3rdアルバム『三途ノ川』リリース対談

島爺×ナユタン星人 特別対談 二人が語り合う、歌い手とクリエイターの最良の関係性

島爺が引き出す、音声合成では表現できない“歌心”

アヴァターラ うたった【島爺】

――ナユタン星人さんは、「島爺」という歌い手の魅力をどう捉えていますか?

ナユタン星人:もちろん歌声が好きなんですけど、島爺さんはその活動スタイルも好きなんですよね。特に「歌ってみた」の選曲については、シーンを盛り上げたい、という気持ちを感じて、そこに共感します。僕もリスナーとしてはいろんなボカロ曲を掘り下げていて、「この曲、絶対もっと聴かれるべき」と思うことも多いなかで、島爺さんはそれを実行していると言うか、歌うことで知られていなかった楽曲の魅力を伝えていて。そのスタイルが、単純にカッコいいと思うんです。もっと言うと、ただ「知られざる曲をチョイスしてやろう」と考えているだけだと、すぐに分かると思います。島爺さんの場合は同時に、本当に好きなものを選んでいることも伝わってくるので、シーンというか、作り手というか、音楽自体への愛をものすごく感じます。「この曲をこういうふうに歌うのって、絶対に愛がないとできない」とよく思うので。

島爺:照れますね(笑)。

――でも、おそらくそれはクリエイターの総意ですね。

ナユタン星人:だと思います。それと、ボカロPにとってうれしいのは、音声合成では引き出しきれない曲の意図や魅力を補完してくれることですね。曲に乗っかって自分の歌声を見せているのではなくて、逆に歌を通じて、曲のよさを伝えてるというか。

島爺:そこはとても意識している部分ではあります。ボーカロイドもほんまに、人間にどんどん近づいてきていると思いますけど、やっぱり得手不得手があって。「この方(クリエイター)は、ほんまはこういうふうに歌わせたいんじゃ無かろうか」という部分を、勝手にイメージしながら歌っています。

――それがきちんとクリエイターに伝わっているというのは、うれしいことですね。

島爺:ですね。ありがたいです(笑)。

ナユタン星人:島爺さんのファンがみんな思っていることを言語化しただけです(笑)。

――さてナユタン星人さん、『三途ノ川』はまた全20曲というフルボリュームの作品になりましたが、収録曲のラインナップをご覧になってどうですか?

ナユタン星人:(資料をじっくり眺めて)お世辞抜きに、めっちゃいい選曲ですね。どの人も好きだな。2曲目に「スロウダウナー」(ろくろ)とか、いいなあ。新旧の楽曲が織り混ざっているし、定番の人の曲がここで来るか! みたいな楽しさもあって。やっぱり島爺さんの選曲は裏切らないですね。

――強いメッセージのある曲もありますが、やはり全体としては白黒決めつけず、リスナーがその時々で沁みる楽曲を探せる一枚になっていると思います。

島爺:そうですね。音楽は「答えを出す」ために必要なものではなくて、ほんまにちょっとだけ背中を押してくれるとか、ちょっとだけ一緒に泣いてくれるとか、そういうものやと思うんです。そのなかで、ちゃんとあがいているし、ちゃんと怒っているし、ちゃんとふざけてますし、いい一枚になったのかなと。

――また、「バカをやるなら」(しぇろ)や「インターネットがなかったら」(薄塩指数)など、ツアーで披露されているものも含め、これまで以上にライブのイメージが広がるものになっていると思いました。

島爺:そこは念頭に置いていましたね。ツアーも見越してのイメージというか、ちゃんとみんなで盛り上がれるような曲、というのも考えつつの選曲でした。

――20曲それぞれに、各クリエイターのさまざまな思いがあり、その一曲一曲を丁寧に歌う、ということの大変さを感じます。「カバー」という見方をすると「自分でオリジナル曲は作らないんですか?」なんて聞いてしまいがちですが、まさにプロの「歌い手」というべき、突き詰めた活動というか。

島爺:あまりないスタイルですよね(笑)。でも、そこに面白みを感じて、続けてきたからこその今やと思うので、その集大成的な意味でも、しんどくても音源づくりはしっかりしていかなあかんと。

ナユタン星人:歌い手さんは基本的に、みんな自分でディレクションまでして歌っていますからね。それが本当にすごい。きちんと一枚の作品になっているのは、そのディレクションが丁寧なのと、やっぱり島爺さんがちゃんと意志を持って選曲しているからですね。

――ナユタン星人さん、『ナユタン星からの物体X』から続いた三部作が昨年8月で完結し、年明けからも楽曲提供のニュースが相次いでいますが、今年はどんな年になりそうですか?

