LOVE PSYCHEDELICOが再確認した曲作りの面白さ「音楽を目一杯楽しまなきゃ」

LOVE PSYCHEDELICOが再確認した曲作りの面白さ「音楽を目一杯楽しまなきゃ」

自分たちのポップ感覚がそのまま曲に表れている(NAOKI) 

ーーちなみにKUMIさんの産休の間にNAOKIさんはどういう活動をされていたんですか?

NAOKI:2018年の7、8、9月はプロデューサーの仕事をしていたんですけど、実はそれと並行して、今のKUMIはどんな音を鳴らしたいんだろう? そして、どういう音の中で泳ぎたいんだろう? ということを考えながら、今のKUMIにしか歌えない歌を聴きたいというテーマのもと、曲を作ってましたね。結果的にはKUMIが動けない間もLOVE PSYCHEDELICOをやっていたという(笑)。そして、何曲も書いたなかで、一番いまのKUMIにフィットするだろうとあたためていたのが今回の曲の前半部分なんですよ。

ーーその曲が発展して今回のクリスマスソング「Sally」に結実した、と。しかし、今までのLOVE PSYCHEDELICOは、今回のようにパーソナルな、プライベートな出来事を直接的な形で曲や作品に結びつけることは非常に少なかったと思うんですよ。

NAOKI:結成から20年以上、なによりも音楽を第一に届けるべく活動してきたこともあって、そういうプライベートな曲を発表したところで、LOVE PSYCHEDELICOのスタンスが変わらないことはさすがに分かってもらえるんじゃないかなって。

KUMI:今回の曲「Sally」はプライベートなことを題材にしているけど、もともと私が子供を授かったお祝いにとNAOKIがプレゼントしてくれたものだったんです。そしたら、それがとても素敵な曲だったので世の中に届けたいと思ったんです。曲の題材こそパーソナルだけど、曲そのものは誰にでも通ずる普遍性を持っていると感じたので。

ーーよく分かります。

NAOKI:最初はパーソナルな感じでさらっと生み出したものがアウトプットする瞬間にはみんなの歌になっているっていう。今回の曲も最終的には世の中のみんなの日常を称える曲になっているんじゃないかな。そこにはもちろん、KUMIが出産を通じて経験した命の尊さに対する実感も含まれているんだけど、曲とそこに込められた気持ちは、世の中、捨てたもんじゃないよねっていう祝福感に結びついているなって。

KUMI:だから、自分たちのなかでこの曲は大きな挑戦だとは思っていなかったんですけど、こうして変化していっているのかもしれないね。

NAOKI:完成した曲がこれから世に出ていって、自分たちの考えと違った受け止め方をするのかどうなのか。それは分からないけど、クリスマスソングとしてもらえば、それでいいかなって。

ーーそして、この曲が素晴らしいところは、元々の成り立ちがパーソナルな曲ということもあり、パーティソングでもなければ、クリスマスにまつわるラブソングでもない、生命の誕生と重ねられた誰の日常にも訪れるささやかな幸せを祝福している曲であるところだなと思います。

NAOKI:そう言ってもらえて、うれしいですね。あと、全然、商業的じゃないクリスマスソングだよね?

ーー曲そのものはじんわりと始まりますし、確かにギラギラしたものは感じないですね(笑)。むしろ、職権乱用で聴かせていただいた途中段階の曲は、「きよしこの夜」の旋律を弾くマンドリンや散りばめられたコーラスが高揚感が生む後半パートも存在していませんでしたし、シングルらしくない、あまりに素朴でシンプルな曲の佇まいに驚かされました。

NAOKI:びっくりしたでしょ?(笑)。それが作っているうちに発展していって、最終的な曲の展開は自分の中ではプログレなんだよね(笑)。自分たちが持っていて消えることがない本来のポップ感覚はそのまま曲に表れていると思うんですけど、ここ数年、ラジオ番組で様々な曲をかけたり、レコードにハマったりしているうちに、乱暴な言い方をすると、ロックンロールもプログレもヘビメタも大差ないなって思うようになったし、ルールを取っ払ったら、こういうプログレッシヴな曲が生まれたんですよ。

ーーこの曲のオルガンは教会音楽のようですし、ギターワークはクラシカル、マンドリンはアイルランド音楽のようだったり、多彩な音楽要素が不思議な一体感、高揚感を生み出していますし、今回の歌詞はNAOKIさんが単独で書かれたんですよね?

