King & Princeに漂う、ジャニーズアイドルの末裔感 初のコンサートツアー映像を見て

次のシングルのカップリング曲の候補を披露

 また、2ndシングルに収録されるカップリング曲をファンの投票で決めようという試みも行われた。選択肢は「Misbehave」「秋空」「Glass Flower」の3曲。「Misbehave」はジャニーズでは異色のトロピカルハウス色の強いダンスナンバーで世界の音楽トレンドとも並べて語れるような一曲だ。「秋空」はしっとりとした美しいピアノバラード。「Glass Flower」は歪んだギターサウンドを持ちながらもゆったりとした曲調でメロディが切なく、壮大な広がりを持っている。最終的にカップリング曲は「Glass Flower」に決定した。ファンの意思や希望が活動にダイレクトに反映されるというのは、アイドルグループの新しい在り方だろう。

繰り返し披露した「シンデレラガール」

 今回のコンサートでは「シンデレラガール」を振り付けや演出を変えて何度も繰り返し披露している。それには、単に足りない曲数を補うための数合わせとしてではなく、それぞれしっかりと意味が込められているだろう。1度目はグループの誕生を印象付ける「シンデレラガール」、2度目はファンとともに歌って踊る「シンデレラガール」、3度目は”門限”が迫り別れを告げる「シンデレラガール」、そしてラストに披露した4度目の「シンデレラガール」はその”門限”を超えてでもファンのもとへと会いに来た「シンデレラガール」だ。まさに「シンデレラガール」の歌詞のストーリーを描くような構成に、いかにこの曲が彼らにとって重要な一曲なのかが伝わる公演となっている。これらを通してデビュー時の思いを心に刻み込むような強い意志すらも感じ取れた。

 多くの名曲を拝借したことによって、彼らの佇まいには連綿と受け継がれてきたジャニーズアイドルの”末裔”感が漂い始めている。日本のエンターテインメント史の王家の血を継ぐ王と王子のステージ。そんな趣を感じ取れるステージングでありながら、しっかりと自分たち自身のデビュー曲(言うまでもなくジャニーズ楽曲史の新たな名曲である)をアピールするような姿勢もあり、さらにファンとの密な関係性を築く企画も用意されている。持ち曲が少ないながらもカバーや投票制度などさまざまな試みに取り組んだことで、初のコンサートツアーを完成させたKing & Prince。今後の活動のなかで、彼らのライブがどのように進化していくのか注目していきたい。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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