ヴィジュアル系が「ブーム」から「文化」へ “1999年”がシーンにもたらしたもの

 また、インターネットもシーンに大きな変化を与えた。アーティスト側、たとえばhideはネット黎明期からインターネット上で情報を発信しファンと交流していたし、PIERROTはインターネット上のストリーミング中継も含めた生配信ライブ『THE GENOME CONTROL』を99年に行っているが、ファンの方にもインターネットが浸透したのがこの時期以降だ。それまでもインターネット上でファン同士のコミュニケーションは存在したが、パソコンではなくモバイルが中心になったことによって、当時10代だったヴィジュアル系のファンにも爆発的に広まっていったという印象がある。ドコモのiモード、10代のファンらのコミュニケーションに重要な役割を果たした「魔法のiらんど」などのサービス開始も1999年だ。もともとファンダムの強いジャンルではあったが、メディアから発信されたトップダウン型の情報ではなく、自分たちの好きなバンドを口コミで広げていくボトムアップ式のコミュニケーションへ変化していくという時代の転換点も、この時期だったように思う。この口コミ中心のファン心理を上手く活用したのが、ゴールデンボンバーというのはいうまでもない。

 あれから20年、シーンを取り巻く風景は良くも悪くも随分変わった。世間からは一時期のブームとして見られていた「ヴィジュアル系」というジャンルも、形を変えながらも30年近く続き、平成という時代を代表する文化のひとつになったといえる。「ブーム」から「文化」への変化のターニングポイントが、あの1999年にはあったのではないだろうか。

■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。8月6日に市川哲史氏との共著「すべての道はV系へ通ず。」(シンコーミュージック)を上梓。Twitter

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