NAOKI:そう。自分はKUMIの立場に立つことができないから、男性である自分が想像で書いた、ある種のフィクションなんですよ。でも、それによって、男性も入りやすい曲になっているんじゃないかなと思いますね。

KUMI:もちろん、NAOKIから曲を受け取った後、自分が歌うにあたって、NAOKIの言葉で言うところの“みんなのうた”にするために手を加えているので、誰もが聴きやすい曲になっている……といいな(笑)。

ーーあと、曲の話から少し離れますが、NAOKIさんはここ最近、Twitterで頻繁につぶやいていらっしゃるじゃないですか? 音楽そのものをなにより最初に届けるべく2人のパーソナリティを前面に出すことがなかったLOVE PSYCHEDELICOのこれまでを考えるとこれまた大きな変化ですよね。

NAOKI:俺はそこまで考えてTwitterをやってるわけじゃないですけどね(笑)。

ーーそうだったとしても、自分たちのパーソナルな部分を明かしてこなかったNAOKIさんが朝から晩まで、いま何をやっているのか、ツイートしているわけですから、結果的には大きな変化だと思うんですよ。

NAOKI:ホントだよね(笑)。何でなんだろうな? Twitterは、自分達が喋っているラジオ番組のスタッフから「NAOKIさんも始めなよ」って言われて、その場で始めたのがきっかけなんですけど、まぁ、この歳になって、格好つけてもしょうがないというか……。

ーーアルバム『LOVE YOUR LOVE』で日常と共にある音楽をそのまま形にできたことが何か心境の変化に繋がったとか?

NAOKI:あ、そうか。格好つけてもしょうがないというのは言い方を変えれば、ありのままの日常ということですもんね。この秋、頻繁にツイートしていたのはレコーディングのことがほとんどというか、まぁ、それは日常がレコーディング漬けということでもあるんですけど(笑)、Twitterがない時代、例えば「今からピアノ録るよ」とみんなに伝える手段がなかったじゃないですか。だから、どんな感じでピアノを録っていたかは知る由もなかったんですけど、今は伝えようと思ったらリアルタイムで伝えることができるでしょ。なおかつ、今の時代、音楽が氾濫しているなか、作品についての情報をよく知らないまま、配信で聴かれるようになっているわけで、ものを作る、ものが作られる面白さ込みで作品を聴いてもらうのも面白いんじゃないかなって。だから、例えば、シンバルだけをセッティングして、そこにマイクを立てて録音している様子を写真付きで紹介したり、それによって、曲を聴く時に「ここで鳴ってるシンバルはあの写真に写ってたやつかな?」とか、イメージしながら聴けるでしょ。それがいいか悪いかは分からないし、そのバランスは難しいところですけど、聴く人が“音楽制作って面白いかもしれない”と思ってくれたらいいなって、そういうことはほんのちょっとだけ考えました。

ーーLOVE PSYCHEDELICOの音楽はバンドの一発録りではなく、130トラック以上の気の遠くなるような多重録音の末に生まれているものですからね。

NAOKI:そう。マンドリンを何日もかけて録っていることが分かれば、何でそんなに何日もかけてマンドリンを録ってるんだろう?と思うでしょうし、それを踏まえて、曲を聴けば、なるほど、こんな感じで多重録音しているんだなって分かるでしょうし。

ーー音楽が溢れている今、音楽は一つの情報ではなく、気の遠くなる作業を経て、生まれる血の通ったものだと、改めて考えるいい機会にもなるでしょうからね。

NAOKI:そうなるといいですね。それからLOVE PSYCHEDELICOとしては、意図せずして今までとは成り立ちが異なる今回の曲ができたことで、一層、曲を作るのが楽しみになってきたんです。

KUMI:ね。

NAOKI:実は来年も再来年もオリジナルアルバムを発表しようと張り切っているんだけど、レコード会社の皆さんは“ふーん、楽しみー”って感じで、誰も信じてくれないんですよ(笑)。

KUMI:そう言えば、ちょっと前にNAOKIがすごい大発見したかのように“これからはさ、アルバムを2年に1枚出すといいと思うんだよね”って打ち合わせで言ってたじゃない? いや、それはみんな思っているんだけど(笑)。さぁ、どうなることやら。

NAOKI:まぁ、残りの人生もそんなに長くないかもしれないからね(笑)。だから、2019年はアコースティックツアーもやるし、アルバムも生きているうちじゃないと作れないから、音楽を目一杯楽しまなきゃね。

KUMI:うん、楽しもう(笑)。

(取材・文=小野田雄)

LOVE PSYCHEDELICO「Sally」

■リリース情報
「Sally」
発売:2018年12月5日(水)
DLはこちら

■ライブ情報
『LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019』
5月26日(日) 横浜・LANDMARK HALL
5月30日(木) 広島・JMSアステールプラザ中ホール
5月31日(金) 倉敷・倉敷市芸文館
6月13日(木) 新潟・新潟市音楽文化会館
6月21日(金) 札幌・道新ホール
6月26日(水) 名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
7月3日(水) 松山・松山市民会館 中ホール
7月4日(木) 高知・高知県立美術館ホール
7月15日(月/祝) 仙台・トークネットホール仙台(仙台市民会館) 小ホール
7月19日(金) 金沢・金沢市文化ホール
7月23日(火) 大阪・サンケイホールブリーゼ
7月24日(水) 大阪・サンケイホールブリーゼ
8月3日(土) 福岡・福岡国際会議場
8月4日(日) 大分・コンパルホール
8月30日(金) 熊本・くまもと森都心プラザ プラザホール
9月13日(金) 福島・福島テルサ FTホール
9月17日(火) 高松・サンポートホール高松 第1小ホール
9月24日(火) 東京・EX THEATER ROPPONGI
9月25日(水) 東京・EX THEATER ROPPONGI
9月29日(日) 浜松・アクトシティ浜松 中ホール

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