ナユタン星人:今年はもう、むちゃくちゃ何もしないか、むちゃくちゃ色々やるか、どっちかですね。侵略計画は最初から決めているんですけど、実行するのはいつも気分というか、自分がいいと思って初めて取りかかるので。あくまで自分の感性が動けば、という感じです。

――期待しています。島爺さん、1月からフルボリュームのアルバムリリースですが、今年はどんな年にしたいですか?

島爺:これまで、自分のスタイルをずっと守ってきたところがあるんですけど、今年はその枠組を少しだけゆるめようかなと思っています。具体的に何をする、ということは決めていないんですけど、これまでやらなかったことも、もう少し自由にやりたいというか、フットワークを軽くしたい。そう思えるようになったのは、リスナーさん、お孫さん(島爺ファンの愛称)に対する信頼感もあって、少々やんちゃしても、みんなついてきてくれるんじゃないかなと(笑)。

――トップクリエイターに、ナユタン星人さんのような理解者もいますし(笑)。

島爺:もう、何をやっても許されるという(笑)。いままで大事にしてきた部分は崩さず、自分のなかで窮屈にしすぎていた島爺像というものは、少し解放していきたいと思います。

――最後に「サンズリバーリバイブ」、並びに『三途ノ川』をどんなふうに受け取ってもらいたいか、一言ずつお願いします。

ナユタン星人:「サンズリバーリバイブ」については、まずは何も考えずに聴いてもらって、もし気が向いたら、深く聴き込んでもらえたら嬉しいです。パッと聴きはけっこうどんちゃん騒ぎな曲なんですが、歌詞に意外と色んな意味を込めたし、島爺さんの歌い方も細かいところですごく色々表現してもらえてて、聴くだけ発見があって楽しいかと思います。
アルバムについては、普通にファンとしておすすめしたいですね。僕、ボカロ曲をめちゃくちゃ聴いているんで、収録曲は知っているものが多いんですけど、「これ、聴いてほしいな」と思う曲ばかりなので。最近の曲もちゃんと入っているのがうれしいです。

島爺:「サンズリバーリバイブ」の聴き方もそうなんですけど、ザッと聴いていただくだけでもいいですし、気になったところからクリエイターさん単位で掘り下げていただければもっとうれしいです。全体を通して、僕が伝えたいイメージはちゃんと伝わると思いますので、まずは好きなように聴いていただけたら。で、気になってツアーにも参加していただけたら、もっと濃いものをお見せします(笑)。

――ちなみに、初回生産の3333セット限定ということですが、「たまてBOX盤」がエライことになっていますね。開ければモクモクと煙が上がるようなギミックがあるボックスに、ライブフォトブック、Tシャツ、さらには初の映像作品として、1stライブ含むツアー映像が多数収録されたDVDなどなど。ちょっとやりすぎでは……?

島爺:もう本当に、プレゼントですよね(笑)。たくさんリクエストをいただいていた映像のほうもいい感じにできてますし、いろんな方のご協力があって、すごいクオリティの限定盤になりました。玉手箱の煙もなんとなく言ったアイデアだったのに、ちゃんと形にしてくれて。みんなで箱を開けて、老けてもらえれば(笑)。

(取材・文=橋川良寛)

■リリース情報
『三途ノ川』
発売:1月30日(水)
価格:初回生産限定たまてBOX盤(CD+2DVD+Tシャツ(フリーサイズ)+ライブフォトブック+豪華たまて箱仕様)¥8,200+税
初回限定盤(CD+2DVD)¥5,000+税
通常盤(CDのみ)¥2,500+税

