“ネガティブの共有”から生まれる新たなシーン 眩暈サイレンら若手アーティストの台頭から紐解く

 ニューシングルの表題曲「夕立ち」を取り上げても、まさに先ほど記した「常に心に闇を抱え、日常生活の中ではマイノリティに属する者たち」にこそ響くであろう1曲だ。この曲の歌詞は決してハッピーエンドとは言えない。日々感じる葛藤から逃げることもできず、かといってそこから逃げ出そうともしない。歌詞にもあるとおり〈もう取り戻せない所で 眺めているだけ〉で、取り戻せないことを嘆くところで曲は終了する。この虚無感こそ京寺(Vo)の綴る歌詞の真骨頂であり、聴き手に「救い」を届けるのではなく、変わらない日々の苦しみを「共有」することで絆を築いていくのだ。だからこそ、同じ状況下にいるリスナーにとっては(たとえネガティブな表現であっても)ポジティブに響くのではないだろうか。

 また、時にヘヴィに、時にしなやかに鳴り響くバンドサウンドもとても緻密に作り込まれたもの。ジャンルとしてはオルタナティブロックに属するのだろうが、欧米のそれとは異なる、90年代後半以降のドメスティックなロックシーンからの影響が伺える純国産ロックであり、そこにギター1本でもしっかり成立するキャッチーなメロディが乗る。特に本作はプロデューサー・出羽良彰(amazarashiら担当)の手腕もあり、過去の作品よりも眩暈SIRENの個性が際立つ形でバージョンアップが図られている。

 何かと生きにくい現代だからこそ、彼らのようなバンドが求められ、存在することに大きな意味が生じる。もし今、自分が10代の悩める子どもだったなら、こういったアーティストの音楽に自分を重ねて「もうちょっとだけ生きてみよう」と思うのかもしれない。と同時に、大人になった筆者が今聴いても、そのサウンド/楽曲の素晴らしさと「物語としての歌詞」の奥深さに惹きつけられるのだから、それはロックバンドとして純粋に素晴らしいということの表れなのだろう。

 人はなぜ、ポジティブでまばゆい光よりもネガティブで視界や思考をシャットアウトする闇に惹かれるのか。その答えは、眩暈SIRENをはじめとする次世代アーティストたちの楽曲の中に見つけることができるはずだ。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

眩暈SIREN『夕立ち』

■商品情報
2019年2月6日(水)発売
ニュー・シングル『夕立ち』
(Sony Music Records)

初回盤
価格:¥2,000(+税)
品番:SRCL-11061〜2
通常盤
価格:¥1,200(+税)
品番:SRCL-11063

<初回特典DVD収録内容>
M1:夕立ち
M2:クオリア
M3:夕立ち(Acoustic Version)

<初回特典映像>
-羅針盤の針は揺れる-
「音が孤独を覆うまで」
2018.11.02

M1:ジェンガ
M2:HAKU
M3:Life finds away
M4:その後

<初回・通常盤(初回仕様)共通>
CD封入先行チケット予約
眩暈SIREN「夕立ち TOUR 2019」
CD封入先行予約受付期間:2019年2月6日(水)12:00〜2019年2月17日(日)23:59

眩暈SIREN Official YouTube Channel
眩暈SIREN公式サイト

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