907+税
特典映像:Documentary of LIVE TOUR 2018 "100"
<収録楽曲>
M00. Introduction
M01. Bring back the summer
M02. In Love With The Music
M03. Show You Tonight
M04. All my love is here for you
M05. I missed you
M06. try your emotion
M07. 四季
M08. A Trip In My Hard Days
M09. Do Your Actions
M10. Celebration
M11. The Right Thing
M12. ORIGINAL LOVE
M13. In your warmth
M14. TOKYO
M15. 十六夜の月
M16. Long Road
M17. SUPER LOVER 〜I need you tonight〜
M18. We Don't Need To Talk Anymore
M19. Temporary
M20. The love
M21. Time Has Gone
M22. Come Back to Bed
M23. Stay Gold
M24. We Gotta Go
M25. Drive All Night
EN1. Dirty Talk
EN2. Sugar
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