折坂悠太、中村佳穂、KID FRESINO……“プレイヤー”たちのネットワークが新たな音楽を生む原動力に
2018年は若手SSWの活躍が印象的な年だった。あいみょんが次世代のJ-POPを担う実力を印象づけた一方で、崎山蒼志がSNS経由でスターダムを駆け上がり、折坂悠太や中村佳穂といった才能が発表したアルバムも大きな注目を集めた。長谷川白紙やMomがインターネット以降、またヒップホップ以降のDIY精神とポップス像を提示したのも印象深い。
なかでも注目したいのは折坂悠太と中村佳穂だ。
両者とも、多彩な表情と豊かな陰影を持った歌声や確固たる個性を湛えた詞で、新たな日本語の「うた」を提示した。加えて、アルバムを貫くアンサンブルやサウンドへのこだわりも、個人の才能の発露にとどまらない作品としての広がりを持っていた。
その秘訣を知るためにクレジットをひもとくと、折坂悠太の『平成』をサポートしたのは、先んじるEP『ざわめき』にも参加している、寺田燿児率いるyoji & his ghost bandの面々や、に角すいの飯島はるかなど折坂悠太合奏のメンバーだ。
yoji & his ghost bandが奏でる箱庭を思わせる折衷的なポップスや、ピアノとツインボーカルのシンプルな編成ながら複雑に折り重なるハーモニーが耳を捉える、に角すいの楽曲の響きは、『平成』に面影を残しているように思う。
あるいは中村佳穂の『AINOU』は、荒木正比呂、深谷雄一(ともにレミ街)、小西遼(CRCK/LCKS)、西田修大(吉田ヨウヘイgroup)との密接なコラボレーションの成果だ。
エレクトロニカやジャズ、ネオソウルのエッセンスをポップスに昇華してきた彼らから中村が吸収したセンスやスキルは、生音とエレクトロニックな加工がシームレスに同居したサウンド、そしてビートや譜割りの実験が繰り出されるアレンジに結実している。