※ジャケットイラスト:獅子猿

<CD収録内容>
1.ぼかろころしあむ(DIVELA)
2.スロウダウナー(ろくろ)
3.世余威ノ宵(蜂屋ななし)
4.バカをやるなら(しぇろ)
5.爆釣ソウル(ナナホシ管弦楽団)
6.天才ロック(カラスヤサボウ)
7.アウトサイダー(Eve)
8.九龍レトロ(トーマ)
9.オノマトペテン師(てにをは)
10.スカイデアンナイト(こがねむし)
11.サンズリバーリバイブ(ナユタン星人)※新曲
12.悪魔の踊り方(こんにちは谷田さん)
13.フィクサー(ぬゆり)
14.かくれんぼ(buzzG)
15.白亜の罪状(LITCHI)
16.泣けど喚けど朝がきて(12uck)
17.サイハテ通り(雨の介)
18.地球最後の告白を(kemu)
19.インターネットがなかったら(薄塩指数)
20.アヴァターラ(ナナホシ管弦楽団)※新曲

※通常盤のみ
Bonus Track
才能シュレッダー(ナナホシ管弦楽団)

<DVD収録内容>※初回限定たまてBOX盤、初回限定盤
DVD①
「冥土ノ宴」(2017.6.16@赤坂BLITZ)
「孫を訪ねて82万里~冥土 in Japan~」(2017.10.27@川崎CLUB CITTA)
「生爺~アコギの宴~」(2018.2.9@duo MUSIC EXCHANGE)
「敬老の日スペシャル~永敬爺82~」(2018.9.17@日本教育会館一ツ橋ホール)

DVD②
「爺さんぽ〜冥土の国から'18 春〜」(2018.6.24@新木場STUDIO COAST)
「特典映像」 
※「特典映像」は初回生産限定たまてBOX盤DVD②にのみ収録
※ダイジェスト映像となり、当日の演目で収録されない楽曲もあり
※収録内容は変更になる場合もあり

「サンズリバーリバイブ」配信先はこちら

■ツアー情報
『島爺日本全国ツアー2019 ~三途ノ川~』
3月14日(木)開場 18:30/開演 19:00
会場:熊本 B.9 V2 ※バンド
3月16日(土)開場 17:30/開演 18:00
会場:福岡 DRUM Be-1 ※バンド       
3月17日(日)開場 16:30/開演 17:00
会場:福岡 DRUM Be-1 ※弾き語り        
3月21日(木・祝)開場 16:30/開演 17:00
会場:愛知 NAGOYA CLUB QUATTRO ※弾き語り
3月22日(金)開場 18:30/開演 19:00
会場:大阪 BIGCAT ※バンド      
3月24日(日)開場 16:30/開演 17:00
会場:岡山 デスペラード ※バンド            
3月28日(木)開場 18:30/開演 19:00
会場:北海道 Sound lab mole ※バンド     
3月30日(土)開場 16:30/開演 17:00
会場:宮城 CLUB JUNK BOX ※弾き語り           
4月7日(日)開場 16:30/開演 17:00
会場:香川 高松MONSTER ※バンド
4月14日(日)開場 17:00/開演 18:00
会場:東京 マイナビBLITZ赤坂 ※バンド

<チケット>
【アルバム封入最速先行受付】
抽選受付日程:1月29日(火)18:00~2月6日(水)23:00

【前売】
弾き語り(福岡2日目/愛知/宮城)自由 ¥4,500(税込/ドリンク代別) 
バンド(熊本/福岡1日目/大阪/岡山/北海道/香川)立見 ¥5,000(税込/ドリンク代別) 
東京公演:1F立見 ¥5,500(税込/ドリンク代別) 

※4歳以上チケット必要
※整理番号順の入場
※弾き語り公演は自由席。状況により立見になる場合もあり

『冥土ノ日帰りバスツアーⅢ(関東編/関西編)』
応募受付期間:1月29〜2月10日
【関東編】2019年6月15日(土)開催
【関西編】2019年6月22日(土)開催
初回限定盤(WPZL-31571/73) に封入されているシリアルコードAと、通常盤(WPCL- 12989)に封入されているシリアルコードBを両方使って応募した方の中から抽選でそれぞれ40名を『冥土ノ日帰りバスツアーⅢ(関東編/関西編)』に招待
島爺による弾き語りライブなど豪華プログラムをご用意しております。

■関連リンク
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